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今日は学校に行きたくない

「今日は学校に行きたくない」

つぶやくように吐いたその言葉を、受け止めてくれるひとはいなかった。みんなの"普通"ができなくて、泣き明かした夜。悪口を言われた、宿題ができなかった、部活がしんどい。
「そんなこと?」と言われてしまう問題も、わたしにとっては"世界の終わり"。SOSと書いてみても、だれも見つけてくれないわたしの心。辛いよなあ、悲しいよなあ、と肩を叩いてくれるひともいない真夜中。

そんな昔のわたしに、今悩むあなたに。届く言葉があればいい。

わたしは昔イジメられていた。その頃、イジメグループのリーダーに言われた言葉がある。

「あんた、同じことしか言わんやん!ひとの気持ちのわからん人間やな!」

そう言われたのは、部活のメンバーが失恋したのを慰めていた放課後。みんなそれぞれ「あいつは最低や!」とか「あんな男クズやで!」とか。口々に男の子の悪口を言ってなぐさめていた。

わたしは何が言えるだろう、と悩んだ。きっと、その子が恋した時間は、かけがえのないものだったから。好きなひとの話を笑顔でするその子の顔を思い出しては、誰かを否定するようなことは言いたくなくて。転んでも立ち上がれるまで、ただずっと側にいてあげたかった。

「大丈夫、わたしたちがいるよ。泣いていいんだよ、ずっと側にいるよ」

それが、その時のわたしの精一杯だった。

繰り返し、繰り返し。そんなことばかりを言うわたしにリーダーはイラつき、「ひとの気持ちが分からないヤツ」とレッテルを貼られた。

それ以来、わたしはその言葉に苦しんだ。まるで呪いみたいに。あれから加速するようにイジメられ、学校に行けなくなった。腕にはリストカットの跡ばかりで、いつも死にたかった。

この歳になるまでに、自殺未遂もODも経験した。自傷も、まだ完全にはやめられていない。

あの頃のわたしをなぐさめたくて、ただこうして毎日文を書いている。

「大丈夫だよ、ひとりじゃないよ」って。

最近、よくDMやコメントをもらえるようになった。みんなは共通して言ってくれる。

「肯定してもらえました」

そんな風に言ってもらえるなんて、あの頃のわたしじゃ想像もつかなかったことだ。そしてあの頃から変わることなく、変われないまま生きてきたわたしの心が、ただ叫んでいる「生きててくれてありがとう」が届いているんだよ。

わたしはいつも同じことしか言えなくて、同じことしか言わない自分が嫌いだった。

「今日を生きててくれてありがとう。あなたがあなたのままでいられますように。」

エッセイの最後は必ずそう書いてしまう自分の文章を読んでは、あの頃言われた「ひとの気持ちが分からないヤツ」という言葉を思い出してしまう。

でもね、そうやって変われないまま生きてきた、不器用なまましか生きてこれなかったわたしの"言葉"を、愛"を受け取ってくれるひとがいて。自分を肯定したくてずっと、ずーっと書いてきたものが、誰かを肯定している。

あなたが誰かに言われたひどい言葉が、ほんとうはあなたの素敵なところかもしれない。誰かが「逆に、だから素敵なんだよ!」と伝えてくれる日が来るかもしれない。

最低で醜いことばかりが起こる、この世界。世界を憎んでいいよ、絶望しちゃう夜もあるよね。だけどね、こんな奇跡が起こるのもこの世界なんだよ。こんな日を夢見つづけたわたしが、「生きることを諦めずにいた」から起きた奇跡なんだよ。だから、わたしはずっと変わらずに、これからも愛を伝えつづけたい。変われない自分を愛していきたい。

ありのままでいい、なんて言われても、信じられない夜に。わたしは、あなたのままで大丈夫だよ、と肩を叩くよ。

あなたが生きることをやめそうになる今日。もう死んでしまった方が楽なんじゃないか、と泣いている夜に。

わたしは、あなたのことを知っているよ。スマホの明かりに照らされて、ひとりぼっちだと自分を傷つけてしまうあなたを知ってるよ。だって、こうして文章を通して、あなたの元に届いているから。そして、あの頃のわたしときっと、あなたはおんなじだから。

明日なんて来てほしくないよね、学校なんて無くなってほしいよね。

でも、ただあなたが生きてくれることを、心から願っている人間が、間違いなくここに一人います。

あなたの居場所を、わたしは作りたい。あなたが泣いてもいい場所を、生きるのをやめたいと言える場所を。辛く苦しい毎日を、わたしが一瞬で変えてあげる!なんて魔法は使えない。でも、あなたが苦しい時に、隣で一緒に泣くことはできるから。

いつか会いに来てよ、会いに行くよ。あなたを思いっきり抱きしめて、心からの「生きててくれてありがとう」を言うから。

あなたの世界を変えてあげられなくてごめんね。学校を無くせなくてごめんね。

でも、わたしはその代わりに力強く、何度も何度も、声が枯れるまで、ずっと愛を叫ぶから。ほんとうに、今日まで頑張って生きてきたね。出会ってくれてありがとう。明日からも辛い毎日はつづく。だけど、たくさん逃げていいし、辛くなったら連絡ください。

わたしはいつもここで待っているよ、あなたに届けられる愛の言葉を必死で紡ぐから。

おやすみなさい、明日は、おはようと言い合おう。一生続く、このくだらない毎日の、最初と最後にあなたに会えるように。

ほんとうに、ほんとうに。

今日を生きててくれてありがとう。そして、あなたが生きようとしている、闘っている今を、ずっと覚えています。

愛してるよ、また明日ね。

(わたしは、いつも同じことを言う。そしてこれからも言うよ。)

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