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No.24 外の空気に首輪を引かれ【俄か流 音楽のすヽめ】

俄か流 音楽のすヽめ

沖縄在住のアラサーサラリーマンが自分の人生を振り返って、心に残った音楽を楽曲単位で紹介していこうと思います。

楽器も出来なければ、楽譜も読めませんし、音楽理論もちんぷんかんぷんです。しかも、特定のジャンルに精通しているわけでもなく、広く、そして浅く色々な音楽を聴くいわゆる「俄か音楽ファン」です。

ただ、昔から音楽を聴くことが好きで、私の日常は音楽と共にあると思います。

思い入れがある楽曲を紹介して、誰かと共鳴できれば嬉しいです。

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Apple Musicに、都市別の楽曲ランキングがある。


その名の通り、国の中でも都市単位で聞かれている音楽にフォーカスするランキングだ。

音楽マーケットが大きいアメリカの「ニューヨーク」や「LA」をはじめとして、欧州の「ロンドン」「パリ」「ベルリン」、はたまたケニアの首都「ナイロビ」まで様々な国のランキングがリアルタイムで可視化される。


当然だが、人種の違いや言語圏によって聴かれている音楽は様々なので、世界全体をよりミクロな視点でヒット曲を知れる。

日本からは「東京」「大阪」「名古屋」や、僕の住む「那覇」の項目がある。



(Apple Music/2021年9月21日時点の地域別ランキング/上東京、下沖縄)


2021年9月21日時点での地域別ランキング(東京と那覇)を見てみると、東京で流行っている音楽と沖縄で流行っている音楽はほぼほぼ同じであることが分かる。
メディアを担う存在がTVからネットに移り変わる現代において、これは興味深いデータだと思う。



今やメディアは多様化をたどり、情報収集先は個人の自由に委ねられている。
それに伴い、局地で様々な流行が起こり得てもおかしくないが、データを見る限り、つまるところ大衆から支持される音楽はどこでも大差ないということである。


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僕が中学生の頃は、地元でヒップホップやレゲエなどのブラックカルチャーが流行っていた。


当時、Eminemが軒並みヒットチャートをさらい、自身の半自伝的な映画「8マイル」が大きな話題となったり、民放でダンスカルチャーに根ざしたTV番組「少年チャンプル」が放映されていたりと10代半ばの子たちがタフでカッコいいラッパーやダンサーに憧れるのはごくごく自然のことだったのかもしれない。


以前に出したnote『No.27 私たちの何かが変わろうとしている』で記したように、僕自身、周囲の影響でヒップホップを聴き始めている。


しかし、あくまでもこの流行は世間的なものではく、KREVAやSEAMO、nobaby knows+など認知されているラッパーこそいれど、当時の音楽ヒットチャートではヒップホップやレゲエなどのブラックカルチャーが席巻していたわけではない。


あくまでもユースカルチャーとして、若者人気がある文化だと捉え、僕自身、世間との流行とは一線を引いてみていた。



しかし、隣町の高校に出た時に状況は一変する。


そこではモンゴル800、GOING STEADY、エルレガーデン、銀杏BOYZなどいわゆるロック、青春パンクが流行っていて、ヒップホップやレゲエなどのブラックミュージックを聞いている層の方がマイノリティだった。


陸続きで地元からそんなに離れているわけでもないのに、こんなに流行りの音楽が違うのかとカルチャーショックを受けたのを覚えている。


中でも、今まで聴いてこなかった音楽として一番衝撃だったのは「L'Arc〜en〜Ciel」だ。

ー急ぎ足の明日へと抵抗するように
 駆け回っていても不思議なくらいこの胸は君を描くよ


先程紹介した『No.27 私たちの何かが変わろうとしている』でも言う通り当時の僕は「L'Arc〜en〜Ciel」もヴィジュアル系のバンドだと思っていて、ヒップホップとはかけ離れた存在だと思っていた。


筋骨隆々としたヒップホップに対して、線の細いヴィジュアル系。
声も野太かったり、低い声でラップするヒップホップに対して、裏声やファルセット、ウィスパーボイスの歌唱法を取り入れるヴィジュアル系。
服装もダボダボでルーズな着こなしなヒップホップに対し、タイトで煌びやかなフォーマルな雰囲気のヴィジュアル系。

だいぶステレオタイプなイメージかもしれないが、今思い返してみても対極的なジャンルだと感じる。



「L'Arc〜en〜Ciel」ファンやヴィジュアル系が好きな方には失礼な物言いだが、自分の中で受け入れるには時間がかかった。

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その上で僕が「L'Arc〜en〜Ciel」を好きになった理由がある。


それは、歌詞表現である。

これまたステレオタイプだが、僕の愛したヒップホップは直接的な表現やアプローチが多いと思う。

それは、自分がいかにタフで強いかであったり、どれだけ異性にモテているのか、どれだけお金を持っているのか、どのように他のラッパーより優れているのかなど、歌詞を一聴して何を言いたいのか想像し易い。


しかし、「L'Arc〜en〜Ciel」の歌詞は何を言いたいのかが何かフワッとしていて、そのうえ言い回しも独特だ。

ーもう少しだけ君の匂いに抱かれていたいな
 外の空気に首輪を引かれ 僕は背を向けた



決して難しい単語を並べているわけではない。
ただ、聞き手に対し「何を歌っているのか」という解釈を委ねているように思える。
ゆえに、文学的な視点でおもしろいと感じるようになった。
しかもこの歌詞に対して、煌びやかでネチっこいような歌い方が歌詞の世界観とマッチして快感を感じるようにもなってきた。

ー移り行く瞬間をその瞳に住んでいたい
 どこまでも穏やかな色彩に彩られた
 一つの風景画の中寄り添うように


好きと嫌いは紙一重。
高校を卒業するまでに、僕は多くの「L'Arc〜en〜Ciel」の楽曲を触れていくのであった。

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思えば、僕が広く浅く音楽のことを好きになっていくのも、これくらいの時期からだったと思う。


もしかしたら、地元を離れずに高校進学していたら、僕は一生「L'Arc〜en〜Ciel」を聴かなかっただろうし、ヒップホップ以外の音楽を好きになれなかったのかもしれない。

地元の常識を離れて、違う世界に飛び込めたからこその音楽との出会いがあった。

もちろん、受け入れられないこともあるだろうが、それでも自分の知らない世界に飛び込めることは素敵なことだし、何より地域ごとに音楽嗜好の違いがあるのは個性があって面白いことだと思う。


高校を卒業して10年以上経つが、このような地域ごとの音楽カルチャーショックというのは未だにあるのだろうか。
ネットの普及に伴ってSNSが大きな広がりをみせたが、それはユースカルチャーにどのような影響を及ぼしているのか。
今やユースではなくなった僕にはわからない。



ただ少なくとも、僕はこうして「L'Arc〜en〜Ciel」を好きになれたことは本当に良かったと思う。
これだけは確かなのである。

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