【小説】 変える、変われる。 : 30
スチールパンの軽やかな演奏で心を落ち着けながら帰宅した。
もし今度能面に何か聞かれたところで「たまたま動画を開いていた」で良いではないか、ということにする。
じっくり見て聴いているところを、じっくり見られていたとしても。
まあ、聞かれることも無いでしょうけど。
いつもの早く帰った日のように、ゆったりときき湯をばら撒いた風呂でパチパチっとリラックスして、湯上りにプシュっとビールを開ける。
酒好きでは無いけど、「飲んでいます感」が好きだ。
とても燃費が良く、ひとり飲みなら1缶ですっかりポーっと出来上がれる。
弱い訳では無いけど、たくさん飲んだところでテンションの上下運動も無いので、何となく勿体ないし、ちょっと口数が増える位であまり変わらないので、何人かの飲み会では会計を任されて面倒くさかったりはするけど、それも慣れ。
そういえば、事務所飲み会を所長の尻が落ち着いたら快気祝いとしてやりたいなぁ。
ビールが程よく回ってきたところで、癒しの大正琴タイム開始。
パソコンのお気に入りから「千本桜」をポチリ。
そのまま「おすすめ動画」のされるまま大正琴演奏を流しつつ、大正琴の形態を見ていると種類があることは見てわかっていたけど、どうも音色が少しずつ違うような感じに気づいた。
あの「単調電子音」時代はとっくに過ぎ去っているようなので、大正琴自体のデザインや柄が違うだけでは無いなと。
やる気を出して調べ始めると「おすすめ動画」の中で「音色の比較」なる動画があることに気づいた。
これをポチっとしてみれば調べなくても勝手に答えが出る予感がする。
短い動画の中で4種の音階別の大正琴が奏でられていて、当たり前だけど全部はっきり違う音色。
バスがベースの音としか思えない。
アルトはチターそっくり。
タイプⅡなる謎の音階の大正琴がスチールパン風で、ソプラノが往年の「日本直販仕様電子音」であることがわかった。
初めて演奏している盤面と手元を見たけど、あまりたくさん鍵盤が無いし、弦も多くは無い。
楽器演奏を子供の頃から苦手としている自分にもひょっとしたらイケるのではないか?と思った、もうしっかり大人だし。
小学校5年か6年生の時に学年でピアニカ演奏会があった。
全く出来ないし嫌いだったので、夏休みの全体練習をサボりまくって2回位しか行かなかった。
結果は前で演奏している子の頭から首にかけてピッタリ縦に持って、聴きに来た保護者たちに鍵盤を全く見せない作戦でやり過ごした。
サビだけちょっと弾けたので、そこだけチラっと斜めに鍵盤を見せては「僕はちゃんと弾けています」アピールをした姑息な思い出。
「ミ・ラシド~、ラシド~」だけ覚えている「ラ・クンパルシータ」の懐かしさよ・・・。
現物を見てみたくなってきたし、弾いてみたくもなってきた。
大正琴メーカーをサクサクっと検索して取扱店を調べてみたら、気分転換にドライブするには程よい距離感の場所にお店があることがわかった。
週末、繰り出そうか、どうしようかな・・・
缶ビール1本が現時点で、背中を押しに押してくる。
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