見出し画像

コエダメカンタービレ3話

しかし、そうことはうまく運ばない。
農家は忙しい。
仕事がない ということがまずなくて、まして駆け出しの農家である章子にとって勉強の時間を作るということは簡単なことではなかった。
増して個人事業主、時代はSNSでの集客も必要となる時代。
章子は悩んでいた。

「勉強もしたい。農家として成長したい。でも家事の時間や趣味の時間、生活も大切にしたい」

しかし、ナンチャラグラムやチャラッター、どれもみんなが見てくれるのは仕事終わりの夜の時間。
章子にとっては仕事の発信をよる寝る前に行い、生活の時間が脅かされることはものすごい恐怖でもあった。

自分の生活すべてが、仕事に呑み込まれていくような恐怖。

しかし、同時にナンチャラグラムやチャラッターは、自分の寂しさを埋めてくれるものでもあった。

簡単に手元で知らなかった人の、出会うことのなかった人の存在を知れること。
ときに、やりとりするコメントやメッセージで触れ合えること。
しかし、仕事への集中力は散り散りになっていくし、いいねの数で自分の価値観を評価されているような気分にもなる。


「リアルを大切にしたい」
一方で
章子にとってのリアルの常は、則重と眞理子。
「親の顔なんて見飽きた。。。」
そしてついまた手元の繋がりに寂しさを埋めてもらい、勉強に時間を費やせない自己嫌悪から逃げ回っていた。

そもそも章子が農家を志したのは、農業が良かったというわけではなかった。
それしか知らず、それしかもう道がなかった、だからだった。

章子は働くことができず、ずっともがいていた。
自分の中に常に過去のトラウマを抱えていたのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?