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感想を、語り合いたい映画たち

感染症の影を追うように「おうちシネマ」が流行って、もう2年近くが経ちました。

「いい映画」はたくさんあるけど、感想を語り合ってこそ映画の輝きは増していくもの。

見る時の年齢、経験、感情によって、映画の感じ方はさまざまですよね。

最近だと、ありきたりですが『花束みたいな恋をした』(2021)を見たとき、人によってこんなにも感想が異なるのか!と驚いた覚えがあります。「人生にカルチャーは必要か?」などと、友人と話したりしました。

そこで!独断と偏見で「感想を語り合いたい映画」を集めてみました。

全部で11本、順番は年代順です。
特にオススメの映画には★をつけました。

それでは、どうぞ!

洋画編

1. シェーン(1953, アメリカ)

アメリカの人々に愛され続けるクラシカルな西部劇。時代は民主主義よりも暴力が強かった19世紀後半。人殺しだけが全てではないと説く熱き開拓移民スターレットと、流れ者で最強殺し屋のシェーンが、ワイオミングの高原を舞台に、正義を勝ち取るべく戦う。

暴力ではなくコミュニケーションで問題解決を図るスターレットが、殺し屋シェーンを説得するという構図は、民主主義の萌芽を感じさせ、そのコントラストが美しい。

西部劇と聞くと、暴力シーン一辺倒だと思われがちだが、実際には細やかな人間関係に心を打たれる。(ただもちろん暴力シーンはあり)

西部劇好きなあなたはもう一度、西部劇初心者のあなたも気負わずに、鑑賞してみてください。

2. グラン・ブルー(1988, フランス)

素潜りの深さを競う「フリーダイビング」の世界を描く。いつまでも瞼の裏に碧い世界が焼き付く、心に残る作品。ダイバーたちは、海の底にこそ真実の生があり、陸上の生は偽りだと信じていた。

その狂おしいまでの海への愛は公開当時、フランスの若者を惹きつけ1000万人を動員した。

★ 3. ニューシネマパラダイス(1988, イタリア)

イタリアの片田舎に建つ映画館“パラダイス座”を舞台に、映画好きの少年・トト(サルヴァトーレ・カシオ)の成長を詩情豊かに描き出した傑作。
冒頭シーンで、イタリア映画音楽の巨匠・エンニオ=モリコーネのテーマ曲が流れ、ノスタルジックなメロディーと共に観客は一気に作品世界へと引き込まれる。

映画の前半は、少年トトと老映写技師の微笑ましい友情に終始笑いっぱなし。中盤では主人公と共に恋の苦悩を体験し、後半は「時の流れ」という残酷な現実を見せつけられ、2度と戻らぬ過ぎ去った過去への郷愁の前に立ちすくむ…。
人生のいろんな局面が詰まった作品だ。

日本での初公開時には、連続40週のロングラン上映を達成。シネスイッチ銀座にて観客動員数約27万人、興行収入3億6900万円という単館ロードショーの新記録を打ち立てた。これは、約25年が経った今もまだ破られていない。

幼少期のトト君が可愛い、アカデミー賞外国語映画賞(1990)受賞作品。

★ 4. テルマアンドルイーズ(1991, アメリカ)

アメリカ南西部を舞台に二人の女性の逃避行を描き、アカデミー賞/ゴールデングローブ賞脚本賞に輝いたロードムービーの傑作。女性脚本家の Callie Khouri は後にこう言った。

「女のアウトロー映画はなかった。昔はどれも性の対象。そうでない作品はそれまではなかった。女性をきちんと見つめたような、そんな描き方をした映画はなかった」「フェミニズムや女性の地位向上が作品のメッセージじゃない。女性たちに人生は自分で決められることを示しているの」。

どんな環境でも自分らしくあり続けることは、簡単ではない。人生の転機に直面したときにこの映画が背中を押してくれるはず。

5. フォレスト・ガンプ(1994, アメリカ)

