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逃避行記

先週、全ての仕事を放り出して長野に逃げました。
人生で初めての一人旅だったので、その全てを記録しておきます。


火曜日、午後。

全てが無理になり部長の前で大号泣したことにより3日半の有給休暇を取ることができ、部長に言われた「どこかに旅行してみたら気分も変わるかもよ」がどうしても頭を離れなくて、とりあえず「一人旅・国内・自然」とGoogle先生に質問してみました。
すると出るわ出るわ、国内オススメ旅先の数々。

多すぎてサイトを選ぶのも面倒だったので、とりあえず一番上に出てきた旅行先まとめのサイトを読んでいると、目に留まった神戸の中華街。


「あ、長崎の中華街に行きたい。グラバー園の前のお土産屋さんにも行きたい。長崎に行こう」


神戸じゃないのかよ、と思いながらもひとまず長崎行きの翌日の飛行機を調べます。
が、JAL,ANAは目玉が転がり落ちるような価格(当たり前)で、安くても早朝のLCCのみ。
飛行機はよく利用するので羽田空港はもう迷うことなく、空港内地図を見なくとも行きたいお店に行くことができるほど慣れていますが、成田空港には行ったことさえなくスカイマークとソラシドエア以外のLCCにも乗ったことがないので、飛行機で行くほどの場所は今回はやめておこうという気持ちになり、長崎行きは延期。

長崎上空からさらに高度を上げて中部地方あたりまで見える意識になった時、「あ、竹富島いいじゃん」と下の方に焦点が合いました。
(飛行機+船移動であることは一旦無視)

大昔、あの辺りより少し上の方の離島に住んでいたことがあるので南西諸島の海が恋しく、春だし暖かそうだし過ごしやすそうで逃避行の選択肢として大有りだな、とワクワクしながら調べてみました。


「宿がしぬほど高ェ。却下」


トータル5万円程度で楽しめるたびにしたかったのでまず飛行機代でアウトですが、そもそも1人1泊8万円超えの宿に泊まってたった1日で帰ってくるのは勿体なさすぎるなと。

沖縄周辺は今度長い休暇を取ることができたときに行くことにして、今回はもっと手軽な、できれば電車一本で行けるところを選ぶことにしました。
そうはいっても、上京してから10年経ったとはいえ未だに東京の地理がどうなっているのか分からず、電車の種類も分からず、新宿にしか出かけることができない私が電車一本で行けるところという視点で探すことはできないので、「東京から一本・旅行・自然」と再びGoogle先生に質問。

そうして出てきたのは金沢や長野の山々、箱根、熱海、日光、東北各地。

金沢は2年前に実は一人旅をしようとしていたにもかかわらず実現できなかった場所なのでかなり惹かれましたが、このメンタルで日本海側に行くと気持ちが沈みそう、しかも食べ歩きがしたいわけではなくただひたすら美しい空と水と緑に癒されたい(できれば山登りはなしで)と思っていたので、金沢リベンジもまた別の機会に回すことに。

日光や東北各地も魅力的ではありますが、寒そうだし雪に降られると装備がなくて困るし、お寺や神社が見たいわけでもないのでまた未来の私にお任せすることにしました。
そして箱根、熱海は今回じゃなくても行けるので却下。


選ばれたのは、長野県でした。


今まで一度も行ったことはないものの、空が好きなのでずっと「山は星空が綺麗に見える」「星空ツアーがある」「雲海もやばい」「山に行けばなんでも綺麗」「雲海見ながら入れるお風呂がある」というのは知っていて、ずっと憧れていた場所であり、いつか行くことができたら…できれば空気が冷たいときに…と願っていた長野。

しかも交通手段を調べてみると、ある程度の場所は電車で行けそうで歓喜。
行けるじゃん、車を運転できない私でも!!

さらに調べを進めて行くと、一番行ってみたかった上高地はまだ閉山していたので美しい星空を拝むことはできないとのことでしたが、もうすでに想像上の美しい空と雲と冷たい空気に心が奪われている私にはそんなことは関係なく、旅行サイトで「長野・1人・1泊・夕朝食付き」で検索をかけて気になったホテルをどんどん別タブで開いていきます。

「これ以上タブが増えると面倒になって旅行すること自体諦めそうだな…」と思うほどタブが溜まったところで各宿の詳細を見て、どんどんふるいにかけていき、最終的に山の上の4万円の宿と、松本市内のモダンな1.5万円の宿が残りました。

どちらも良さそう。
どちらも私の好み。
どちらもご飯が美味しそう。
山の上は景色が良さそう、市内は周辺に商店街があって翌日まで楽しそう。

散々考えた結果、今回はとりあえず初めての旅で自分が何をしでかすか信用できなかったため、損失の少ない松本市内の1.5万円の宿にしました。
4万円の宿は近いうちに必ず行きます、絶対に。


予約後、すぐにかかってきた宿からの確認の電話で食べられないものを聞かれた際、なぜか「固形チーズが食べられません。とろけるチーズだったり、何かと混ざっているチーズであれば大丈夫ですが、6Pチーズがどうしても食べられません。ピザのチーズは問題ありません」と詳細な説明をしてしまい、明日のフロントは電話かけてきてくれたスタッフさんじゃなければいいなと恥ずかしくなったりしながら、移動手段を調べる工程に移ります。

私は陸路での移動に驚くほど苦手意識があり、「お金持ちになって両親のローンと自分たち兄弟の奨学金を完済し資産用のマンションを購入した後に買うものはプライベートジェット」と決めているほどできることならどこにでも空路で向かいたいのですが、さすがに宿代よりも移動費の方が高くつくのは気分が良くないので、陸路移動への覚悟を決めます。

