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同業者の匂い

#校正者 は今や縁の下の力持ちではなく、「時の人」のようです。少し前ですが、NHKの「仕事の流儀」で #フリーランス校正者 (校閲者)が取り上げられていました。#大西寿男 氏の仕事ぶりは大変興味深かったです。
 
そのような中で人に勧められて、別の校正者の本も読んでみました。『文にあたる』(#牟田都子 著/亜紀書房)
 
番組を観たときもそうでしたが、この本を読んで少し胸が苦しくなりました。書かれている内容はどれも面白いのですが、この息苦しさはどこから来るのでしょう。
 
もちろん文芸作品の校正は産業翻訳とは異なると思うのですが。その細かい作業の一つひとつは身に覚えのあることばかりです。しつこく裏を取ること、一文字一文字集中して読み込むこと、これらは翻訳にも通じることです。
翻訳よりも創作に近い現場での校正は楽しそうですが、それでもため息が出ました。失礼を承知で言えば、それが辛気臭い仕事だからです。
 
しかし、地味でも暗くても、文章を紡ぎ出すことが好きでしかたがない ― 抑えた筆運びながらも、牟田氏の熱い想いが行間からひしひしと伝わってきました。翻訳を天職と自負する私も、その気持ちは同じです。
 
残念ながら、世の中には、この「好き」を逆手に取った、翻訳者(志願者)の #やりがい搾取 も耳にします。大西氏にしろ、牟田氏にしろ、業界の酸いも甘いも知り抜いたプロ。だかからこそ、彼らの言葉が心に響きます。
 
というわけで、読後感は必ずしも爽やかではなくて、じわりと身にしみる感じ。これからも矜持を持って翻訳という文筆業に携わっていこう、との思いを新たにしました。

#翻訳 #校閲 #校正 #フリーランス #TranslationServiceArai
 

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