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B2B営業に大事なことを議論する機会は貴重だ:最近の会話からのTips 

最近、いろんな方との会話の中でB2B営業に関する面白い議論ができる機会がいくつかありました。3つのトピックで紹介しつつ自分の中でもまとめになると思うので記事にします。

①Buyer-Sellerの関係性とそのライフサイクルについて

B2B営業では、多くの場合で購入側の企業にはバイヤーの立場になる担当者の方がいらっしゃいます。この方は調達部門、購買部門に所属する方であったり、サービスを検討する部署での窓口的立場の方であったりしますが、大事なことはバイヤーの方は購入側企業の社内プロセスを進めるための起点であるということです。個人のお客さまが商品やサービスを購入するのとは違い、B2Bのビジネスの場合は購入、契約に多くの人間が関与することが知られています。

今回ここにまとめたいのは、買い手企業と売り手企業の関係について関係構築によってフェーズが分かれるということです。簡単に示すと、以下のような状態です。

  1. 買い手が製品やサービスについて情報を収集し、売り手に確実な情報を求めるフェーズ

  2. 買い手は売り手の製品やサービスの理解を高め、この売り手から購入することが望ましいことを判断するフェーズ

  3. 買い手が自分達のビジネスの中で売り手の製品やサービスを活用しているフェーズ

  4. 買い手が売り手の製品やサービスから離れる検討、もしくはそのための準備をしているフェーズ

それぞれのフェーズで買い手側が求める情報やアクションは異なります。例えば最初のフェーズでは、買い手が求める情報を正確かつ素早く提供すつことが望まれます。その反応度合いによって、買い手は売り手に具体的な提案ステップへ移行することを判断するため、売り手は自社の持つ多くの情報源の中から適切なものを判断して確実に届けなければいけません。次のフェーズでは、売り手は具体的な提案を行うために買い手の状況や課題に応じて製品やサービスを適応させていく必要があり、そのやり取りの中で買い手は売り手の姿勢やアイデアの質、対応力から信用して、購買プロセスを走らせることになります。

購入前のフェーズとは異なり、B2Bビジネスでは購入後のプロセスがとても重要です。継続的にその製品やサービスと利用することが買い手企業にとってメリットとなるかどうか判断の連続となるためです。もし製品やサービスに問題がなく、トラブルなどがあった際に素早く対応することで十分に価値が継続できる場合は、買い手も売り手との時間をあまり多く取る必要がありません。一方で、製品やサービスが複雑であったり、導入後のアクションが多い場合には、売り手がどれくらい買い手企業に伴走してくれるか?が関係性を継続するための重要なポイントとなります。

売りっぱなしになり、買い手側へのフォローが疎かになっていると継続購入や更新がなされず、関係が終了してしまうことがあります。買い手にとっては突然の判断のように見えても、買い手にはその判断をするだけの十分な材料が揃ってしまっている可能性があるので、注意が必要です。

この内容について、AI営業パーソンの可能性と営業組織への適用をまとめた論文が面白かったので、共有します。Twitterで簡単に感想文を書いていますので、そちらも併せて参照いただければと思います。

②Customer's customer successについて

私はこれまでのB2B営業のほとんどの時間をアカウントマネジャー職として過ごしています。つまり、担当するテリトリーのお客様に関して新規、既存の全ての営業プロセスを管理する働き方です。そのため、新規ビジネスの獲得もさることながら、多くの時間を既存顧客との関係構築やお客さまが如何にして市場で価値を発揮できるかを考える時間に使います。

わかりやすい例は、自社とお客様のサプラーチェーン上の立ち位置を理解することです。私は前職で半導体製造プロセス向けの材料を担当していましたので、お客様企業の多くは国内半導体製造メーカでした。iPhone5辺りが出てきた頃で、日本の電子部品メーカが多く採用されることで我々の材料を使って製造を増やしている時期です。お客様企業はiPhoneをはじめとした様々なアプリケーションでの自社製品(電子部品や半導体チップ)採用を目指して市場研究を行っています。それに併せて、材料メーカも当然市場で求められる電子部品やチップの特性について理解を深めます。そして、お客様企業が市場で勝てるように材料や製造プロセスの面から提案、サポートしていきます。重要なポイントはお客様が市場に提供する価値を共に考え、創出していく事です。

SaaSなどのテックツールは、それ自身がお客様のビジネスを作り上げることがあまり多くないため、Nice-to-haveを乗り越えてMust haveな存在になることに苦労します。そのために、真の顧客の声を収集して自社製品サービスに反映させることが成否に関わります。

ここで考えたいことは、バリューチェーンの考え方です。バリューチェーンとは、事業活動を機能ごとに分類して、それぞれの機能や活動が生み出す付加価値について理解することです(マイケル・ポーターの競争戦略参照)。自社が提案する製品やサービスはお客様のどのような活動において付加価値を提供できるものでしょうか。それによって、お客様は市場に対してどんな価値を提示できるようになるでしょうか。例えば、業務の効率化はコスト面でのメリットとなりますが、それだけではNice-to-haveの域を脱するのは難しいです。業務が効率化することで人間がやるべき業務を再定義して、創造的なアウトプットに注力するための業務デザインを変革することができれば大きなプラス要因となります。つまり、お客様のビジネスをドライブするためにお客様のビジネスのバリューチェーンを理解して、どの部分に自社は付加価値を提案できるか理解することが必要なのです。

ちょっと前になりますが、この辺の内容は少し詳しく書いているのでこちらも参照いただければと思います。

③セールス組織をテックツールについて

以前に別のnoteで営業プロセスの最適化について考察しました。

現代のB2Bセールス活動において、テックツールの活用は不可欠ですし、セールスイネーブルメントについて各企業が注力しているかと思います。セールスイネーブルメントの最大の目的の一つは、再現性高く営業成果を創出できる仕組み作りにあると考えます。この考えの中で重要なことが、1) 営業活動をドライブさせる(デジタル)環境の構築、2)共通の目的を目指す営業文化(もしくは組織風土)の醸成にあると考えます。前半部分がまさにセールスイネーブルメントが盛り上がった要因であり、CRM/SFAのテックツールの貢献が大きいです。

CRMツールとしてSalesforceは非常に高いシェアを占めております。No salesforce, Not existと言われることもあるほど、日々の営業活動と成果をsalesforce上で管理すべく営業管理担当者やマネジャーはダッシュボードとにらめっこしています。一方で、営業活動を実際に行うメンバーの中にはsalesforceのようなテックツールを活用した営業活動にコミットしきれない方もいらっしゃるのは事実です。いくつか原因があります。

  • 実際の営業活動に忙殺され、テックツールへの入力作業を行う時間や神経を確保できない

  • テックツールのUI/UXが実際の営業活動とマッチしていないため、適切な情報を反映できない

  • 自分の活動を入力するけど、自分自身にはそのテックツールを利用するメリットが見出せない(やらされ感が強い)

これらを上手く乗り越えるためにはツール面でのサポート(継続的なツールトレーニングや効果的な活用事例の創出と共有)、モジュールや他のツール連携による入力・出力ストレスの低減など、営業担当者個人が自分の仕事に対してツールを使う自己効力感を高めることが一つの有効な手段として報告されています。この論文はLinkedInで簡単にですが説明しています。

テクノストレスと在宅勤務環境でのワークエンゲイジメントに関する論文の紹介も過去にツイートしています。

これまでに調べたり、考えたり、実践してきたことが最近になって人と議論する機会につながってきた様に感じます。やっぱり学びは尽きませんし、いろいろな方との議論の時間を大事にしていきたいと思いました。


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