結局のところD2Cとは何なのか〜直販オンラインストアを立ち上げたら全部D2C?
皆さんこんにちは。通販エキスパート協会事務局です。
当協会は文字通り「通販のエキスパート」を目指す方々に向けた資格「通販エキスパート検定」を実施しています。
以前からD2Cの用法について「違和感」を感じていたのですが、最近立て続けに「それは単なる直販オンラインストア開設なのでは?」という記事を見かけるようになったので、少し概念を整理しておこうと思います。
D2Cは、Direct to Consumerの略で、言葉そのものの定義はメーカーが中間流通を通さず、消費者と直接取引を行うビジネスモデルを指します。
ただし、米国でこの言葉がよく使われるようになったのは、ブランドの世界観や価値観を明確に打ち出し、デジタルネイティブなマーケティング手法でコアなファン層を獲得して成功した、新進のスタートアップ企業の存在があります。
つまり、スマホやアプリ、SNSなどのパーソナル性の高いコミュニケーション手段の発達で、顧客とメーカー(あるいはブランド)が直接繋がることが出来るようになった=「マーケティングのダイレクト化」の流れを象徴するビジネスモデルだったのです。
さて、ここで一つの疑問が生れます。それではもともとダイレクトマーケティングを行っていた企業、例えば自社で企画、製造した商品を販売する通販企業はD2Cと呼ばないのでしょうか?
現在、一定規模に達している通販企業の多くは、特徴ある世界観や価値観でコアなファン層を獲得して成功した企業が多く見られます。特に化粧品や健康食品の通販で2000年代以前から生き残っている会社の多くはそうではないでしょうか。
しかし、これらの企業がD2Cと呼ばれることは有りません。なぜならD2CのDはDirectという以外に「Digital」というもう一つのDが含意されているからです。
これらのことをまとめると、D2Cとは、
1.デジタルネイティブなスタートアップ企業あるいは新規ブランド
2.直営のオンラインストアで消費者に直接販売を行うが、ブランドの世界観や価値観を明確に打ち出し、それに共感するコアなファン層を獲得することで成長を目指す
という2つの要素を同時に満たしている必要があると言えそうです。
さらに、これは従来の通販やWebマーケティングと共通しますが、
3.顧客から収集できる様々な属性データ、行動データ、アンケートなどから得た情報を分析し、体験設計の最適化を図りつつ、コスト効率も追求する
という点も、米国ではよく指摘されています。
1は「Digital」、2は「Direct」、3は「Data」ですから、奇しくも、3つの「D」がD2Cの背景にはあることになります。
すでに「D2Cはなぜ失敗するのか」、という議論がされ始めていますが、ごくシンプルに言えば、上記3つのDの相乗効果を理解せず、オンラインで直販すれば全部D2Cであるというような、D2Cをビジネスモデルの変革ではなく、単なるマーケティング手法として捉えているせい、と言えるのではないでしょうか。
何やら「DXはなぜ失敗するのか?」という議論とも似ていますね。外形だけ流行りの手法を真似る「手段の目的化」に陥らないようにしたいものです。
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