「お前は何の為にここに来たのか?」

青年海外協力隊には職種という専門分野が存在し、
それに基づいて各国各地域に派遣される。
私の場合は環境教育。

環境教育でも大きく分けて2種類ある。
いわゆるグリーン系と呼ばれる環境保全を担うようなものと
ブラウン系と呼ばれるゴミ問題を扱うもの。
もちろんどちらも切っても切り離せないものであり、
どちらに取り組んでももちろんいい。

ただ、配属先が国立公園だったり環境保全に取り組むNGOだったりすると
自然と軸足は前者になるし、
役所の環境局の廃棄物関連の部署に配属となれば
軸足は後者になっていく。


私の場合は後者。
市役所の環境局の中の廃棄物関連を扱う部署にいて
その中でボランティアとして働いている。

その中でも、環境「教育」となっているように
環境に関することを「教育」する。
例えば小・中学校を巡回して授業をしたり、
学校の先生や事務所の同僚に環境教育のやり方を伝えたり、
地域の人達に環境に関するレクチャーをしたり。

基本的には環境に関することであれば何をしてもいい。
というより求められる場所、出来ることを探して活動をしていく、
というのが基本的なスタンスになっていく。



協力隊の活動の中で色々な街の人に会う。
所属している市役所の人と一緒に活動をしている中で会う人と、
役所の関連施設で働く人と、
たまたま喋りかけてくれた人と、
タクシーの運転手とだって。

必ず聞かれるのは
「どこから来たのか」
「勉強か?仕事か?」
「そこで何をしているのか?(任務は何なのか?)」



着任して約1か月。
これらの回答に非常に困る。

「どこから来たんだ?」
 日本から来た。
「勉強か?」
 いや、市役所で働いている。
この辺は全然いい。


その次に
「市役所での何をしているのか?」(日本語訳が怪しいが、任務や役割・目的等のことが聞きたいんだと思う)
と聞かれるが、この回答に非常に困る。
多分語学もおぼつかない日本人が市役所で何をしているのか、
何の目的で来ているのか、
ということが聞きたいんだと思う。


本来なら市役所の一員として努めている限り、
インドネシアのマカッサル市のごみ問題を解決する、というのが大きな目標だ。
でもちょっと求められている回答とは違う。

日本的な視点を持って市役所での活動をフォローして
改善出来るところがあれば改善して
少しでも効率的に仕事が回るようにする、
もう少し具体的に言えばそういうようなこと。

もっと言えば住民や企業に対して改善を促すような取り組みが出来ればと思っている。
具体的にどうやって行くかはまだ全く見えていないのだけれど。


でもこれが拙い語学力では納得してもらえるまで伝えられない。



市役所を助けるために来た、
なんて言ってみたこともあった。

言葉もろくにしゃべれないやつに何が出来るんだって、
そもそも今までうまく回ってるんだから
そんなことの為に何で来ているんだって。
そもそも今は助けられてばかりなのに、助けるなんておこがましい。


住民に啓蒙活動したり、
と言ってみたこともあった。

これもやっぱり言葉もおぼつかないお前に何が出来るんだってなる。
ちょっと上から目線感が拭えない。
そうならないような言い回しや言葉をまだ知らない。


そうなると一番分かりやすいのは
学校で環境に関する授業をする、
というのが一番納得してもらえる。

今はもうそんな風に言うことにしているんだけど
これもこれで自分の言葉で活動を狭めてしまっている気がする。
何か求めている住民がいたとしても
「なんだ、こいつは学校にしか行かないのか」
なんて思われてしまうかもしれない。そんな機会損失もある気がする。
そもそももっと別の方向性で本当はやりたい。
小学校での巡回授業ってやっぱりすぐには効果が見えないから。



そして何よりこの質問をされること自体が今は非常に辛い。
現状まだ何も出来ていないし、
学校で教えたこともないし、
自分自身でも何が出来るのかが分からない。
だから本当は
「まだ自分でもよく分からない」
というのが正直な回答だったりする。



しかしこれでも実は恵まれている方。
前任の方たちが残してくれたものがある。
だからJICAの存在を知っている人は知っているし、
前にも来たよーって言ってくれる人もいるし。
環境教育だと環境に関することって言うのがある程度はっきりしていたりもする。

青年海外協力隊にはコミュニティ開発という職種も存在する。
これは地域の人や村の収入向上・地域活性を目指し、
農業の改善や新しい特産品の開発などなどやり方は様々。
勝手なイメージではあるが
いわゆる途上国支援そのものだ。

この職種の人たちは、いったい自分のことをなんて言うんだろう。
収入向上の為に来たなんて言っても
ちょっと上から目線な気もするし、何が出来るんだって思われてしまいそうだ。

ましてや初代と言われる、初めて日本人に会うような地域にいる人は
この説明ってすごく難しいだろうし、
同じように自分でも何が出来るのか分からないという人もいるだろうな。



振り返ってみると日本では
「何をしている人か」
という質問の回答に困ったことはなかったんだと思う。
高校生、大学生、社会人、営業をしている…
これは実はすごくありがたいことだったんだ。


帰国までにはこの質問に対して、
納得してもらえるような回答が出来る様にしたいなあ。
相手も、自分自身も。

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