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2023/04/12 Chat・ゴーストライター・GPT

クソデカ「異次元」のサムネ、面白いな。

ChatGPTがものすごいことになっている。対話型AIで、どんな質問にも流暢な日本語で返してくれる。プログラミングのコードを組むことも可能で、さまざまな分野に大きな影響を与えるだろうと言われている。実際、就活のESにも何度か対話型AIのトピックは登場した。まあ志望している業界が影響をモロに受ける業界だし、仕方ないと言や仕方ない。

先程のニュースのSNS投稿版。小学生がChatGPTを使って書いた読書感想文の写真が載せられていて、大きな反響を呼んでいる。

うわあああ〜! となった。文字から窺える年齢と文体がチグハグすぎる。そして私はこれにすごく見覚えがある!
小学生の頃の私の読書感想文も似たようなものだった!

もう時効だと思って話す。
小学生の頃、夏休みの宿題に必ず読書感想文が出た。好きな本を一冊選んで、400字詰原稿用紙3枚以上で。高学年になると5枚以上。
私は読書感想文を書くのが好きだった。本を読むことも作文もどっちも好きだったから、読書感想文は当然好きだった。カツカレー理論。

けどそれは自分で書き始めた段階の話。私の父親は変なポイントが面倒臭い人で、家には「夏休みの読書感想文は書き終えたら必ず父親に見せなければならない」というルールがあった。
書き終えて、父親におずおずとそれを差し出す。父親はそれを見て「う〜ん」と唸り、「全然ダメやね」と返す。そうか……全然ダメか……と落ち込んでいると、父親は私の原稿用紙を持って自分のパソコンに向かう。それでしばらく待っていると、「はいこれ」とコピー用紙を3枚渡される。400字詰原稿用紙のWordページだ。そこには、私が書いていたものと似て全く非なる作文が書かれてある。
「これ書き写して提出しろ」と父親は言う。私は父親に逆らえないので、はいと返事をするしかない。何がダメなんだ、どうして私が書いたやつじゃダメだったんだ! と悔し泣きをしながら原稿用紙に父親の作文を書き写し、それを提出した。私には父親というゴーストライターがいた。
完全にアウトだと思う。今でこそ自分で好きに読書感想文を書けるようになったから良いものの、絶対あんまり良くないよこれ! と子どもながらに思っていた。
父親によって私の作文がゴミ箱に突っ込まれるのを見るのは精神的に辛かったし、これでよくこんなに文章を好きになっているなと自分でも驚く。熱量が成す業ですね。

しかし面白いことに、私は小学生の間に何度か読書感想文で賞を取ったことがあったが、それは全て自分一人の力で書いたものだったのだ。たまに、父親の機嫌が本当に最悪な時に読書感想文を書き上げノータッチのまま提出できたことがあった。そんな時はなぜかいつも入賞した。思うに、審査員や先生にはすぐ「これは大人の手が介入してるな」と分かってしまうものなのだろう。ある程度の拙さは必要なのだ。

じゃあ父親のそれが全てにおいて悪手だったかと問われれば、そうでもないのでは? と思う。中学生の頃、「天声人語」など各新聞社の論説委員会が書く小さなコラムを書き写す課題を課せられていた人もいるかと思う。論理的な文章を書けるようになるためにはまずは写経がファーストステップになるというのは有名な話だ。
論理的な文章の書き方なんて全く分かっていなかった当時の私にとって、父親の文章を写経するというのは文章力を身につけるトレーニングになっていたのでは? と思わないこともない。いやそれが正解かと問われれば何とも言えないけど。

先程挙げた記事の中で、感想文を受け取った先生はこう語っているらしい。

学校の担任
「構成がしっかりしていて、書き方も大人が使うような表現だったので驚きました。たぶん書いたのは本人ではないと感じ、尋ねたら、ChatGPTに書いてもらったと言うことでした。ですが、書き方を写すだけでも学びにはなりますし、新しいものを意欲的に取り込んだという姿勢は評価しています」

NHK NEWS WEB 「ChatGPT まるわかり “異次元” AIの衝撃」2023年4月11日15時9分掲載

冷静に評価していて良い先生だなぁと思った。「何AIに書かせてるの! 自分で書き直しなさい!」と言うこともできるが、AIによって組み立てられた文章を書き写すことや新しい技術を意欲を持って取り込むことを評価している。柔軟な対応だ……と思った。

でも本当に、AIが書いた文章を書き写すことによって、数段飛ばしで文章のテクニックを知ることができたのかもしれない。もちろん書いた本人はそこまで考えてないだろうけど。


じゃあ、ChatGPTを読書感想文のゴーストライターとして本格的に活用するためにはどうしたらいいんだろうか。
試しに聞いてみた。仮に学年を少し落とした小学3年生として、記事にあった「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」の読書感想文を書かせてみる。

私 : あなたは小学3年生です。あなたはあまり文章力や語彙力がなく、作文が苦手です。「てにをは」を上手く使えない場合もあります。
それを踏まえて、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」の読書感想文を400字以内で書いてください。

ChatGPT : 「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」は、すごくおもしろかった!ハリーがホグワーツでの冒険を続けて、新しい組織の不死鳥の騎士団に入るんだけど、先生たちとの関係がギクシャクして、大変なこともあったよ。

ハリーはいつも勇敢で、友達のハーマイオニーとロンと一緒に困難を乗り越えていた。でも、新しい先生のウンブリッジ先生がハリーをいじめたり、ホグワーツがダークロードの脅威にさらされたりして、ハリーは大変な状況に立ち向かわなきゃいけなかった。

ハリーの勇気や友情がすごく感動的だった。彼はみんなのために戦って、自分の信じることを曲げなかった。友達たちも一緒に助け合って、困難を乗り越えていた。それがすごくかっこよかった!

