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【エッセイ】絶妙なもの

世の中には「絶妙なもの」が沢山あるなと思う。

僕はスポーツが好きなのでスポーツ観戦しているとよく思う。

例えば、サッカーのPKの距離。
決まりそうな、決まらなそうな絶妙な距離である。

野球の塁間。
もう少し短かったら盗塁しまくりだし、もう少し長かったら全く盗塁できなくなってしまう。絶妙な距離だ。

大相撲の土俵。
丁度白熱するサイズ感だ。

思えばこの地球の位置も絶妙と言われている。
太陽から近すぎず、遠すぎず。私たちが生きているのもそんな「絶妙」のおかげだ。

日々の疲れを癒そうと銭湯に行った時のこと。
ふと目に入ったのは、男湯と女湯の境に立つ壁。

これが絶妙な高さなのだ。
決して高い壁ではない。屋根まで壁があるわけではないので、男湯と女湯は完璧に隔てられているわけではない。
しかし、向こうをのぞき込もうという不届き者がいたとしてもジャンプや背伸びでは届かない。
しっかりとプライバシーは守られている。

でも圧迫感はなく、時に「お父さーん」と無邪気に叫ぶ子供たちの声が聞こえる。
ほどよく声が響き合うことで、皆でこの場所を共有しているというほっこりとした気持ちが生まれるし、「うるさくし過ぎてはいけない」と思う気持ちも芽生える。

昔ながらの銭湯は、屋根が高い造りになっている。
もし、その屋根の部分まで高い壁がそびえ立っていたら…

ここまでの風情は生まれないだろう。

あの絶妙な高さはみんなのほんのちょっとの思いやりで成り立っているものだと思う。

そんなことを考えながらサウナに向かう。
このサウナの熱さもまた「絶妙」なのだ。



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