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今年も織姫と彦星にひそかな感謝を

「今年は久しぶりに会えるねー!」

「2年…いや、3年ぶりか。まさかこんなに会えないなんて思ってなかったもんなぁ」

「本当〜! ただでさえ梅雨時期で天気悪いってのに、なに? ここ最近の異常気象! ちょっとおかしいんじゃないの。みんなもっと環境に配慮してほしい! おかげでこっちは毎年毎年会えなさすぎて、彦星の顔も忘れそうだわ」

久しぶりに晴れの七夕。
私の脳内織姫は、なぜかいつもギャル。
よかったね。今年は無事に再会できそうで安心した。

特別ロマンチストでもないのに、七夕の天気がやたらと気になる。子供の頃の影響かもしれない。

私の母はドライな性格だったがなぜか季節の行事はとても大切にしていた。七夕もそのひとつ。

7月7日には必ず近くの山に笹を切りに行って、短冊も用意してくれた。母と妹たち、みんなで願いごとを書く。

「おいしいものがたくさん食べられますように」
「大きくなったら美人なおねえさんになれますように」
「背が伸びますように」

他愛もない願いごとばかり。
母の願いごとは毎年同じ。

「家族みんなが健康で幸せに暮らせますように」

ひとしきり、思いつく限りの願いごとを書いたら、誰かしらが歌い始める。

「さ〜さーのーは〜さーらさら〜♪
のーきーばーにゆーれーる〜♪
おーほしさーまーきーらきら〜♪
きーんーぎーんーすーなーごー♪」

そしてみんなで織姫と彦星が無事に再開できるように祈った。


私は小学生のとき、短冊に書いた願いごとが現実になったことがある。

当時、浮き輪をつけないと泳げなかった私は

「浮き輪なしで泳げるようになりますように」

と短冊に書いた。次の日、今まで散々練習しても溺れてばかりだったのがウソのように、急に泳げるようになった。

うちの地域では七夕が旧暦で行われていたので、当時は8月の夏休み真っ只中。旧暦とはいえ、遅れてきた七夕パワーに心底驚いた。

私はそれ以来、織姫と彦星にひっそりと感謝の気持ちを抱いている。

だから七夕にはできたら毎年晴れてほしいし、七夕という季節の行事が、ずっと廃れずに残るといいなと思っている。

最近ではめっきり短冊に願いごとを書く機会も減ってしまったけれど、今ならきっとこう書く。

「織姫と彦星が毎年まちがいなく再会できますように。そしてあわよくば、うちの家族がみんな健康で、できたら笑いの絶えない楽しい一年を過ごせますように」と。

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