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任天堂の 「宮本さんの肩越し視線」 に学ぶ、ユーザー視点になる方法

今回は、ユーザー視点になる方法です。

この記事でわかること

・ユーザー視点とは何か
・どうすればユーザー視点になれるか
・任天堂の伝説の開発者に学ぶ、顧客目線になる方法 (肩越しの視線) 

顧客の視点になるのは、言葉では言えますが実際になるのは簡単ではありません。ご紹介する方法は、マーケティングの観点からも理に適った方法です。

ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。

宮本さんの肩越しの視線

最初にご紹介したい本があります。

岩田さん - 岩田聡はこんなことを話していた。 (ほぼ日刊イトイ新聞)  です。


この本に、「宮本さんの肩越しの視線」 が書かれていて、興味深く読みました。

以下は、本書からの引用です。

宮本さんはなんにも知らない人をつかまえてきて、ポンとコントローラー渡すんですよ。で、「さあ、やってみ」 って言ってね、なんにも言わないで後ろから見てるんですよ。わたしは、それを 「宮本さんの肩越しの視線」 と呼んでたんですけど。

その重要性というのは、一緒に仕事するまでわからなかったんです。一緒に仕事してはじめて、「あ、これだ」 って思うんです。

つまり、ゲームをつくった人は、ゲームを買ってくれるひとりひとりのお客さんに対して、「このようにしてつくりました。こうたのしんでください」 とは、説明に行けないんですね。当然ですけど。だから、しかたないので、すべてを、ものに託すわけです。

ところが、ものというのは、そういうことを伝えるうえでは、きわめて不完全にできている。だから、伝わらないんですね。制作者が、想像もしないところで、予想外の戸惑いを感じたりする。

宮本さんは 「肩越しの視線」 でそれを探しているわけですね。

なにも知らない人がそれを遊ぶのを見て、「あ、ここわからないのか」 とか、「あそこに仕込んだ仕掛けには、とうとう気づかずに先に行ってしまった」 とか、「先に、これやってくれないと、あとで困るのに」 というようなことが、後ろから見ていると、山ほどあることがわかるんです。お客さんが、前提知識がない状態で、どんな反応をするかがわかるんですね。

だから、宮本さんは、自分がどんなに実績のあるゲームデザイナーであろうと、「お客さんがわからなかったものは自分が間違っている」 というところから入るんですよ。

 (引用: 岩田さん - 岩田聡はこんなことを話していた。 (ほぼ日刊イトイ新聞)

この 「宮本さんの肩越しの視線」 とは、要するにどういうことでしょうか?

一言で言えば、ユーザー視点になる方法です。

ユーザー視点になる2つの方法

つくり手や提供者が、買い手や利用者になるための方法は、大きくは2つあります。

1つは、自分がユーザーだと仮定してイメージすることです。頭の中でユーザーになったつもりで、どう見えるか、どのように感じるか、行動するかを想像します。この方法は、「自分 ≒ ユーザー」 です。

もう1つのやり方は、「自分 ≠ ユーザー」 です。

どこまでいっても提供者である自分はユーザーにはなれないという前提で、それでもユーザーの目線になろうとします。自分と他人は異なる人間という現実を直視し、前向きに諦めた上でどうするかを考えるわけです。

ご紹介した 「宮本さんの肩越しの視線」 は、後者です。「自分 ≠ ユーザー」 の方法です。

 「肩越しの視線」 が理に適っている理由 (2つ) 

この方法が優れていると思うのには、理由があります。

 「肩越しの視線」 が理に適っている理由
・ユーザーと同じ視座と目線
・素直な目の再現

それぞれについて、順番に見ていきましょう。

[理に適っている理由 1] ユーザーと同じ視座と目線

ゲームをやってもらう人の真後ろに立ち、肩越しから見ることによって、ユーザーと同じ方向から観察ができます

対面でユーザーと向き合うのではなく、同じ視座になり、同じ目線になることができるわけです。ただこれだけのことでも、見えている景色が180度変わります。

先ほど引用したように、

・あ、ここわからないのか
・あそこに仕込んだ仕掛けには、とうとう気づかずに先に行ってしまった
・先に、これやってくれないと、あとで困るのに

ということが、後ろから見ているとわかるのです。

[理に適っている理由 2] 素直な目の再現

宮本さんは、肩越しの視線に入る前に、ゲームをやってもらう人に前提情報を何も言わずにプレイしてもらいます。詳しくない人に説明をあえてしないわけです。

つくり手や提供者は、知りすぎています。つくり手の自分には当たり前のことでも、何も知らない初めての人には戸惑いや気づかないことがあります。

素人の人にこそ学ぶものはたくさんあります。「宮本さんの肩越しの視線」 は、何も知らない人を呼んできてコントローラー渡し、「さあ、やってみ」 と言うだけでゲームをプレイしてもらいます。

素直な目を再現する方法です。

心理と行動からユーザーを理解する

ユーザーや顧客を理解する方法は、心理と行動の2つに分けることができます。

ご紹介した 「肩越しの視線」 は、後者の行動からです。

心理を理解する方法は、インタビュー形式で問いかけから掘り下げていきます。

いずれも、ユーザーや顧客を深く理解するために汎用的な方法です。マーケティング、プロダクト開発、営業でなど、広く使えます。

まとめ

今回は、ユーザー視点になる方法をご紹介しました。

最後に今回の記事のまとめです。

 「宮本さんの肩越しの視線」 
何も知らない人を呼んできて、「さあ、やってみ」 と言うだけでゲームをプレイしてもらい、後ろから観察をする。肩越しで見ていると、自分では気づかなかったことが山ほどわかる。
ユーザー視点になる2つの方法
つくり手や提供者が、買い手や利用者になるための方法は大きくは2つある。
・頭の中でユーザーになったつもりで想像する 「自分 ≒ ユーザー」 。
・どこまでいっても提供者である自分はユーザーにはなれないという前提で、それでもユーザーの目線になろうとする ( 「自分 ≠ ユーザー」 ) 。
 「肩越しの視線」 が理に適っている理由
・ユーザーと同じ視座と目線
・素直な目の再現


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