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『蝶々と灰色のやらかい悪魔』

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デリヘルで働きながら、自分の夢を叶えようと奮闘しながら、恋愛を交えた一人の少女の日常を描いた作品です。この作品はぼくにとって、初の長編小説で、デリヘルで働くとある女性に実際に取材… もっと読む
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2021年7月の記事一覧

『蝶々と灰色のやらかい悪魔』 30

 この業界では、どういうわけか、黒髪美少女というある種のブランドが重宝されており、客ウケもイイ。そんなわたしも、美少女かどうかはさておき、黒髪なわけだが、わたしの場合、客の気を引きたいからとかそんな理由ではなく、ただ面倒なだけなのだが、その恩恵を受けている一人であるということは、ぶっちゃけ認めざるをえない。ただ、悲しいことに、気持ち悪い客にも好かれるのも、清純派を売りにしている副作用であり、避けようのない事実なのである。  話は変わるが、大抵の場合、どこのデリヘルの事務所や

『蝶々と灰色のやらかい悪魔』 29

 美容室に行った翌日、待機所に向かうと、しばらく休んでいたねねちゃんが、久々に出勤していた。なんでも、学校の試験期間中だったらしく、わたしの姿を見つけるなり、「ななこセンパーイ! やっと試験勉強地獄から解放されましたー!」と、目下、高校認定試験に向けて、勉強中のわたしに向かって、泣きついてきたのである。ただ、泣きつきたいのは、わたしのほうなのだが……。 「へ? てか、えーーー! 先輩、髪切ってるぅーーーー!」  試験勉強から解放された高揚感からか、わたしの髪型の異変にまで

『蝶々と灰色のやらかい悪魔』 28

「よし、じゃあ、わたしも切るよ!」  と、LINE上で威勢良く啖呵を切っておきながら、なかなか果たせずにねねちゃんとの『ショートヘアの公約』に、そろそろ後ろめたさを感じるようになってきていた矢先、セブンの店員さんから思いがけず、髪が伸びていることを指摘され、自分でもそろそろ切りに行かないとなと思いはじめていた、ちょうどそのタイミングで、店長から不意に、「この間、無理に出勤してもらったこともあるし、そのお礼ってわけじゃないけど、明日まだ予約も入ってないし、何だったら休む?」と

『蝶々と灰色のやらかい悪魔』 27

「そんな装備で大丈夫か?」  PS3のゲーム『El Shaddai(エルシャダイ)』に登場する〝ルシフェル様〟から言われてしまいそうな勢いの完全OFFモードのわたし。髪の毛はかなりボッサボサで、眉毛なんかふだんの三分の二程度しか存在しておらず、出勤日なら、先ずこんな格好では外には出ない。  で・す・が、今日はお休み。 「大丈夫だ。問題ない」と、イーノックばりの楽観思考が、あとあと大問題になるとは、その時点ではまだ、わたしは気付いていない。  ちなみに下は中学時代から愛