(さっそく振り返り)ジャクソンホールパウエルFRB議長講演
日中にnoteで予想したパウエル議長講演が終わりました。さっそく答え合わせです。すみません。ちょっと専門的です。
「サプライズなし」は市場の大勢でもあったので、別に誇ることでもないが、講演のトーンや細部も含め、ほぼ正確に予想できていたと思う。
テーパリングの条件(インフレと雇用のsubstantial progress)は、インフレについては既に満たされ、雇用についてもclear progressがあったとして、年内開始を明言。
デルタ株による下振れリスクは「注意深く見守る」程度の言及で、予想以上に「軽い」扱いだった。
足許のインフレを牽引する耐久消費財はコロナ前は押し下げ要因に働いていたことなどを指摘、「4%近い足許のインフレは一時的」と判断する根拠を具体的に示したが、他方、「一時的要因によるインフレは必ず低下する(fade)と考えるべきではない」とインフレ期待の上方シフトによってコア・インフレが高止まりした過去の歴史にわざわざ言及、「インフレが一時的でないリスク」を視野に入れていることを明言。hawkishな発言といえるだろう。
利上げについては、予想どおり「テーパリングとは別の基準で判断される別問題」と発言。
これは別に新しい発言ではないが、市場は「テーパリングは年内開始だが、利上げは急がず」と(勝手に)解釈して、金利は低下、株高。
「展望」に書いたように、(それによってFRBのスタンスが変化するわけではないので)市場の解釈に目くじらを立てる必要はないのだが、講演全体のトーンからして正しい解釈かは疑問。
雇用は着実に回復、インフレはある意味利上げ条件を満たしているとさえいえる(勿論、今後2%を下回る水準まで落ち着けば満たせなくなるのだが、一方で高止まりの可能性もある)のであるから、「まだ時間をかけて評価する必要」なのは当然とはいえ、市場の解釈のように「急がず」という積極的にdovishなトーンを打ち出しているようにはみえない。
「展望」に書いたように、テールリスクではあるが、年末から来春にかけて雇用が順調に回復し、インフレが高止まりすれば、テーパリングの終了を待たず利上げも考えられる。何せ「別の基準」で判断しているのだから。
いずれにせよ、現時点では思考実験の領域であるので、これ以上深入りはしないが、わざわざ過去のインフレ高止まりの歴史に言及した意味を考えれば、リスクシナリオとしてFRB幹部の頭の片隅にはあるだろう。
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