コロコロコミックの「うんこ・ちんちん原理主義」にマーケティング戦略を学ぶ
コロコロコミックのユニークな考え方と施策から学べる、マーケティング戦略について書いています。
「うんこ・ちんちん原理主義」
IT media に「コロコロコミック」の編集長へのインタビュー記事がありました (2017年6月28日) 。
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示唆に富むインタビュー記事でした。インタビューは、2つの視点で興味深く読めました。
✓ 興味深かったこと
マーケティングにおける提供価値: 自分たちは商品やサービスを通して顧客にどんな価値を提供しているのか
ターゲット顧客をどう設定するか: 価値と思ってもらえる人が顧客になる。価値と思ってもらえないセグメントは追わない
インタビュー記事の冒頭で、和田編集長から「うんこ・ちんちん原理主義で喜んでもらっている」という話が出てきます。コロコロコミックの主な読者である小学生の男子は「うんこ」と「ちんちん」を楽しんでいるという説明です。
以下はインタビュー記事から、ITmedia ビジネスオンラインの土肥記者と和田編集長の対話です。
印象的だったのは、想定読者 (小学4~6年生の男の子) に対して自分たちは何を提供しているかを、読者の目線で、読者の言葉で語られています。
読者を絞り込むことの重要性
コロコロコミックの考え方で興味深いと思ったのは、読者層を戦略的に絞り込んでいます。
コロコロコミック編集部の方針で興味深いと思ったのは、ターゲット読者についての考え方です。あえて読者の平均年齢を上げないようにしています。
ターゲットとなる主な読者層を男子小学生に設定し、無理にその上の年代 (中学生や高校生) を狙わないという考え方です。
なぜ、上の年代に読者を拡げないのでしょうか?
思春期になると離れてしまう
インタビュー記事からの引き続き引用します。
インタビューの文脈で言えば、コロコロが読者に提供し、メイン読者である男子小学生が楽しんでいるのは「うんことちんちん」です。
ただし、楽しめるのは思春期に入る前です。思春期に入ると男の子の興味は、恋愛・ファッション・音楽などになります。
読んでいて自分でも納得がいったのは、こうした興味対象が変わった途端に、それまでおもしろいと思ったコロコロコミックの内容が急に幼稚に感じることです。
この状況をマーケティングの観点で言えば、自分たちコロコロコミックが提供したい価値と、顧客である読者が価値に思うことでズレている状況です。
読者層を広げない理由
コロコロコミックは、コロコロを卒業した読者を無理に追わないと言います。再びインタビュー記事からの引用です。
思春期に入った男の子を追わない理由は2つに整理できます。
✓ 追わない理由
提供する価値と受け手が感じる価値にズレが生じてしまい、彼らを楽しませることができないから
思春期に入った年代に合わそうとすると、本来のメインターゲットである男子小学生が求めている価値を自分たちが提供できなくなるから
コロコロコミックから学べるマーケティング戦略 (3つ)
コロコロコミックのアプローチは、マーケティングの視点で学びがあります。3つです。
✓ マーケティング戦略への学び
ターゲット顧客を深く理解する
提供価値は何か
価値を共有する関係を築けるか
順番に見ていきましょう。
[学び 1] ターゲット顧客を深く理解する
1つめは、ターゲット顧客の深い理解です。
具体的には、自分たちのメイン読者である小学生男子が何を楽しいと思うかを、小学生の言葉で語れることです。単に、こういうマンガを連載すれば読んでもらえるというだけではありません。学校や塾、親子関係なども含めた生活環境までを含めて把握しています。
[学び 2] 提供価値は何か
2つめは、そんな小学生男子におもしろいと思ってもらえるために、自分たちは何をするかを明確にします。
インタビュー記事では「うんこちんちん原理主義」と表現されていました。言葉だけを見るとフザケているように映りますが、自分たちが読者に価値だと思ってもらえるために何を提供するかが、読者の言葉で、編集部内で共有されています。
[学び 3] 価値を共有する関係を築けるか
3つめは、自分たちと顧客 (読者) との両思いの関係を構築することです。
たとえ自分たちが相手に価値を感じてもらえると思っていたとしても、その相手が実際に価値だと思ってもらえるかは別の話です。相手が価値だと思ってもらえない片思いの状態では、いくら自分たちが価値があると信じていても、相手にとっては価値は存在していないのと同じです。
コロコロコミックで、もしターゲットを男子中高生や女子小学生にまで広げれば、コロコロと読者とでは提供価値を共有する相思相愛にはなれません。
「うんちやちんちん」を純粋におもしろいと思うような、自我に目覚める思春期に入る前の男の子だけにターゲットを絞っているからこそ、両思いの関係が成立するのです。
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