「陸路…陸…電車…なんだよ特急って…在来線との違いってなんだよ…ああもう何もわからない……」と少々旅自体諦めたくなりながら、なんとかして見つけた親切な人の特急あずさ25号の乗り方ブログを読み、チケット購入を完了させることができました。
書いてくださったどこかの優しい方、ありがとうございました。

(ところで特急券と乗車券が分かれてるアレは何なんですか?なぜ飛行機みたいに、チケット1枚買えば座席まで指定されている簡潔なチケットではないんですか?何ですか?なんか……あの…………二つ目の料金(何)は払わなくても電車がガラガラだったらしれっと乗れたりするんですか?もしかして新幹線も同じですか?というかグリーン車って何ですか?特急自体がグリーン車みたいなものじゃないんですか??陸路の乗り物、何なんですか??)


まだ旅に出てないのにもう書くのに飽きてきましたね。
読むのも飽きてきたでしょう。
作文の宿題は旅行前夜や行事の準備から書き始めるタイプです。

ちなみに、わからないながらも無事に宿予約と電車のチケットを取ることができて安心したからか、ここから翌日駅弁を新宿駅で買うまでの間の記憶が一つもありません。


水曜日のお昼前、程よい気温に気分がよくなり持って行くつもりだった予備の荷物は全部置いて、念のために折り畳み傘だけリュックにぶっさして、たくさん歩くことを想定していない『10cm身長が盛れる厚底ヒール』に『令嬢』とあだ名をつけているワンピースを着て新宿駅まで向かいました。
おそらく。記憶がないので。

そして駅弁はおかずの田楽が食べたくて選んだ、政宗公御膳。今回の旅と全く関係ない仙台。
それでも人生初の駅弁、そこまで好きじゃないおかずもなんだか特別なものに感じました。

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……長野って遠いんですね。
3時間くらいかかりましたよ、聞いてない。
爆睡から途中覚醒したタイミングで
「長野まだ?遠くない?…遠いか」
「長野入ったよね?長野でかくない?…でかいか」
と二度問答したほど。
飛行機ならもう着いている時間なので…。

早く着いてくれないとお尻が四角になっちゃうよ(?)とそわそわしながら長野のいろんな駅を通り過ぎ、ようやく終点の松本駅に到着。

車とバス以外の乗り物に3時間も乗っていることが今までなかったので山口あたりまで連れて行かれるんじゃないかと不安に思っていましたが、無事に松本で降ろしてもらえました。よかった。


人生初、長野県。
初めまして、よろしくお願いいたします。

ホテルのアクセスページには降り口のことなんて一言も書いてなかったのに降り口が2箇所もあり一瞬絶望しかけましたが、こういう時は大体バスターミナルの方に向かえばどうにかなるものであるという、28年方向音痴として生きた経験を集結させ、バスターミナルに向かいます。


いや、どうにもならねぇのよな。知ってた。
道が多すぎるしバスターミナルが眼鏡型のようになっていてあっちからもこっちからもバスが来るんです。まあ、私はバスには乗らないんですけど。
駅を出た瞬間、右に行けばいいのか左に行けばいいのか、はたまたまっすぐなのか斜め左右のどっちなのか全くわからず。

初めての人間に容赦ない、松本駅。
大体こういう場面で家に帰りたくなります。

ただ、私も負ける訳にはいません。
なんて言ったって、人生初の一人旅ですから。
こういう時は人がたくさんいるであろう通りに出ればなんとかなるということを28年以下略で知っているので、目の前の高校生集団に着いていきます。まっすぐでした。
余裕ですわ、ハハッ。


いつまでも高校生の後を歩いていると不審者だと思われかねないので適当なところで曲がると、本当に適当すぎて見ていたGoogleマップが一瞬死に、使えねぇマップに用はねぇのでお休みくださいとやさしい気持ちでスマホをポケットに捨て、商店街の方に向かえばなんとかなりそうだという事前に得た知識だけで適当に歩いたところ、前日ネットで見かけた商店街のカエルの看板が出てきました。
奇跡。いや天才。

チェックイン後にこの商店街には来ることにして、マップが作動しそうな場所まで出てきたので再びマップ先輩を呼び出したところ、なんとなく合ってそうな間違えてそうな微妙な態度。
仕方がないので半分程度頼りながら路地を歩くことにしました。

入るつもりもなかった神社に入らされ、マップにない出口から出て、歩みを進めると現在地ポインターもギュンと移動し、(略)、盛大に迷いながらなんとか目的地である、素敵な宿の前に出ることができました。
あの道は二度と通れません。


冷静に考えて、迷った報告とかいらないですよね、なんだこれ。
ちょっと疲れてきたのでここまでを第一部として、一旦終わります。
デルトラ・クエストばりの長編になったらどうしよう…書き終わる自信がないです。
(デルトラ・クエストは、小学校4年生の時に初めて読んで続きが出るのをワクワクしながら待った、思い出の小説です)


第一部おまけ。
この前Netflixで『ユ・ヨルの音楽アルバム』という映画の冒頭を観たんです。
その主人公たちが最初に時間を過ごす場所が街のパン屋さんなのですが、道に迷っている中で、激似な雰囲気のパン屋さんを見かけました。
翌日迷った時も奇跡的に再び巡り会えたので、写真を撮りました。

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第二部へ続く。多分。


ちゃんと続きました。
第二部はこちら



たのしく生きます