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ジャズで学ぶVUCA時代の組織論

まえがき


グローバル化に進展によって 新たな市場の開拓や新規事業創造といった目的に向けて 異文化・異業種の人々との『協働』は ビジネスパーソンにとって”当たり前”の状況になっています

この『協働』において 教科書的な回答として『コミュニケーションが重要』となるのでしょうが 

「で?何からやればいいの?」と疑問を抱く人も多いはずです


ジャズは 『個人の音楽であると同時に集団の音楽』 です

譜面に書かれている通りに演奏されるのでなく 個人の創造性『インプロヴィゼーション』を基本としていますが 『協演』の重要性を認識した上での 集団としての創造性もなければ ジャズ という音楽は成立しません


カウント・ベイシー曰く

「バンドで大切なことがなにかわかるかね?実は音楽なんかじゃないんだよ。一番大切なのは、人間というものを学ぶことなんだ。」


『VUCA時代は ”ジャズ型組織” が生き残る形態のひとつ』

と考えていますが、、、いかが?


インタープレイ(interplay)


ジャズの演奏の殆どはインタープレイ (Interplay)で出来ていると言えます

特に プレイヤーの”絡み”が目立つ演奏に

「凄いインタープレィだ」 って感じになります

interplay = 相互作用、交錯

ジャズの世界では この『インタープレイ』は極めて重要な概念(?)ですが 言語化するのが難しいものです


私は ただのジャズ愛聴者のひとりですので 気の利いた上手な説明は出来ませんが 自分なりには 次のように整理しています

あるプレーヤーのインプロヴィゼーション(即興演奏)によって 他プレーヤーが触発されて 同じようにインプロヴィゼーションを返すことで 個人間で競合・共鳴・調和を繰り返しながら お互いのパフォーマンスを高め合うことで 組織としての最高のパフォーマンスに結び付ける感性


次の2曲を聴いてもらうと理解しやすいと思います


『Interplay for 2 Trumpets and 2 Tenors』(1957.3.22)

John Coltrane & Bobby Jaspar – tenor saxophone
Idrees Sulieman & Webster Young – trumpet
Mal Waldron – piano Kenny Burrell – guitar
Paul Chambers – bass Art Taylor – drums

インタープレイは 双方向性のもので 仕掛けた人が又仕掛けられてしまうというものです

予め打ち合わせして 準備し上で行われる絡み合いではありません


Bill Evans 『Interplay』(1962.7.16&17)

Bill Evans (piano) Freddie Hubbard(trumpet) Jim Hall(guitar)
Percy Heath(bass) Philly Joe Jones(drums)


オーケストラ型組織


1人の指揮者が統率するオーケストラ型組織は ルールに従って計画的に マニュアルをベースにして動く 大きな組織に多いと思います

指揮者=プレイヤーではない=中間管理職 といったところでしょうか?

オーケストラ型組織では 指揮者とプレーヤーとの『ツーウェイ・コミュニケーション』でしょうから プレイヤー同士の『インタープレイ』という概念が必要ないのかもしれません

大企業は このオーケストラ型組織なのでは?


注)オーケストラの音楽を全く知らないので 私の想像です


ジャズのビッグ・バンド型組織


ジャズのビッグ・バンドも大人数組織ですが 指揮者ではなく プレイング・マネージャーという形態です


ベニー・グッドマン(クラリネット) 


デューク・エリントン(ピアノ) 


カウント・ベイシー(ピアノ)


アフターアワー・セッション


スゥイング時代のビッグバンドは ダンス・ミュージックとして譜面通りの演奏を求められたそうです

”即興演奏”のジャズ・ミュージシャンにとっては 楽譜通りの演奏では ストレスが溜まるでしょう


カウント・ベイシーは 仕事を終えた後に ジャム・セッションを行う

『アフターアワー・セッション』

を開催するようにしたのでしょう



この 『アフターアワー・セッション』 は 

上司が 「ちょっと一杯行こうか?」 という ”飲みニケーション” ではありません


カウント・ベイシーが クラブオーナーに頼んで解放してもらった場所での

『クリエイティブ・コミュニケーション』

だったのでは?



