ポップな表現の裏に潜む「死」の表現〜「アンディ・ウォーホル・キョウト」展
京都市京セラ美術館で開催中の「アンディ・ウォーホル・キョウト」展へ。米ピッツバーグのアンディ・ウォーホル美術館の所蔵品200点以上で構成された企画展です。スマホ撮影&SNS投稿OKとのことだったので、スマホで撮った会場風景数点を下記リンク先のInstagramに掲載しつつ、こちらでご報告を。
初期のデザイナー時代のコーナーと1956年の来日時に関するコーナーは写真を撮ってませんが、あしからず。音声ガイドを聞いていて初耳だったのは、ウォーホルが子どもの頃は病弱で貧乏だったこと。ハングリー精神バリバリだったのでしょうね。結果的に、まさにアメリカンドリームを果たしたわけです。
デザイナーとして活躍し始めてセンス抜群のイラストを数多生み出したことを示す多くの作例からは、才能に満ちあふれていたことがよくわかりました。今回自分へのお土産として買った絵はがきにあしらわれた猫のイラストなんて、ホントにキュートです。
来日関連のコーナーで印象に残ったのは、2週間の日本滞在で和食好きになったウォーホルが、帰国後もニューヨークの和食店に通い続けたこと。そして、ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルを固定された視点から8時間にわたって撮り続けたという映像作品が、京都•龍安寺の石庭を眺めた経験に想を得ていた(のではないか?)ということです。スクリーンでは何も動かないのに映像作品である必然性を理解することができた気がしました。撮影したムービーカメラを鑑賞者の目と考えれば、鑑賞者は8時間にわたってビルを眺め続けることになる。実際にウォーホルは石庭をかなり長い時間眺め続けていたのかもしれませんね。
美術家に転身して制作した《花》も《牛》も《キャンベルスープ缶》も、表現が垢抜けていて素敵であることに異論のある人は今はあまりいないでしょう。当時は「なぜ缶の絵がアートになるんだ」などという、いかにもありそうな批判を浴びたのは、サクセスストーリーを語るには、むしろ都合のいいエピソードだったとさえ思えてきます。
ビートルズやプリンスなど有名人を多くモチーフにしたのは、スターが大量消費社会が生んだ偶像であることを象徴すると見られる一方で、先に挙げたハングリー精神の裏返し現象とも言えるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。ウォーホルはまさにハングリーな状態からスターダムをのし上がったわけですから。でも、ビートルズの作品などは、ホントに素敵ですよね。
所蔵館の門外不出作品だったという《三つのマリリン》は、館外では初公開とのこと。ウォーホルが俳優のマリリン・モンローを作品にしたのはその死がきっかけで、永遠に残したいという思いからだったと言います。まさにその望みはかないつつあるように思います。
その後もウォーホルは死と向き合うことが多く、死刑で使う電気椅子や自動車事故を題材にしたことは有名です。中でも、《ギャングの葬式》という作品はすごい。そのタイトルは実はフェイクで、モチーフにしているのはある老女の葬式だったのだそうです。タイトルを見て作品を鑑賞する人は多いと思います。フェイクであることがわかってもなお、この作品を見ると「ギャング」という言葉が頭に引っかかり続けます。ウォーホルの仕掛けた罠にはまって抜けられなくなってしまったのです。
そして、最後のコーナーで見た《最後の晩餐》。もちろん、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた名画を引用したうえで、まるっきり違う表現に変容させた作品です。複数台描かれているオートバイは、何を象徴しているのでしょうね。
ウォーホルは東方カトリック教会の敬虔な信者だったそうです。しばしば死をテーマにし、40代の頃に銃撃事件の標的になったこともあるウォーホルが《最後の晩餐》を自身のテーマにしていたというのは、なかなか意味深です。この作品をミラノにあるレオナルドの《最後の晩餐》のある修道院の近くで展示した少し後に、ウォーホルは心臓発作で死去しました。
【展覧会情報】
展覧会名:アンディ・ウォーホル・キョウト
会場:京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」
会期:2022年9月17日(土)~2023年2月12日(日)
開館時間:10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(但し祝日の場合は開館)、12月28日~1月2日
公式ウェブサイト:https://www.andywarholkyoto.jp/
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