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“レジリエンス”を鍛え上げる必要がある時代

1.背 景

TVニュース映像で“シルバーウィーク”での観光地各地の人出や高速道路の渋滞状況を観ると、Beforeコロナ時代の日常に戻りつつあるように感じる。

日本では比較的大勢の人が“マスクの着用” “手洗い励行”“ソーシャルディスタンス”を感染予防ルールとして素直に従っているように思える。

一方、このルールに抵抗を示して“マスク”を着用しない人、自分の『正義』を振りかざし、マスクをしない人をとがめる『マスク警察』になる人とも共存していかなければならない。

毎日新聞の社説に

「一人一人が感染を広げない自覚を持つべきだという考えは大事だ。だが、個人が孤立を深める中、その意識が過剰になれば、他者を責める声が大きくなる」

と書いてあり、正にその通りと思う。

インターネット上のコミュニケーションには【匿名性】という特徴がある。

現代社会では”大人しく“”内気“な人も、いざネットとなると日常では抑制していた本音のフル全開で、驚くような大胆&攻撃的な発言をしてしまう。

発信する人にとっては軽い気持ちなのかもしれないが、誹謗中傷された側は、心を深く傷付けられ、次第に“孤立”に繋がり、心を閉ざしてしまうことも増えているようだ。

コロナ禍の今、危機管理を論じる際にもよく使用する【レジリエンス】に注目して欲しい。

2.レジリエンスとは?


【レジリエンス】とは?

『困難で脅威を与える状況にもかかわらず,うまく適応する過程や能力,および適応の結果のこと』

を意味する心理学の言葉。(出典:最新心理学辞典)

日本語に訳すなら、“復元力”、“回復力” “精神的回復力”、“困難に負けない力” といったところだろう。

不確実性の強い「VUCA」時代においては、今までは常識として考えられていたことが、ある日突然、非常識となるのは往々にしてある。


ストレスは常に存在するもので、回避していこうという考え方は現実的でない。

ストレスにどう立ち向かっていって、どうやって処理していくかという思考やマインドも持つことが重要だ。


ネガティブな感情は、芋づる式に古い記憶や関連する思考を呼び戻しがちだ。

そんなネガティブな連鎖は、すぐに断ち切るべき。

憂鬱な気持ち、収まらないイライラに飲み込まれるのではなく、自らの意志で自分をコントロールしなければ、次のステップに進むことはできない。


“【レジリエンス】を鍛え上げる”方法は次の3点だ。


① 現実をしっかり受け止める力

厳しい現実に向き合わずに逃げるのではなく、自分が置かれている現状を真正面から受け止めることから始まる。

冷静に現状を見つめるようにする。

楽観主義が無用とは言わないが、冷静な現実感覚の方が効果的だ。


② 困難な状況でも『前向きな意味』を見出す

自分を犠牲者と考えて、「何でこんなことが自分に降りかかってきたのか?」と嘆き、諦めてしまうようではダメ。

自分自身や他者にとっての“意味”を見つけ、困難な状況の構造を捉えるようにする。

「この状況はどうにもならない」という感覚は必要ない。


③ 個人的な即興力

本来の使用方法にとらわれることなく、手近にあるものを最大限に活用にて創意工夫する。

前例踏襲主義・官僚主義・政治主義といった形式に拘る考え方は全く不要。

【PDCA】 ⇒ 【OODA】の思考法にシフトする。

過去の“成功事例”は“役に立たない”くらいの気持ちでの“アドリブ力”強化は急務だ。

Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語が意味するように、予測困難で複雑性が増した今だからこそ、“【レジリエンス】を鍛え上げる” 必要がある。

3.重要な側面

オーストリアの精神科医でアウシュビッツの生存者である“ビクトール・E・フランクル”は、過酷な強制収容所で、

『戦後、強制収容所で過ごしたときの心理状態について講義している自分の様子』

を想像して耐え抜いた。

彼は著書のなかで、

「どうしょうもない状況にあっても、変えようもない運命に直面しても、人生に“意味を見出せること”を忘れるべきでない」


と語っている。


置かれた環境に“その意味”を見出すことが、【レジリエンス】の重要な側面である。

『人生には何らかの意味がある』という強い価値観によって支えられた確固たる信念を持ち続けておけば、困難な状況も乗り越えられるはずだ。


4.懸念点

「先も長くないし、生きていく目的もない。」と言う高齢者は多い。

コロナ禍によって高齢者が引き籠ってしまったことで、外出しなくなり、他者と接する機会が減って、足腰も弱り、精神的に滅入っていくという悪循環に陥っている。

これは“老人性鬱”に繋がり、最悪の場合、自殺に走る可能性が高く、急を要する病気ではないと軽く考えていると、取り返しのつかないことになってしまう。
生きる力が喪失しやすくなっているが理由だろう。

公益社団法人 日本看護科学学会の“老年期うつ病者のレジリエンス”というレポートによると

「人生で獲得してきた能力や日常性がよみがえることで生まれる力」

「家族からの何気ない気遣いの中で家族との絆を感じる力」

「慣れ親しんだ地域との一体感を再確認する力」

「罪悪感と折り合い自らの人生を肯定的に統合する力」

「孤独の価値を見出す力」

「いのちのつながりの中で次世代のいのちを慈しみ希望をたくす力」

の6つのテーマが導き出されている。

<引用元>


5.最後に

【レジリエンス】の高い人や企業は、困難な状況を悲嘆することなく、現実をしっかり受け止めて、前向きな意味を見出し、解決策を見つけている。

【レジリエンス】は先天性のものではない。
鍛え方次第では誰だって【レジリエンス】を身に付けられる。

“ポジティブ思考”も“ネガティブ思考”も生活の中で必要だが、大切なのは、双方の健全なバランスを見つけることだ。

“【現実的楽観性】を持つこと” が重要なポイントのようだ。


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