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Apple の IDFA 取得オプトイン変更の本質

今回は、iOS の IDFA についてです。

2020年6月の Apple の WWDC での発表から、IDFA 取得オプトイン変更の本質を掘り下げます。

この記事でわかること

・IDFA オプトイン変更内容と本質
・Apple のミッションからの考察
・Safari の第三者 Cookie ブロックとの共通点
・GDPR との共通点
・オプトイン後のニューノーマル

記事の前半では、オプトイン変更の本質を見ていきます。 後半は、本質が何を意味するのかを掘り下げています。

ぜひ記事を最後まで読んでいただき、お仕事での参考にしてみてください。

IDFA とは

そもそもの IDFA とは何でしょうか?

IDFA は iOS で使われる広告識別子です。IDFA は Identifier For Advertising の略称です。

ちなみに Android での広告識別子は、AAID です (GAID (Google Advertising ID) と表記されることもあります) 。

1つのデバイスにつき1つの広告識別子が付与され、デバイスユーザーによるリセットがされない限りは変わりません。広告識別子はアプリ横断可能な共通の ID として機能します。

広告識別子の役割は、大きくは2つです。

広告識別子の役割
・広告ターゲティング配信
・広告トラッキング (表示, クリック, コンバージョン。アトリビューションや広告効果測定に使われる) 

IDFA 取得方法の変更による影響

これまでは、IDFA 取得はオプトアウト方式でした。

もしトラッキングをされたくない場合は、ユーザー自らが設定でトラッキングをオフにする必要がありました。これは、iOS, Android で共通です。

今後 iOS 14 からは、IDFA 取得はアプリごとに明示的同意が必要になります。

下の画像でユーザーが 「Allow Tracking」 を選択すれば、アプリは IDFA を取得します (オプトイン) 。IDFA を使ったユーザートラッキングと広告のターゲティング配信が可能になります。

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明示的同意の画面イメージ (引用: An update from Adjust on Apple’s user privacy changes | adjust

では、オプトイン変更による影響は、どんなものがあるでしょうか?

オプトアウトからオプトイン変更により、IDFA 取得率が全体傾向として下がるでしょう。

広告トラッキング、広告ターゲティング配信の両方に影響します。

オプトイン変更による影響
・ユーザー行動のトラッキング (データ収集)
・データ連携
・セグメント構築
・広告プランニング (メディア, クリエイティブ)
・ターゲティング広告配信
・広告効果測定, レポーティング

Android への波及可能性

なお、今回は Apple の発表なので iOS ユーザーのみに影響します。

しかし、今後は Android にも波及する可能性があります。

Google は広告収益を得ているので Apple とはビジネスモデルの前提が違います。しかし、Apple が2017年に Safari ブラウザで第三者 Cookie を無効にする方針変更後に、2020年に Google も Chrome ブラウザで第三者 Cookie 取得ができなくなる変更を発表しました。

広告識別子についても、時間差で将来的に Android でも追随される可能性は捨てきれません。

それでは、ここからが本題です。今回の Apple による IDFA オプトイン変更の本質を掘り下げていきましょう。

IDFA オプトイン変更の本質 (ここから本題) 

では、IDFA オプトイン変更の本質は何でしょうか?

本質は、「個人情報の尊重と、コントロール権をユーザーに戻すこと」 です。

ユーザーが意図しない、知らないところで勝手に自分の情報がトラッキングされたり、第三者に使われることを防ぐのが Apple の狙いです。

Apple が提示した解決策は、アプリごとにユーザーが設定でき、コントロールできるようにしました。ユーザーへの明示的な同意により、受け身ではなく能動的な選択権を与えます。

この本質から、もう少し深掘りをしてみましょう。

根底にあるのは Apple のミッション

IDFA オプトイン方式変更の奥にあるのは、Apple のミッションです。

Apple brings the best user experience to its customers through its innovative hardware, software, and services.

