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怠惰:同じことを二度とやらないために知恵を絞る

バックオフィスの人は黙々と作業をしている、毎月同じような作業を繰り返しやっている。そういうイメージを持たれることは少なくないですし、実際にそういう仕事内容も結構あります。

しかし、そういう単純作業を繰り返し行うような仕事は近い将来ほぼ間違いなくなくなります。2014年にオックスフォード大学のオズボーン教授らが書いた『雇用の未来』という論文をはじめとして、この問題は世界中で指摘されています。

早く正確に、何度やっても同じ結果を出す、という処理の精度に関しては私たち人間が機械に勝てるわけがありません。暗算のスピードや正確性では電卓の方が遙かに優れています。

バックオフィスの仕事はこれまで紙やハンコなどのアナログな処理が多く、デジタル化が大幅に遅れていました。顧客リストを紙の台帳で管理している会社はほとんどありませんが、紙の書類を見ながら会計処理をしたり、入社手続きを紙の書類でやっている会社はまだいくらでもあります。

そんなバックオフィスにもデジタル化の波がようやくやってきています。2018年のSaaS元年から少し遅れはしましたが、コロナウイルスの流行をきっかけに仕事のやり方が大幅に見直されてきています。キーワードは「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。

では、急速にデジタル化・ペーパーレス化が進むバックオフィス、つまり次世代バックオフィスの中で働く人たちはどのようなスキルや性質が求められるのでしょうか。バックオフィスの人たちには馴染みが薄いとは思いますが、『プログラマ三大美徳』の中にそのヒントがあると思ったので、3回に分けて1つずつかみ砕いて解説してみたいと思います。

<プログラマ三大美徳>
第1の美徳…怠惰(Laziness)
第2の美徳…短気(Impatience)
第3の美徳…傲慢(Hubris)

まずは第1の美徳『怠惰』です。冒頭でも述べたように黙々と淡々と作業をこなすのがこれまでのバックオフィス人材に求められてきたことかもしれませんが、これからは「どうすればこの作業をしなくても済むのか」を考えることができる人材が求められます。

自動化、効率化などの耳障りのいい言葉がSaaSの広告では使われることが多いのですが、それを実現するために必要不可欠なのがこの思考回路です。入力をする、計算をするのは手段の話なので、それがシステムによって代替できるのであればそれでいいのですが、問題はシステムに処理をさせる前のお膳立てをすることができるかどうかです。

人間の判断や行動は様々な処理を柔軟に組み合わせて行われています。システムが自動で処理をするためには様々な条件をきちんとクリアしてあげなければいけません。機械が人間のようにいい感じでやっておいてくれるようになるのはまだまだ先の話です。

ここで次世代バックオフィス人材が持つべき『怠惰』とは、面倒な作業をシステム等を活用して、いかに手間をかけずに処理をするか、を考えることです。もちろん、作業内容をきちんと理解していなければ効率化や自動化はできませんので、最初から手を抜こうとするのではなく、まずは自分でやってみた上で「こういう単調な作業はもうやりたくない」と思い、それを解決するためにシステムを活用しようとすることが重要です。

最初からうまくいくはずもありませんし、想定外のことも起こるはずです。それでもそこで諦めずに「絶対に効率化する!」というモチベーションを構成するための大事な要素が『怠惰』なのです。

これまでもExcelやVBAなどを使ってバックオフィスの作業を効率化しようとしてきた人はいらっしゃいました。次世代バックオフィスにおいては、SaaSをうまく活用して効率化をしようとする、ただしく怠惰な人材が必要不可欠なのです。

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