90年代の映画シーンを語る上で欠かせない『フォレスト・ガンプ』。日本を含め世界中にファンがいる、名作中の名作だ。

アメリカ人がイメージするチョコレートの箱は、中にハート型や星型などいろんな形のチョコが入っていたり、食べるまで中がナッツかクリームか分からなかったり、とてもワクワクするものらしい。

『フォレスト・ガンプ』では母が子に人生をこう例える--「人生はチョコレートの箱。開けるまで中身は分からない」。何でも実際に体験しないと幸か不幸か分からないし、行動せずに悩むのではなく、勇気を出してぶつかりなさいというエールだ。
辛いことや悲しいこともある人生を、あえて甘い「チョコレート」という表現で語るところに、母の優しさが溢れている。

6. クラッシュ(2004, アメリカ)

この世界の「不寛容」をテーマにした社会派映画。日常生活の中で個人が抱く小さな負の感情は、やがて地域社会や家庭にクラッシュ(衝突)を引き起こし、社会を破壊する。

しかし、衝突することでしか得られない救いというのも存在する。

緊張に包まれたロサンゼルス市を舞台に現代アメリカの現実と希望を描いた、アカデミー賞3部門(2005)受賞作品。

邦画編

7. 文楽・曽根崎心中(1981)

原作は、元禄16年(1703)に大坂道頓堀の竹本座で上演されて以来、300年間受け継がれてきた、近松門左衛門による世話物浄瑠璃。

許されぬ恋を貫くため、そして金銭トラブルの汚名を晴らすために心中を選ぶ、醤油問屋の手代・徳兵衛(25歳)と、大坂北新地天満屋の遊女・お初(21歳)。

「この世の名残、夜も名残」で始まる心中に向かう道行(登場人物が目的地に向かう道中の情景を華やかに描いた場面のこと)の詞章(文章のこと)は名文として知られている。

ジャパニーズカルチャー日本代表とも言える本作品は、この映画を契機に海外で絶賛され、グローバル文楽となった。

8. ALWAYS 三丁目の夕日(2005)

爆笑&涙腺決壊映画。

舞台は昭和33年(1958)、東京の下町。貧しくてもタフに生きる、庶民の悲喜こもごもの暮らしを描く。血の繋がっていない赤の他人に、こんなにも人は優しくなれるのか….

2時間で5本分の映画を見た気持ちになる。

9. おくりびと(2008)

人間の死とは神聖だが、映画にするにはシリアスなテーマ。

しかしあえてユーモアを交えつつ伝統的な日本様式の葬式を描き、結果として海外の観客をも感情移入させた。

日本アカデミー賞10冠をはじめ、国内外の多くの映画賞に輝いた、名実ともに歴史的な傑作。

10. 阪急電車(2011)

阪急は、関西の中でも1,2を争う品の高さで知られる高級電車。綺麗なえんじ色の車両を舞台に、さまざまな人生が重なり、すれ違い、また重なり合い…。
小さな奇跡がキャンディーのように愛おしい群像劇。

震災直後の公開(2011年4月29日)だったこともあり、観客の心を暖めた。

★ 11. 海街diary(2015)

鎌倉にある古い一軒家で日々を過ごす、ごく普通な家族の日常を実に淡々と描いた作品。
大した事件も起きず、ネタバレなんて概念が存在しない。

しかし、そんな平凡な日常を、あえて生活感溢れるタッチで描くことで、作品のリアリティが強められる。
代わり映えしないような日々にこそ幸せが隠れているのだというメッセージを、観客に押し付けるのではなく、自然と観客に気づかせる構成になっている。

そんな日々もずっと同じままではいられず、人の暮らしというのは絶えず変化し続けるものなのだという無常感を移ろいゆく季節と共に描き、無常の日々の中で、人は助け合って生きていくものなんだ...と、日常が儚くも美しく描かれる。

キャスト陣もピタッとハマっている。特に主演となった4人の素晴らしい女優たちにとっては、この映画こそが間違いなくキャリアにおけるハイライトとなるはず。

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