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なぜ外資系スーパーは中国(そして東アジア)で苦戦するのか

中国の経済開放にいち早く参入したスーパーマーケットチェーンであるカルフールにウォルマート、テスコ。しかし全ての企業が撤退や閉店を余儀なくされた。一体なぜだろう。

カルフールやウォルマート、テスコは80年代や90年代に中国に進出し、エブリデイロープライスを売りにしたスーパーやエアコンが効いた巨大ショッピングエールで多くの中国人を引き付けた。多くの中国人が見たこともないテーマパークがそこにはあったのだ。

しかし中国の経済成長が皮肉なことにそのビジネスモデルを破壊した。これは日本や韓国でも見られることなのだが、多くの中国人、特に大都市に住むミドルクラスで顕著なのだが、郊外にある巨大スーパー休日にまとめ買いをするより、毎日こまめに都心部やアパートの近くのスーパーで特売品を購入する傾向がある。今や多くの都市在住の中国人が多忙だし、車がなくても生活には不便しない、むしろ維持費が重くのしかかる。そんなライフスタイルを送っている以上、やはりウォルマートやカルフール、テスコ的な郊外スーパーはいくら安くていい商品で溢れているとしても厳しいところがある。

また、郊外型のショッピングモールよりも都心部のショッピングビルに人気が集まっていることもそれらの企業の苦戦の理由でもある。結局のところ欧米的な自動車に依存した郊外スーパーモデルは東アジアではなかなかうまくいかないのかもしれない。少なくとも地元密着のチェーンと対等に競うことは難しいのだろう。

また今や中国人はデジタルでの購入体験に心を奪われている。ライブコマースに多くのECサイトの乱立、あるいは独身の日セールを見ればそれは理解できるはずだ。それ故に中国の小売業者は実店舗とオンラインのシームレスな接続と顧客体験に投資してきたが、カルフールやウォルマートは本社への根回しに時間を割かれ、かつ中国支社は自律的に動けなかったのだろう。もちろん多国籍企業である以上仕方ないことなのだが、中国は特にビジネスにおける流行り廃りや決断のスピードが早い国だ。よって実店舗の体験も斬新さはなかったし、オンライン体験も魅力的とは言えなかった。そのような小売業者を大半の中国人は熱心にサポートなどしなかった、それだけである。

一方で、中国で比較的うまく戦えている欧米の小売業者がある。それはズバリ、コストコである。2019年オープンと上陸したタイミングは遅かったが、上海店のオープンには中国全土から買い物客が押し寄せた。またコストコは日本や韓国でも一定の存在感がある欧米系のカスミ小売業者である。その理由は差別化に成功したからだ。ホールセール型(倉庫型)スーパーは目新しいものだったし、それを真似するノウハウや投資意欲のある地元企業も存在しない。アメリカ本国の商品や売り方をそのまま持ち込んだことでテーマパークのような体験やオリジナル商品といったウォルマートやカルフールにはできなかったことを実現した。そして会員制だから顧客のロイヤリティが高く収入も安定しやすい。あるいは店舗数が決して多くはないこと自体も特別感をくすぐるのかもしれない。結局のところコストコの華やかとは言えないまでも成功したケースを見て分析できることとしては、やはり欧米の小売チェーンがアジアで成功するためには地元の小売業者との差別化、しかもそれを地元業者が真似できないレベルで実行すること、がカギになるのだろう。少なくとも、顧客のニーズを分析せずに地元の小売業者との差別化なしで殴り込むと、飽きられてしまうか過酷な競争に突入してしまい敗北することになるだろう。

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