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中国の過剰生産によるデフレーション輸出、グローバル経済にとっては問題なし?

中国の過剰生産と過剰輸出によるデフレーションをG7は懸念しているが、供給過多によるデフレーションは経済に大きな影響を与えるのだろうか?あるいは単なる考えすぎなのだろうか?

中長期なデフレーションとそれに伴う経済低迷に対する懸念は歴史的に政策当局者や経済学者によって共有され、リフレーション理論はグローバルスタンダードになった。大恐慌についてのベンバーナンキの研究とサブプライムローン危機後の中央銀行の政策がそれに説得力を与えたこと疑いの余地がない。

一方で持続的なデフレーションに見舞われたのは1990年から1991年にかけての香港と90年代後半から2000年代の日本のみである。むしろ、持続的に経済に困難をもたらすのはインフレーションであり、これは2022年のロシアのウクライナ侵攻が証明したことでもある。途上国のいくつかは通貨危機やデフォルトに直面し、先進国ですら社会不安が増大している現実を見ると持続的なインフレーションがしばしば経済にとって好ましいものでないことはわかるだろう。

そして供給の過剰は歴史的に経済にポジティブな影響を与えていた。イギリスの産業革命やアメリカの産業革命は生産や輸送の生産性向上により慢性的な供給過剰が発生し、デフレーションが進展したが、経済は力強く成長し、都市化が急速に進展した。

仮に中国が輸出や生産に対するインセンティブによってグローバル経済に過剰生産を輸出しているのであれば、それはグローバル経済にとってはるかに好ましいものであるように思える。中国の過剰生産の輸出はグローバルなインフレーションが安定化するきっかけになり、グローバルな経済成長に対して追い風になる。輸出の増大が中国の経済を下支えし、インフレーションと通貨安に苦しむ新興国経済の復活を後押しする。

しかしながら、G7の政治的スタンスを考慮すれば決して良いものではないと言わざるを得ない。彼らはもはや経済のブロック化を辞さないように思える。グローバルな開かれた経済の守護者だったはずのG7はもはやそれを公然と無視するようになりつつあり、途上国との対立は悪化することになるだろう。中国の過剰生産と輸出の問題はイデオロギーの問題であり、その観点で国際政治に大きな問題をもたらすが、グローバル経済にとってはポジティブなものであり続けるだろう。


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