つまり、個人情報の流出、意図せぬトラッキングと利用へのユーザーへの不安をなくし、安心して使えるというユーザー体験の提供です。

Safari での第三者 Cookie ブロックとの共通点

Apple が Safari ブラウザでの第三者 Cookie を無効にするのも、根本には同じ思想があります。

Apple は、ユーザーにとって訪問している・見ているページ以外の第三者から自分の情報をトラッキングされて欲しくない、と考えるわけです。

第三者 Cookie をブロックし、ユーザーが意図しない・認識できない個人情報のトラッキングを起こさせない意図です。Safari でも、安心して使えるユーザー体験の提供です。

GDPR との共通点

皆さんは、GDPR をご存知でしょうか?

GDPR とは、EU 域内の各国に適用される、個人データ保護やその取り扱いについて詳細に定められた法令です。

EU 内のすべての個人 (市民と居住者) に、個人情報のコントロールを取り戻し、保護を強化することを目的しています。日本を含む EU 域外の企業にも影響します。

では、GDPR の本質は何でしょうか?

GDPR の本質は、個人情報の所有権を事業者 (収集者) から個人へ戻すことです。個人データにおけるユーザーファーストの徹底です。

本人の同意を義務付け、情報収集者は情報の使用範囲の透明性と情報管理を徹底し、個人からの情報に関する請求と開示に応じなければいけません。

先ほど、Apple の IDFA オプトイン変更の本質は、「個人情報の尊重と、コントロール権をユーザーに戻すこと」 だと書きました。GDPR との共通点は、個人情報の所有権と利用権限を本人に帰属させるというシフトです。

それでは、IDFA がオプトイン取得になることによって、総論としてどうなるのでしょうか?

オプトアウト後のニューノーマル

アプリごとのオプトアウト方式になるからと言って、IDFA が全て消えてなくなるわけではありません。

ユーザーからの明示的な同意を得ている限りは、許諾ユーザーには IDFA はこれまで通り有効に機能します。

ただし、オプトアウト形式から各アプリ毎のオプトインに変更されることによって、全体での IDFA 取得率は下がります。アプリごとに取得率のばらつきも出ます。

では、アプリプロバイダー、広告主、広告会社、トラッキング計測プレイヤーは、今回の Apple の変更にどのように向き合えばいいのでしょうか?

一言で言えば、ユーザーに誠実に向き合うことです。その上で、以下のことを愚直にやっていくのが正攻法です。

ユーザーへの向き合い
・アプリ (メディアとして) の付加価値を高める
・ユーザー情報の使用目的や範囲の明示し、同意をしっかりと取る (透明性) 
・収集した個人情報は許諾範囲内でのみ適切に使用。管理の徹底
・オプトインのユーザーメリットの創出
・メディア媒体としての価値向上

ユーザーにとって役に立つ・意味のあるアプリサービスにし、その価値が媒体価値としても高まる好循環を実現します。広告主は、透明性があり、かつマーケティング ROI の良いメディアに広告予算を投下します。

ユーザー、メディア (アプリ) 、広告主の 「三方よし」 を実現できるかです。

まとめ

今回は、Apple の iOS 14 からの IDFA オプトアウト変更について本質は何かを掘り下げました。

いかがだったでしょうか?

今回の記事のまとめです。

iOS 14 からは IDFA 取得はアプリごとに明示的同意が必要になる (オプトイン) 。オプトアウトからオプトイン変更により、IDFA 取得率が下がる。広告トラッキング、広告ターゲティング配信の両方に影響する。
IDFA オプトイン変更の本質は、個人情報の尊重と、コントロール権をユーザーに戻すこと。ユーザーが意図しない、知らないところで勝手に自分の情報がトラッキングされたり、第三者に使われることを防ぐ。
根底にあるのは Apple のミッション。個人情報に関するユーザーへの不安をなくし、安心して使えるというユーザー体験の提供。 Safari ブラウザでの第三者 Cookie 無効も同じ思想から。
GDPR にも共通点があり、個人情報の所有権と利用権限を本人へ帰属。
アプリプロバイダ、広告主、広告会社、トラッキング計測プレイヤーは、ユーザーに誠実に向き合うことが求められる。
ユーザーにとって役に立つ・意味のあるアプリサービスにし、その価値が媒体価値としても高まる好循環の実現を。広告主は、透明性とマーケティング ROI の良いメディアに広告予算を投下をする。

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