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ジャズ・シンガーとの偶然の出逢いが幸運を運んできた”Whisper Not”

セレンディピティ(Serendipity)とは

「偶然の産物」「幸運な偶然を手に入れる力」を意味する言葉

1754年イギリスの政治家・小説家ホレス・ウォルポールがペルシャのおとぎ話「セレンディップの三人の王子たち」を読んで生み出した造語とされています


或るBarでの出逢い


カウンターで友人の写真家と二人で談笑していた時 

気品と優雅さを感じさせる素敵な女性が我々の隣に座り 

彼女はマスター(女性)に話かかけた

「今からKちゃんの店に行くの その前にちょっと一杯と思って(微笑)」


私は思わず彼女に

「え?我々もこの後Kちゃんの店に行くんですよ 偶然ですね よろしければご一緒しませんか?」

彼女はウィットに富んだ切り返しで

「あら こんな素敵な殿方が私をエスコートして頂けるの?」
「もちろんですよ エレガントなレディとご一緒させて頂ける機会を逃すなんて我々には考えられないことです 是非エスコートさせてください」


不思議なくらいに自然な感じで 三人での会話が進み 

また驚くことが、、、

彼女はジャズ・シンガーだったんです

「え~~?実は私 ジャズを題材にしたコラムを書いているライターの端くれなんです ジャズ・シンガーに出会うなんて こりゃまたビックリです
今朝TVで見た星占いが『今日今後のビジネスに大切な人との運命的な出会いがある』だったんですよ(笑)」
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或る夜のLiveで


多くの素敵な大人の女性ファンに囲まれたSo JunjaさんのLive

時には「囁く」ように 時には「艶やか」に 時には「しなやかに」

彼女の歌声が会場全体を包み込み

Not a whisper of despair But love's own prayer
絶望のささやきではなく 愛の祈りを


知らない言語で歌われる曲であっても その歌詞の意味が分からなくても

「楽しいこと」「悲しいいこと」「賑やかこと」「寂しいこと」「嬉しいこと」「辛いこと」

が彼女の歌を通じて確実に伝わってくる

音楽は 国境を越えて どんな民族とも どんな世代とも 分かり合える 世界共通言語 

そんな素敵な夜でした


笑えたのは 

彼女がステージ用に用意したが履き忘れたと思われる赤いピンヒールが寂しげにステージ脇にポツンと取り残された

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Liveの翌日


5年ほど前 大阪駅ビル内の某アパレル・ショップの奥に置いてあったレコード・プレーヤーから流れる音楽で知り合いになった若者が 
北九州に移り住み 店をオープンしたことをInstagramで知った

「よぉ!元気か?」
「え~~ビックリです 来てくれて超嬉しいっす」
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「いい空間だね 様々なイベントできるね」
「ありがとうございます GAVIさん何かイベントやりましょうよ」
「そうそう 昨晩女性ジャズ・シンガーのLiveに行ってきたんだ」
「ジャズいいすね 我々ヒップホップなのでジャズ詳しく知らないので教えて欲しいです」


そんな雑談から

「背景を知りながら音楽を楽しむ」

という話題になり

他のお客さんも一緒になって座談会のようになっていった


自分の興味を広げたいと考える若者は
「何から手をつけていいのか?何から勉強していいのか?」
わからないので悩み

年配者は若者感覚を「よくわからない」と言って受入れない現実


そんな世代間の溝を埋めることが出来る唯一の共通言語が音楽では?


音楽史や当時の社会背景を知って自分なりの仮説を立てながら音楽を楽しむ

イベントは面白いのではないだろうか?



 曲が生まれた当時の歴史や出来事を知りながら楽しむ音楽

 レコード・ジャケットのアートワークを観て楽しむ音楽

 その曲を歌う時のジャズ・シンガーの想いを聞いて楽しむ音楽


音楽は人生の変化に応じた自分の感覚に気づきを与えてくれるはずだ



Whisper Not

1956年 テナー奏者のベニー・ゴルソン(Benny Golson)が ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)楽団に在籍中に作曲したもので 曲が閃いてから20分後にはもう楽譜が出来上がっていたという逸話が残っている名曲です

タイトルを『Don't Whisper』という命令形にせずに
『 Whisper Not』としていて「囁かないで」「口にしないで」
と優しく語りかけるニュアンスが伝わってきます


50年代後半以降はいくつかのインストゥルメンタルの録音が行われています


ウエリントン・ケリー(Wynton Kelly)


ウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)


オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)


その後 ジャズピアニスト・作曲家・ジャズ評論家でもあった レナード・フェザー(Leonard Feather) が詩をつけてから 多くのシンガーに取り上げられるようになりました


アニカ・オディ(Anita O'Day)


エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)


『若者世代』と『年長者世代』の架け橋となるもの

それは ジャズ なのかもしれない

そして ヒップホップ なのかもしれない


ジャズ・シンガー との出逢いは 

セレンディピティ(Serendipity)


だけど そのことは 

Whisper Not?





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