freee導入3つの壁_マジカチ東京_8_20191217

freee導入3つの壁

freeeさんが上場された記念すべき日に開催されたマジカチmeetup#8で登壇してきました。freeeの機能についてはもはや僕が話さなくてもいいと思っているので、今回はfreee導入の難易度が高いと感じられる理由について「3つの壁」という形に整理してお話しをしました。

切り口だったり、スライドの見た目は毎回結構変えていますが、freeeについて考えていることは1年以上前の「MFクラウドとfreee」のスライドで言いたかったこととほとんど変わっていません。

freeeほど賛否両論が分かれる会計ソフトは他にはないと思うのですが、それはやはり簿記検定などが前提とする「従来の経理」というフィルターを通してしか考えられない人と、freeeがやろうとしていることを理解できる人が真っ二つに分かれるからです。いいか悪いかではなく、もはや好みの世界ではあるので、そこについてとやかく言うつもりはないですが、僕は常に「業務全体」を視野に入れてバックオフィスというものを考えてきたので、その考え方が具現化できるのは現時点ではfreeeしかない、という話をしているつもりです。

「これまで積み上げてきたもの」を全否定するほどの経験も知識もないですが、不完全な状態だとしても新しい世界を見せてくれるツールを僕は全力で応援したいし、freeeやSmartHRからはそういう思想を感じたので、初期の頃からずっと応援してきました。

今回はfreee導入3つの壁ということで以下をあげました。
①会計リテラシーの壁
②ITリテラシーの壁
③業務構築力の壁

コンサルのセオリーとして、「とりあえず枠を3つ作って埋める」というスタイルで組み立てているので、3つ並べていますが、このスライドで最も伝えたいのはやはり「①会計リテラシーの壁」です。

初期の頃のfreeeは仕訳プレビュー機能もなかったですし、会計ソフトとして不完全な部分も多く、僕も一度「これはちょっと厳しい」と思って、しばらく触らなかったこともありました。しかし、現在はまだまだマニアックな会計や税務の機能については不足しているものはあるものの、普通の企業が普通の使い方をする分にはまったく問題ないレベルになってきています。

入力=仕訳、というセオリーに「取引」という概念で殴り込みを掛けたfreeeの挑戦は、数年の時を経て一定の支持を得るまでになりました。その結果の1つとして本日の上場というものがあるはずです。

そのfreeeに対して「あれは現金主義だ」とか、「複式簿記を無視したとんでもないソフト」という発言は、単に自分が理解することを放棄した無責任な遠吠えでしかありません。従来の会計ソフトのやり方を概念から、業務フローから全てアップデートしようとする取り組みになので、ある程度のアンチ層が生まれるのは仕方が無いかもしれません。しかし、現状維持は衰退の始まりという原理原則に従って、T◯Cのようにそれらを否定することしかできない勢力は、進化することができなかった種として、いずれ滅びるのみです。

freeeの「取引」概念はERPとしてエンタープライズ側ではある程度確立されたもので、決してfreeeが発明したものではないですが、それを日本の中小企業や税理士業界に持ち込んだfreeeには先見の明があったと言えるでしょう。

SaaS元年にはじまり、APIがあることが当たり前になってきた昨今の日本のソフトウェア業界の変化が、ようやくfreeeがやりたかったことに追いついてきた、という感じがします。

ここで掲げている「会計リテラシーの壁」という言葉は、簿記1級を合格したとか、税理士/会計士であるとか、そういうことを言っているのではありません。しょせんはただの処理法則であったはずの、仕訳や会計処理に囚われ過ぎて、ビジネスを理解することや業務フローを掌握することをおろそかにしてきた会計関係者の人々に対して警鐘を鳴らしたい、という意味を込めています。

僕自身も会計人の端くれとして、この会計という武器を使ってもっともっと企業が成長できるように支援をしたいと思うからこそ、紙とペンの時代から変わっていない簿記の原則に囚われてしまう人は、本質的な意味での会計リテラシーが低いと感じているのです。

学問としての会計や税務を極める場合を除き、概念やべき論を掘り下げても、そこは企業の現場で起こっていることとは乖離がますます広がっていくばかりです。多くの会計人が向き合うべきは、勘定科目や税目について議論することではなく、企業活動の中でどのように実態を把握し、共通の指標としての会計という世界で表現するか、そしてそれをどうやって経営に適切にフィードバックしていくか、ということなのではないでしょうか。

簿記、という先人達の知恵の結集した素晴らしい仕組みを否定するつもりは毛頭ありません。ただ、紙とペンの時代のやり方をそのままデジタル化するのではなく、クラウドやAPIが前提となった今の時代に合わせた業務全体の効率化、業務フローの再構築というものがニーズとして求められている、と感じたので、僕は税理士業務ではなく業務設計士という仕事をはじめました。

freeeはもちろん、世界No.1のSaaSであるSFDC(salesforce)さえも、当然に完璧なソフトウェアではないし、どんな機能を作ったとしてもそれを使う人間が、本質を理解し、適切に道具として使うことができるかが全てです。SFDCはAdminという職種を作り出しましたが、freeeもまさにそれに相当する職種を作り出さなければ次のフェーズにいけない段階に差し掛かっているのかもしれません。

どのようなスキルがあればそれが出来るのか、という問いに対する1つの解が「会計×IT×設計力」です。ただ、すべてを兼ね備えている人材を募集したところで、採用できる確率はほとんど奇跡に近い、という実感があるので、その穴を埋めるために弊社が作っているのがBrownies Worksというサービスです。

Brownies Works自体もまだ未完成で、サービスを提供する中でブラッシュアップしなければならないところは無数にありますが、多くの企業の間でバックオフィスの横連携がないままにみんながバラバラに車輪の再発明をしている、という状況をなんとか打破したいと思っています。そのためにBrownies Worksはノウハウを蓄積し、ベストプラクティスをパッケージ化し、それをサービスとして提供していくことを目指しています。

SaaSをフル活用したバックオフィスの未来の可能性を見てみたい、という方はぜひ2020年1月17日(金)17:00〜から開催される弊社主催の「Brownies FES. #1」にお越しください。SaaSを活用すればこんなに仕事の仕方が変わる、業務が効率化できるというお話しをBizer  teamさんfondeskさんAnyflowさんをお招きして、日本のバックオフィスを一歩も二歩も前進させるためのイベントにしたいと思っています。お申し込みはこちらから。もちろん、無料で懇親会もあります。

最後はBrownies WorksとBrownies FES.#1の宣伝になってしまいましたが、freeeさん、本当に上場おめでとうございます!

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