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おじさんの偏見が砕けた瞬間:大学生たちとの合宿記録

はじめに

先日、僕は中央大学の学生たちと一風変わった合宿に参加してきました。場所は東京都西多摩郡にある、山あいの村、檜原村。新しい事業アイデアを考えることが目的で、僕はメンターとして学生たちの企画作りをサポートする役割を任されたのです。

僕が担当したのは5人の女子学生。初めて会った時、彼女たちは少し恥ずかしそうにしていました。けれど、「地域活性化につながる新事業を提案したい!」と語る言葉からは、静かな情熱が感じられました。積極的に飛び跳ねるようなタイプではないけれど、やりたいことに対する芯の強さを感じさせる学生たちでした。

学生たちのプレゼンと私の偏見

合宿では、学生たちによるプレゼンが2日間で2回行われました。1回目のプレゼンで彼女たちが提案したのは、「おみくじ」を活用した事業でした。神社のおみくじを村の飲食店やお土産店の割引に結びつけ、観光客の回遊性を高めようというアイデアです。

プレゼンの様子からは、自信のなさも垣間見えました。声は小さめで、アイデアを説明する言葉も少しぎこちない。

正直、最初は本気度を測りかねました。本当におみくじで地域活性ができると思っているのか、やりたい気持ちは本物なのか、とりあえず授業だからしかたなしにやってるのか、半信半疑だったのです。ガツガツした印象はなく、むしろ少しゆるい印象を持ちました。

プレゼンを聞いた中で、「こうした方が現実的だ」とか、「こうしないと継続性がない」とか、「マーケットはあるのか?」など、経験と知識を盾に、彼女たちのアイデアの穴をつくようなアドバイスばかりしていました。

経験も自信もない彼女たちに、僕の意見に反論することなどできるはずもありません。しかもこちらはある程度の新規事業経験者。彼女たちは必死に私の言葉に耳を傾けようとします。

けれど、きっと心のどこかで違和感を感じていたはずです。自分たちの思いとは違う方向に話が進んでいく違和感を。

今思えば、僕はメンターという立場にあぐらをかき、自分の意見が正しいという前提でアドバイスをすることで、彼女たちの思いを押し潰しかけていたのです。

それでも彼女たちは最後まで真摯な姿勢を崩しませんでした。僕の意見に耳を傾けながらも、おみくじの可能性を信じ続けてくれたのです。

むしろ、その魅力をどう伝えるか、どうやったらもっと多くの人に楽しんでもらえるか、真剣に議論を重ねていました。

僕はその真っ直ぐな眼差しに、少しずつ引き込まれていったのです。同時に、自分の態度の誤りにも気づかされていきました。

車中での雑談が揺さぶった価値観

2日間、僕は彼女たちと車で檜原村周辺を巡りました。東京都とは思えない自然豊かな風景の中、カフェや土産店を訪ね、おみくじ事業のパンフレットを置かせてもらうのが目的です。彼女たちは、恥ずかしそうにしながらも、真摯にお店の人たちに提案を説明していました。最初は控えめだった彼女たちも、話している内にどんどん言葉に熱が籠もっていきます。自分たちのアイデアを理解してもらおうと、一生懸命に思いを伝える姿が印象的でした。

やはりなんとなしかゆるさみたいなものがありましたが、どの店でも快く協力してもらえたのは、彼女たちの人柄の良さと、芯の通った熱意が伝わったからだと思います。

さらに、印象的だったのは山道の長距離移動中の車内での何気ない雑談から、プレゼンでは語られなかった、彼女たちのアイデアの裏側が見えてきたことでした。

例えば、ある学生が実際におみくじを目的に、見知らぬ土地へ出かけていった経験があったこと。有名なおみくじが10代、20代の中で話題になっていて、多くのメディアやSNSで取り上げられていること。

単なるおみくじではなく、ストーリー性を持たせる工夫をしていること。だから、過去事例をベンチマークにして、彼女たちのおみくじも同様の工夫を凝らしているのだということ。

提携先を地域のカフェにしたのも、彼女たちが以前、プライベートで檜原村を訪れた際、カフェ巡りをしたのがベースとなっていました。要するに、今回のターゲットの心情に一番近い彼女たちの自らの経験に基づいていたのです。

つまり、彼女たちのアイデアはもちろん思いつきなどではなく、実体験に基づいて練られたものだったのです。プレゼンテーションでは見えてこなかった計画性や思いが裏に隠れていたのです。

彼女たちの言葉を聞くたび、自分の無知と偏見を思い知らされました。おみくじは、自分にとっては年始に1回引く程度のもの。だから事業化は難しいと思いこんでいましたが、彼女たちにとっては、わざわざ旅行に出かけてでも体験したいものだったのです。また、学生の新規事業計画は思いつきの部分が大きいのだろうと勝手に決めつけていた部分もあったかもしれません。