ダイバーシティ・インクルージョン・ビロンギング


ジャズは ダイバーシティ によって創造された音楽です


ダイバーシティ(多様性)

黒人 クレオール 白人 そして あらゆる国の人 

異文化が交じり合って 進化していった 音楽です


インクルージョン(包摂性)

ブルーノートの フレデリック・ライオン

ヴァーヴの ノーマン・グランツ

彼らは 人種差別・偏見が激しい時代においても 黒人ミュージシャンと親しい関係を築いています


ビロンギング(帰属性)

プレスティッジの ボブ・ワインストックのミュージシャンとの専属契約というものは 縛り付けている”拘束”のようなもので ちょっと違います

人種差別の時代に ベニー・グッドマンが 自分のバンドに 黒人ミュージシャンを採用して一緒に演奏するというのは ビロンギング でしょう



野球型組織とサッカー型組織


野球型コンボ


チャーリー・パーカーは その卓越したテクニックで

『エースで4番バッター』

最強のバッテリーとしてキャッチャーが ディジー・ガレスピー



アート・ブレーキ―

『キャッチャーで4番バッターで監督』の 野村克也さん的だったのでは?

ベニー・ゴルゾンと出会って  リー・モーガン ボビー・ティモンズ ジミー・メリット という 新ジャズ・メッセンジャーズを立て直した



サッカー型コンボ


マイルス・ディヴィスは 

ペレ であり マラドーナ であり ジーコ ?

マイケル・ジョーダン でもあったのでしょう



オープン・イノベーション


『両利き経営』の重要性が言われていますが

『知の深化部門』と『知の探索部門』

に分けることが 既存メンバーで可能でしょうか?


『知の探索部門』や『新規事業部門』は 短期間で成果をあげることは簡単ではありません

収益に拘る経営者なら 収益が見込めない『知の探索部門』には 徐々に予算を回さなくなるかもしれません


そこは オープン・イノベーション なんでしょう




ジャズ型組織の良さ


オーケストラ型組織における ダイバーシティ は

『タスク型ダイバーシティ』でしょう

タスク(それぞれの楽器)があって そこにプレイヤーを当てはめていくものでしょうから イノベーション は期待薄でしょう


”なんちゃってダイバーシティ”企業が多いのは? 

インクルージョンやビロンギングといった考え方にまで至っていないからでしょう



その点 ジャズ型組織は そもそもが ダイバーシティ なので

イノベーション が期待できます


「でも 個性が強いメンバーばかりを どうやって まとめるの?」


そこに インタープレイ という概念が理解できるメンバーで

全員の共通方針 スゥイング が徹底されています


本質は一致 行動においては自由 全てにおいて信頼


ジャズ型組織は イノベーション が生まれやすく

オープン・イノベーションというスタイルが”当たり前”なんです



VUCA時代の組織形態


『知の深化部門』は オーケストラ型組織

『知の探索部門』は ジャズ型組織


メンバーシップ型雇用企業が いきなり ジョブ型雇用企業への移行は難しいでしょうから

オーケストラ型組織 と ジョブ型組織 の併用

オープン・イノベーションによる他社との『協働』での『共創』


スタートアップ企業は ビル・エバンス & ジム・ホール スタイル



ジャム・セッションの必要性


オンライン時代だからこそ ライブ の必要性を感じます

ビジネス・ジャム・セッション(ビジネス・アフターアワー・セッション)

という場は 必要と思います


この ビジネス・ジャム・セッション は 同じ社内メンバーによる「飲みニケーション」や 異業種交流会と称した「飲み会」や「出会い系」ではありません


ビジネス対談 パネルディスカッション ビジネス・モデル発表会 など

といった オープンで真面目で面白い セッション です


ミントンズ・プレイハウス のような 場所も必要です

そして ノーマン・グランツ のような エンジェルの出現も必要です



この ビジネス・ジャム・セッションは ドレスコードがあります

「素敵な”装い”」 でなければ 入場できないんです



終わりに


「下手の横好き」でしかない ジャズ愛聴者 の私ですが

趣味の世界から ビジネスを考えていく方が 難しい経営理論書を読んだり勉強会に参加するよりも 

「なぜ?これが生まれたのか?」

「どんな背景があるのか?」

「今のビジネスに照らし合わせると、、、」

といった『芋ずる式学習』が出来ると 真面目に考えています


音楽 ファッション 


まだまだ 勉強しなければいけません



なぜジャズのレコードには録音年月日が必ず記されているのか?


ジャズはライヴで 同じ曲を演奏しますが レコードの再現では評価されません。

それは ジャズが”即興演奏”だからです(演奏のたびに違う演奏)

それ故に『録音年月日』は重要な情報です


1959年3月2日、4月22日録音:スタジオ・アルバム


ジャズ界には『セルフ・カバー』って言葉は存在しないでしょう


演奏メンバーは違うのですが 同じ曲 ♬So What♬ であっても 速さもテイストも全く違います


1964年2月12日録音:ライブ・アルバム


「ジャズに名演はあるが名曲はない」

ジャズ・ファンにはよく知られた格言があります


ジャズは 常に進化していっている イノベーティブは 音楽なんです



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