でも、難しい言葉や長い文章が出てきて、ちょっと難しかったかも。でも、ハリーの物語がとても面白くて、最後まで一生懸命読んだよ。ホグワーツの魔法の世界がすごく鮮やかに描かれていて、ハリーの冒険がドキドキワクワクの連続で楽しかった!

「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」は、勇気や友情、困難に立ち向かう姿勢を教えてくれる素敵な本だった。ハリーの冒険を追いかけながら、自分も頑張ろうと思ったよ。次は次の巻も楽しみだな!

うーん!!
それじゃ先生に叱られるな!!

ちょっとポップすぎる。小学生3年生程度であれば、読書感想文は基本的に「です・ます」調が良いだろう。あと読書感想文の要である「学び」が無い。先生に叱られないように、ちょっと修正してもらおう。
あとこの小学3年生、嫌だ。お前絶対小3じゃないだろ。「脅威」とか言うな。

私 :あなたは小学3年生です。あなたはあまり文章力や語彙力がなく、作文が苦手です。「てにをは」を上手く使えない場合もあります。
それを踏まえて、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」の読書感想文を400字以内で書いてください。読書感想文は学校に提出するものです。文末は敬体にしてください。
また、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」を読んで得た学びも内容に含んでください。

ChatGPT :「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」を読んで、すごくドキドキした!ハリーと仲間たちが一緒に戦う姿勢に勇気をもらった。ダンブルドア校長のリーダーシップもすごいなと思った。ヴォルデモートは怖いけど、ハリーたちが困難に立ち向かう勇気に感動した。新しい友達のトンクスやルーナも個性的で面白かった。でもシリウス・ブラックが亡くなったのは悲しかった。友情や団結の大切さを学んだよ。次はどんな冒険が待ってるのか楽しみだな。

うーーーーん!!!!
「敬体で」って言ったんだけどな!!!!

そもそも204文字だし。いや400字「以内」とは言ったけども。ちなみに一つ前のやつは518文字だった。AIは字数制限に弱いのかな。

こうして見ると、AIに子どもの真似は苦手なのが分かる。子どもというか、「拙い」の再現が苦手なんだろうな。ここらへんは人間にしかできない匙加減だ。「私がこの本で一番心に残ったのは、ハリーがみんなと力を合わせて頑張っていました。」みたいな、そういう文章。もちろんこれは国語的に完全アウトなので先生に褒められることは無いのだが、それでもかなり小3ポイントは高い。小3ポイントって何?

最後に、設定学年を記事内の児童と同じ5年生にして同じ質問をした。私の質問文は「小学3年生」を「小学5年生」に変えた箇所以外は何も変えていない。

「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」を読んで、とっても楽しかった!ハリーたちの冒険がスリル満点で、一緒にドキドキしながら読んでました。ハリーは不思議な魔法使いで、友達と一緒に悪い魔法使いと戦ってるんだけど、大変なこともたくさんあるんだよね。

ハリーはいつも友達のロンやハーマイオニーと一緒で、困難なことに立ち向かってる。でも、今回は新しい友達の不死鳥の騎士団の人たちとも一緒に戦ったんだ。みんなが一致団結して協力しあって、強い絆で結ばれてるのがすごいなって思った。友情の大切さを学んだよ。

でも、悲しいこともあった。シリウス・ブラックっていうハリーの大切な人が亡くなっちゃったんだ。それを知った時は、ハリーがすごく悲しんでるのが伝わってきて、胸が痛かった。悲しいことがあっても、ハリーは前を向いて頑張ってるのが勇気づけられたよ。

ダンブルドア校長もすごいなって思った。いつも冷静で賢いし、みんなをリーダーシップで導いてるんだ。ハリーたちを信じてサポートしてくれる先生の姿勢に感動したよ。

この本を読んで、仲間と団結して困難に立ち向かう大切さや友情の大切さを学んだよ。次の冒険も楽しみだし、ハリーがどんな成長をするのかも気になる!また読みたいな。

うーーーーん!!!!!!

敬体だって言ってるんだけどな。
でも、少し語彙力が豊富になったような気がする。でも私がイメージする「作文がニガテな小学5年生(好きな給食は揚げパンとから揚げとカレー)」とは違って、AIの書いた文章は「最近西尾維新を読み始めてプロセカやってる小学5年生(好きな給食はわかめご飯)」って感じだ。

だいぶ話が逸れたけど、AIってかなり面白いな。けどやっぱりまだ、小学生のゴーストライターをするだけの技術はないみたいだ。

これから先、もしかしたら「読書感想文のゴーストライター業」は需要が高まるかもしれない。いろんなものがAIに代替して、そもそも文章を書くこと自体「やってられるか!」となってしまいそうな気がするのだ。
そこで登場するのが文章を生業とする人間。人間のちょっとした機微を掴んで、完璧にライトする。

絶対やらんけど。読書感想文は自分で書いた方がいいに決まってるのでね……。

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