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本質を突く/珈琲係石井

「ちがう ぼくのあしが おおきくなったんや」

彼は本質を突く人だと思う

彼が3歳の頃、靴が入らなくなり
「あぁ、くつが、ちっちゃくなったね」
と私が言った瞬間に放った言葉が
冒頭の
「ちがう ぼくのあしが おおきくなったんや」だった

私はその時、びっくりしたけど、その通りだと思って笑って「ほんまやなぁ かしこいなぁ」と言ったのを覚えている

そういえば2歳半健診の頃だったか、こんな事もあった
家ではお喋りの彼が、保健師さんの前では喋らない
一切喋らない
一枚の紙に、車、積み木、クマのぬいぐるみ、靴等のイラストがあり、保健師さんが
「これは何かな?」など笑顔でたずねるも、口元は微動だにしない
次に「靴はどれかな?」と聞いた時の事

保健師さんと机を挟んで向かい合わせに座っていたのだけど、私の膝の上に座っていた彼が、ドンと足を机に乗せた

あまりにも行儀が悪く、慌てて足を下ろそうとした時に、まだあどけなさの残る指でその足をさしながら、「これ」と言った

それは「靴」をさしていた

保健師さんは大笑いして
「ほんとやね、靴やね!」と言ってくれた

小学生の頃のエピソードもたくさんある
中学生になると、大人のいい分の歪みを突いてくる様になった
高校生になると、あまり喋らなくなった
不登校っぽいのも何回かなった

彼は、自分の中にある本質と世の中のズレに悩んできたと思う

今、高校3年生
進路は気象予報士が読めない台風程度に迷走している

教職員課程の進路に進みそうになった時、はたと気がついたのか
「学校嫌いやのに無理やん」と言ったので
「フリースクール作ったら?」と言ってみた
すると彼は
「フリースクールなぁ…」と乗り気ではない返事
「フリースクールは親がなぁ…」と言う
私はてっきり続きの言葉は
「ややこしい」とか言うのかと思ったのだけど
違った
「フリースクールの親は、不登校に理解あるやん、もうフリースクールの子はそこでいいやん。でも、ほんまに困ってるのは、不登校に理解がない親の子どもで、学校にいる子どもたちやん、どうせならそっちの子どもみる方がやりたい」
と言った

本質を突きまくってる!と感動して姉に言ったら、中3の不登校プロフェッショナルの姪っ子も全く同じ事を、数年前に言っていたらしい

本質を突く人がもう一人近くにいた

不登校の形は様々で、当時者の時には何を考えていたのか、さっぱり分からなくて、私を困惑させたけど、ちゃんと彼なりに本質をつこうとしていたんやろうな、って今さらながら思う

そして進路の迷走はまだまだ続いている



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