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朝 起きたら 浮いていた話 その1

暑い夏だった。
目が覚めると、目の前は天井だった。
古い時代の思い出の写真のように、色褪せた星がついている。小さかったり、大きかったり、いろんな形をして、くっついている。夜になると、光をためてぼおっと光るんだよな。朝は光ってないんだよなと当たり前のことを思っていた。

「あああ!!!」
僕は声を上げた。

僕は浮いていた。
「ふわふわ」という言葉がぴったりなくらい体が宙に浮いている。

昨日の寝る前のことを思い返してみた。
ちょっとだけ遅くまで起きていた。
夜の9時は過ぎていたと思う。
「雨が降ってきたから 雨戸を閉めなさい。」とお母さんが言って
「はあい」と言って閉めなかった。
漫画を読んで、ゴロゴロしながら 雨が強くなっていく音を枕に押し当てた耳をちょっとずらして聞いていた。雨戸閉めるのはめんどくさいな、と思いながら電気を消してしまって、明日は休みだし、なんとかなるかなと思ってよくわからない言い訳をしながら気づいたら寝ていたと思う。

「にゃあ」と声がして 体がビクッとなった。
体をひねって脇の間から下を見ると、飼い猫のグレーが不思議そうに僕をみている。僕と目が合うとまた「にゃあ」と鳴いた。
僕も「にゃあ」と声真似をしてみたが、何事もなかったようにそのままグレーは綺麗にしっぽを立てて、開いているドアに体を擦り付けてから、階段のほうへ降りていってしまった。

時計を見る。
いつもなら見上げる時計がすぐ横にある。
いつも見えていなかった天井に近い部分には、ホコリが薄くのっていた。
掃除しなきゃなと思って、みた時間は6時55分だった。

「やばい!支度しなきゃ!」と言って「違うよ。休みだよ」自分に言い聞かせるように一人しゃべってホッとした途端、また現実に戻って叫んだ。

「浮いてるよ!!!!」


つづく




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