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2023年2月:BYARDの現在位置

こんにちは、BYARD(バイアード)の武内です。

最近は、大河ドラマ『どうする家康』を毎週楽しみに見ております。冒頭の数回を使って「情けない(頼りない)家康」という人物像を、松本潤さんというこれまた全く情けないイメージがない俳優を起用して、という確信犯的な設定に好感を持っています。古沢良太さん脚本なので、この「情けない家康」という伏線が中盤・後半にどのように効いてくるのか、が見ものですね。

さて、昨年10月にようやくBYARDというプロダクトの提供を開始することができ、SaaSプロダクトとしてのスタートラインに立つことができました。初期の弾み車は回し始めるまでのパワーは非常にかかるのですが、プロダクトの再構築などの試行錯誤を経て、ようやく回り始めた手応えがありますので、回転速度を上げていくことに注力しつつ、さらなる加速に振り落とされないように体制を整えていく2023年だと考えております。

昨年度は個人のnoteでの発信があまりできなかったという反省から、本年度は月報として最低でも月に1本は発信していきたいなと思っております。

今月のnoteではBYARDというプロダクトの現在位置について書いていきます。

1.フィットジャーニー


才流さんのWebサイトより(https://sairu.co.jp/method/11752/)

スタートアップではまず「PMFを目指せ」ということがしきりに言われますが、実際にゼロからプロダクトを立ち上げる際には、PMFまでの道のりが遠すぎて、時に見失いそうになってしまいます。

そこで近年は「フィット・ジャーニー」という概念が提唱されています。私はFounderXさんの記事でこの概念を知りました。この概念を1枚にまとめて見やすくした才流さんの記事が非常に分かりやすかったので、今回はそこから図を参照させていただきました。

PMFに到達するまでに、スタートアップは三段階のFitを達成しなければいけません。

(1)CPF(Customer Problem Fit):顧客に課題は存在するか

まずは顧客に課題が存在するか、です。いわゆる「バーニングニーズの発見」がこの段階に当たります。

BYARDというプロダクトを開発する前、私は「バックオフィスの業務管理領域には大きな課題が存在しそうだ」という風には感じていました。AsanaやTrelloなどの優れたツールはあるのに多くの企業でExcel管理と併用され、マネジメント側はそれらを見ても状況を把握することができないということが、これまで私がコンサルティングを提供してきたすべての企業で起こっていたからです。

しかし、業務管理に課題があるからといって「もっといいAsanaやTrelloを作ろう」という風に考えてしまうと確実に失敗します。ツールや機能ではなく、顧客の課題をもっと解像度高く理解する必要があるのです。

SmartHRファウンダーの宮田さんのアドバイスもあり、BYARDは創業期にここを掘り下げるために徹底的なユーザーヒアリングを実施しました。私がバックオフィス領域でこれまでも活動してきたので、Twitterでの呼びかけに反応してくれる方はたくさんいて、トータルで100社を超える方にインタビューをすることができました。

そこから浮かび上がってきた真の課題は「属人化」と「引き継ぎ」の問題でした。DXを意図してツールを導入しようとしても、結局属人化が解消できず、業務の引き継ぎの負担も重く、現場の業務が効率化できない、ということを多くの方がお話しされていたのが印象的でした。

属人化を放置しているので、業務管理をしたくても、情報が各人に閉じてしまい、形ばかりのチェックリストや更新されないマニュアルになり、結局業務管理ツールを見ても「正しいことは何も分からない」のです。

ここに大きなバーニングニーズがあるかもしれない。そんな仮説を持って、次は解決策を考える段階へとBYARDは進みました。

(2)PSF(Problem Solution Fit):課題を解決できる解決策は何か

属人化、という古くからある課題をどうやって解決するのか。

まず最初に「もっと使いやすいマニュアル」とか「もっといいタスク管理/プロジェクト管理ツール」という方向性は捨てました。世の中にかなり使いやすいものがもう既にあるにもかかわらず、属人化の問題が解消されていないということは、その先には解決策はないということです。

切り口としてひとつ持っていたのは「全体最適」の目線で業務全体を俯瞰しながらコントロールすることができないか、ということです。ヒアリングの中でも特にバックオフィスのマネージャーの方からは「業務がどうなっているか見えない」「誰が何をやっているかが分からない」という声が企業規模が大きくなるほど聞こえてきたからです。

各自がそれぞれの仕事をきちんと遂行しているので、業務自体はなんとか回っているけれど、誰か1人が抜けるだけで一気に崩壊するような危ういバランスで成り立っている。それが「なんとか回っている」という状態でした。

1回限りのプロジェクトであればゴールに向けて全員でがむしゃらに突き進むでもいいのかもしれませんが、バックオフィスのような処理が何度も繰り返し行われ、かつ、ミスが許されず、期限も厳格な業務は気合いや根性では継続性が担保できません。