他世代のトレンドも、SNSもチェックしているつもりでいましたが、自分の興味の範囲内しか見ていなかった。10代、20代女性の関心事は、まるで別世界のものでした。

思い込みを恥じ、反省する

恥ずかしさでいっぱいになりました。自分の見えるものだけで、彼女たちのアイデアを否定しかけていた僕。本当は、彼女たちと同じ土俵に立って話をできていなかったのです。

おじさんの色眼鏡で世界を見ていた自分。若い世代について、わかったつもりになっていた自分。その思い上がりを、彼女たちは見事に打ち砕いてくれました。

僕は心の中で、彼女たちに謝りました。(ちゃんと言葉にすれば良かった。)そして、もっと彼女たちの世界を知ろうと決意したのです。メンターとして、彼女たちに寄り添い、本当の意味で理解しようと努めることを誓いました。

学生たちから学んだ大切なこと

この2日間で、僕は学生たちから多くのことを学びました。固定観念に縛られず、内発的な動機から事業を考える楽しさ。自分たちのアイデアを形にする喜び。そして何より芯の強い「やりたい」という想いを持ち続けることの大切さ。

でも、それ以上に大切な学びがありました。それは、思い込みの怖さです。

僕たちは無意識のうちに、できること、できないことを勝手に経験則から決めつけてしまいます。そして、それを年下の人たちにさもそれが正解のように語ってしまうのです。これこそがまさに「おじさん」の証なのだと、痛感させられました。

学生たちのファンになった自分

気がつかないうちに、自分はいわゆるおじさん行動をしようとしていました。学生たちの発想を、自分の固定観念で判断していたのです。その思い込みに気づかされたのは、彼女たちの真摯な姿勢と、揺るがない信念があったからこそです。

彼女たちの純粋な情熱と、揺るがない信念に、私は完全に感化されてしまいました。自分も、彼女たちの思いを全力で応援したい。メンターとして、彼女たちの可能性を最大限引き出すサポートをしたい。そう強く思うようになっていたのです。

そして、僕が意識を変えてから、彼女たちへのアドバイスも変わっていきました。おみくじ案を別のプランに変えさせようとするのではなく、おみくじ案をいかに伸ばすか、そして彼女たちの熟慮された計画をいかに資料で伝えるかに焦点を当てたのです。

「こういうふうにしたらもっと知ってもらえるのでは?」といった提案をすると、彼女たちの目の色が変わったのです。「それならできそう!やばそれやれる!」「うわ、それできたら面白い!」と、彼女たちの中でスイッチが切り替わっていくのが分かりました。

僕の態度の変化が、彼女たちのモチベーションに直接影響を与えていたのです。メンターとして、彼女たちの可能性を信じ、その思いに寄り添うこと。それがいかに大切なことなのかを、身をもって体感しました。

そして、そんな彼女たちに感化され、頼まれてもいないのに、1日目の夜に情報リサーチして、翌朝も早起きして簡単なレポートを作成してしまうほど、僕は彼女たちの企画のファンになってしまったのです。

プロジェクトの結末と学生たちの成長

そして、パンフレットを設置してからわずか数時間後、早くも問い合わせが入ったのです。「速攻で反応があった! すごい!!」彼女たちの喜ぶ顔を見て、僕も心から嬉しくなりました。

結局、僕の当初の懸念など杞憂に過ぎなかったのです。おみくじの可能性を信じ、行動で示した彼女たち。その情熱と行動力に、改めて大きな刺激を受けました。

プロジェクトを通して、学生たちは大きく成長しました。僕の意識の変化と、それに伴うアドバイスが、彼女たちの成長を後押ししたのかはわかりませんが・・・。2回目のプレゼンを聞いた限りでは、僕が色々言いすぎて必死に反映しようとして言葉足らずになっていたような印象も・・・。
でも、僕は彼女たちからたくさん学びを得させてもらいました。

おわりに

彼女たちの眼差しには、常識に囚われない自由な発想と、未来を切り拓く強い意志が宿っていました。僕はその瞳に、自分の姿を重ねずにはいられませんでした。

きっと、これが彼女たちとの出会いが僕にもたらしてくれた、最大の学びだったのだと思います。大人の思い込みに縛られず、「やりたい」という強い想いを持ち続けること。そして、その想いを信じ、行動に移すことの大切さ。学生たちから教わった、この真理を胸に刻んで、これからの仕事にも生かしていきたいと思います。

「もっとできそう! これは絶対いける!」彼女たちの言葉が、今も耳に残っています。あの純粋な情熱を忘れずに、これからも「想い」を大切にしながら、全力で仕事に向き合っていきます。

この合宿で、僕は学生たちから多くのことを学びました。でも、それ以上に、自分自身の中に眠っていた情熱を再発見できたことが、何よりの収穫だったのかもしれません。

彼女たちとの出会いは、僕に仕事への情熱を取り戻すきっかけをくれました。みなさんも、ぜひ「想い」を感じる機会を大切にしてみてください。「やりたい」という情熱を胸に、困難にぶつかっても諦めずに前に進む。そこには、きっと新しい発見と成長が待っているはずです。

そして何より、自分の「想い」を信じ続けることを、決して忘れないでください。それこそが、私たちを成長させ、新しい世界を切り拓く原動力になると、今の僕は心から信じています。

そして、最後に「おみくじチーム」の事業の大成功を心より願っています。


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