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ネイチャーフィールドnote

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#植物

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里山大百科「夏」野辺の草花

水田の稲が青々とするころ、田畑の周りの草も一段と勢いづき、草刈をまぬがれた草花が野辺を彩ってくれる。 幼いころバッタやチョウを求めて歩き回った原っぱ、そこで見たウツボグサやノカンゾウは、今でも鮮やかな印象でよみがえってくる。 どこにでもあった野辺の花咲く原っぱも、いつのまにか身近な場所からなくなりつつある。 ツユクサは植物には珍しい青色の花を咲かせる。黄色く目立つのは仮雄蕊(かゆうずい)という飾りの雄しべで、下方に2本伸びた目立たない雄しべが本来のものだ。

里山大百科「夏」夏の花木

蒸し暑い日本の夏の里山を彩る木々の花は多くはない。 初夏の到来を告げるエゴノキから夏の盛りのクサギの花まで、スズ茂な色彩は里山を訪れる人には一服の清涼剤だ。 頭上に咲くネムノキやリョウブの甘い香りは、花の季節を迎えていることを語っている。 緑濃い林のなかではその香りで存在に気づかされることも多い。 花色を写真で表すことが難しい花だ。同じアジサイ科でも、栽培ものと異なりひっそりと咲いている。

里山大百科「夏」植物らしからぬ植物

植物は必要な栄養をみずから光合成をすることで得ているのが一般的である。 しかし、植物なのに葉を持たず光合成をおこなわない、つまり生産者であることを止めてしまった変わり者もいる。 このような植物は、菌類との共生で地中の有機物を分解して栄養を得る腐生生活か、他の植物から栄養を直接奪う寄生生活のいずれかの方法をとっている。 ▲ナンバンギセル ナンバンギセルの花を正面から見る。開花後、非常にたくさんの細かな粒子状の種子を実らせ、冬の間に付近に散らす。 ▲(写真右下)ナンバン

久野公啓の生き物よもやま話「ツリフネソウ」

ツリフネソウ夏の終わりから秋にかけて 沢のほとりや 湿った木陰に咲く ホウセンカの仲間 通常は紅紫色の花をつけるが 写真のような ピンクのものもある 花はもちろん つぼみの形もユニークで 訪花昆虫も多い 今は亡き 大学の恩師は植物分類学者 ツリフネソウ類は彼の研究対象のひとつであった そんなこともあり 玄関先に叢生するツリフネソウを大切にしている この花を眺めながらのコーヒーは 晩夏の朝のお楽しみ 学業に厳しかったあの先生 今の私には どんな言葉をかけてくださるかなと 背

里山大百科「夏」水辺の植物

里山にはわき水、ため池、用水路、水田といった稲作を軸にした多様な水辺環境がある。本来、その場に適応した水辺の植物と、それを取り巻く多くの生物たちの生活の場であった。 しかし今は、実際に歩いても、植物が豊かに繁る水辺の風景に出会うことはきわめてまれにになった。 それでも水辺にたたずむとき、なつかしさがこみ上げてくるのは、「瑞穂の国」といわれた日本の原風景だからだろうか。 ▲水面を埋め尽くすほどのヒシの群落。/埼玉県嵐山町(撮影・大久保茂徳)

里山大百科 コラム「虫こぶの謎!?」

草木にある奇妙なこぶ里山散策の道すがら、さまざまな草木に奇妙なこぶを見かけることがある。それらはよく見ると形や色もさまざまで、不気味に感じたり、かと思えば熟れた果実のごとくおいしそうに見えるものまである。 ▲ミズナラの葉のナラハヒラタマルタマフシは、タマバチ類のしわざ

里山大百科「春」スミレ

里山はスミレの宝庫だ。 一見すると皆同じように見えるスミレの花だが、少し注意深く観察すると、すぐに数種類のスミレを見分けることができるようになる。 スミレ同士、多様な里山環境に応じて棲み分けることで、多くの仲間の共存を可能としているのである。 ▲春雨のなかベニシジミがスミレを訪れた。(埼玉県滑川町/大久保茂徳・撮影)

里山大百科「春」ホオノキの花

ホオノキの花は直径約18cmと大きく、白い花弁が8~9枚ならんだ姿は春の里山でひときわ目を引く。 新緑の林を歩くうち、ほのかな香りが漂えば、花は見えなくてもホオノキの開花を知ることができる。 そのかぐわしい香りに、昆虫たちもひかれてやってくるのだが、ホオノキの花の受粉が成功する確率は低い。 そこには花の仕組みの複雑な事情が絡んでいる。 ▲開花初日の花を上から見た。雄しべの柱頭が見える。

里山大百科「秋」秋の七草

万葉の昔から秋の七草とされているのが、ハギ、ススキ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウである。 山上憶良の歌が元だとも、日本人が秋を好んだ表れともいわれる。 しかし、このうちオミナエシ、フジバカマは野生のものが少なくなってしまった。 秋の野辺でいにしえの風趣をたどってみようと思い立っても、かなりの苦労を伴うのは間違いない。 ▲オミナエシ/山梨県小淵沢(藤丸篤夫・撮影) 「女郎花」とも書くが、やさしい感じの姿形から付けられたという。根は利尿剤として用いら

里山大百科「秋」ヒガンバナ

9月下旬のお彼岸のころ、田んぼの畦道や河川の土手を赤く染めるヒガンバナ。 曼殊沙華ともいわれるこの花が咲き揃い始めると、秋の到来を感じる。 花のころには葉がまったく見られないので奇妙な感じを受けるが、冬から春にかけて綿形の葉を多数伸ばしている。 花が終わり葉だけになった冬緑(とうりょく)のヒガンバナは、光合成をフル稼働させ、地下の鱗茎(りんけい)に同化物、デンプンを蓄える。 ▲棚田の斜面に咲くヒガンバナ/愛媛県松山市(新開孝・撮影) ▲ヒガンバナの蜜を吸うアゲハ/愛

里山大百科「夏」雑木林を彩る小さな花

夏の雑木林は、おい繁った木々が葉をいっぱいに広げ、光も多くは直接林床までは届かない。 林の中は、アズマネザサなどのササ類がおおい、想像以上に暗い。 この暗い林床は、夏の暑さや強い陽射しを逃れるように咲く植物には、快適な環境となっている。 さまざまな照度の林の中で、涼しげな花をつけ、林を飾ってくれる。そしてまた、多くの生きものたちの出会いも可能にしている。 ▲キツネノカミソリ/東京都清瀬市(撮影・新開孝) 夏真っ盛りの8月開花の時期に葉はない。キツネノカミソリはヒガン