そんなことを考えている中で、AIトラベルの藤本さんが言った「バックオフィス業務でアローダイアグラム(PERT図)みたいなもの作れないですかね。」という何気ない一言で、解決の糸口のようなものがパッと頭にひらめきました。

アローダイアグラムのサンプル(株式会社システムインテグレータのブログより)

作業の流れを図表化したものであるアローダイアグラムは、各作業の実行順序を管理することができるため、各タスクの流れや関係性が一発で分かりますが、進捗状況は分かりません。

一方で、プロジェクト管理ツールでお馴染みのガントチャートは、各工程の作業内容を時間軸でバーチャートにして管理するため、進捗状況は一目で分かりますが、タスク間の関係性は見えません。

平面的な紙の上であれば、このように整理されるのですが、アローダイアグラムの各工程部分が、Trelloのカードのように作業内容のタスクを持てるような形で、デジタル化してみたら面白いかもしれない。そういう考えが浮かんだのです。

この考え方をもとにモックをつくって、ヒアリングの際にぶつけてみると反応は悪くありませんでした。タスク管理/プロジェクト管理ツールでは「全体感」が見えなくなるという課題はほとんどの人が抱えていて、全体と個別の行き来が容易にできるだけでも価値がありそうだ、というフィードバックももらいました。

このアイデアのプレトタイピングをしながら磨きをかけ、ようやくプロダクト開発に移行しました。

(3)SPF(Solution Product Fit):解決策はプロダクトとして実装できるか

タスク管理/プロジェクト管理ツール内のひとつひとつのタスクは期限や完了有無など、かなり厳密な管理が求められます。一方で業務プロセスを可視化していく中で使用するドローイングツールのようなものは、並べながら書き足したり、消したりして作っていくものです。

全く別のものであると認識され、システム的にも交わるところがないと思われていますが、これを「業務プロセスを整理し、進捗管理を行う」という方向性で統合すればいいのではないか、というのがBYARDというプロダクトの出発点です。

せっかくデジタル上で管理をするのですから、紙を前提に生み出されたアローダイアグラムやガントチャートを、デジタルでしかできないやり方で統合すれば、もっと使いやすいものができるはずだというアプローチです。また、設計と進捗管理を一元的にコントロールすることができれば、PDCAサイクルが自然と周り、業務がどんどん改善されていくだろう、というイメージも持っていました。

フローチャート、ガントチャート、タスク管理/プロジェクト管理、それぞれに善し悪しはあるのは当然なので、デジタル上で「業務プロセスの管理」に必要なものを高次元で統合することで、「ありそうでなかった」新しい切り口のプロダクトが作れる、という感触をCTO・辰本さんとディスカッションを繰り返す中で得ていきました。

BYARDのコンセプトや作りたいもののイメージはDay1から驚くほどに変わっていません。UI部分ではAsana、Trello、Miroなどを参考にさせていただきながら、データ構造としてはまったく新しいものを作っているため、本当に使いやすくていいものにするために時間はかかっていますが、少しずつ前進しています。

このプロダクトが本当に「属人化」という課題を解決するソリューションになるのか、についてはもう少しプロダクト側の進化も必要ですし、お客様の方で活用して成果につながるにはまだ時間がかかりそうです。

導入事例インタビューなどでは、まだ荒削りのプロダクトであるにもかかわらず、コンセプトや使いどころを含めてしっかりと理解していただき、業務プロセスの可視化や改善に繋がっているケースも少しずつ出てきています。

PMFにはまだ至っていないという感触ですが、プロダクトとしては一歩ずつ前進している実感があるので、2023年でBYARDを飛躍させるための土台を今はしっかりと作っているところです。

2.2023年前半はUX向上に注力

BYARDは機能としてはTrello×Miroのようなものですが、それぞれの良いところを高次元で統合することで、「業務プロセスを設計し、進捗管理し、改善し続ける」ということが可能になると私たちは信じています。それぞれがバラバラに存在することでは得られない解決策になるということです。

全体最適や俯瞰して業務プロセス全体をコントロールするためには、とにかくUXが良くなければなりません。β版のときはここが全くダメで、せっかく試していただいた方々の期待にお応えすることができませんでした。

こちらのロードマップの通り、実装したい機能はたくさんあるのですが、まだまだ小さなチームなので、1つずつ1つずつ開発を進めております。


BYARDのアーキテクチャ構成図

アーキテクチャとしても結構面白い感じになっていると思います。エンジニアを含めて様々な職種で積極採用中ですので、何卒よろしくお願いいたします。

また、カジュアル面談もいつでも対応可能ですので、お気軽にご連絡ください。


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