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傲慢:誰でも運用できる業務フローを作る

プログラマ三大美徳を次世代バックオフィス人材に当てはめてみる企画。最終回は『傲慢(ごうまん、Hubris)』について。

傲慢(ごうまん)
おごり高ぶって、人を見下すこと。

スティーブ・ジョブズみたいなイメージの人でしょうか(笑)
色んなところで語られるジョブズ像って、罵声を浴びせて、目の前で作品を破り捨てたりとか、まさに傲慢な態度をとっています。(実際にそうだっかは知りません)

プログラマ三大美徳における「傲慢」は、自分が書いたプログラムが完璧でであるという自意識過剰な状態、転じて、誰に見られても恥ずかしくない完璧なアウトプットを常に意識している状態を指します。

「動けばいい」というプログラムではなく、簡潔で誰が見ても分かりやすく、メンテナンスがしやすいプログラム書くのが傲慢なプログラマである、ということのようです。

さすがにこの説明はちょっとこじつけ感が強いですが(笑)、意味するところは分かっていただけたかと思います。

さて、これをバックオフィスに置き換えてみるとどうでしょうか?

これまでのアナログ処理が無数にあったバックオフィスには、多くの職人タイプの仕事人の方がいらっしゃいます。その道◯十年の大ベテラン、あの人に聞けば何でも知っている生き字引、という方ですね。

知識や経験豊富なのは素晴らしいことだと思うのですが、問題はこの手の人たちは全くといっていいほどアウトプットしてくれないことです。自分の存在価値を出すためなのか、アウトプットするのが苦手なのか、興味がないのか、まぁ色々と理由はあると思いますが、「あの人に聞かないと分からない」状態を放置することはリスクも高いし、業務の効率化もDXもこれがある限りは絶対に進みません。

会計ソフトや給与計算ソフトなど、専門領域のソフトウェアはそれなりの歴史はありますが、全体の業務フローなどまったく意識しておらず、それぞれの処理を単にデジタル化したものがほとんど。機能もどんどん玄人向けにアップデートされ、使いこなすにはかなり経験値が必要でした。この状態を大きく変えたのがクラウド会計をはじめとするSaaSの業務ソフトウェアです。

次世代バックオフィスにおいては「自分だけが知っている」ことはです。業務を標準化し、自動化や連携も活用しながら、業務全体の流れやそのような処理方法にした意図などをきちんとドキュメンテーションできる人材が評価されます。属人化させるのではなく、自分以外の人でも対応が出来ること(代替性)を常に意識して仕組みを作っていかなければなりません。

アナログ処理が処理が大量にあったバックオフィスは自然と分業化が進み、1人が処理できる業務量や範囲にも限りがあったため、組織規模が大きくなるほど業務は細分化されていました。SaaSとAPI連携によって、複数のソフトウェアが有機的に連携できるようになると、これまでバラバラで良かった各処理が再び統合されて1つの流れをきちんと理解しないと業務ができないようになっていきます。

「これは私の仕事」という古い価値観で自分の仕事をブラックボックス化させるような人材が生き残る余地はありません。経理、労務、法務、そしてビジネスの理解などを高い次元で統合した人材のみが次世代バックオフィスでは重宝されるでしょう。

次世代バックオフィスの大事なキーワードは「属人性の排除」です。システムが進化することによってそれが可能になりました。ただ、よく誤解されるのですが属人性を排除することと、知識が不要になることはイコールではありません。処理が連続でどんどん繋がっていき、全体を幅広く見渡すことが必要になるため、様々な知識やスキルを高度な次元で統合できる必要がでてきます。この世界では狭い世界に閉じた資格はあまり役に立たないでしょう。

属人性の排除とは、人間がやることがない作業をシステムなどがスムーズに処理できるように再構築した上で、無駄のない最適な業務フローを作り上げることです。もちろん、完璧などありません。だからこそ、再現性・代替性・改善性を担保した業務フローの構築やドキュメンテーションを強く意識し、PDCAを回し続けられるような状態にする必要があります。

傲慢な次世代バックオフィス人材は、ある日突然業務を引き継ぐことになったとしても、自信をもって後任にその業務を託すことができるでしょう。自分のために仕事を囲い込む、ブラックボックス化させるのは全く逆の思考回路が必要です。そういう人材が増えればバックオフィスも大きく変わるのではないかと期待しています。


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