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こども食堂を連携するデジタルプラットフォーム構築 実装実績報告【サイボウズ株式会社】

近年急増しているこども食堂だが、運営には課題もある。持続可能な運営を助け、新規参入の力にもなる環境構築を目指して、2022年度下期、「サイボウズ株式会社」はプロジェクトを始動した。「愛媛こども食堂デジタルプラットフォーム構築プロジェクト」の初年度の実績を振り返る。
 
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(1)プロジェクト概要

こども食堂は自主的・自発的な運営であることが多く、それぞれが悩みながら単独で活動する状況に陥りやすい。こども食堂間の連携が弱く、課題や情報を共有し助け合える体制が整っていない。愛媛県のこども食堂をサポートする支援団体「えひめ地域こども食堂ネットワーク」でも、県内全域のネットワーク化を促進しているが、地域による状況の違いから思うように進んでいないのが現状である。
 
そこで同社は、こども食堂間をデジタルで繋ぐプラットフォームを構築し、単独運営だったこども食堂が同一基盤上で連携できる環境を整えた。こども食堂の効率的な運用を実現し、利用者や支援者などさまざまな立場の人々とも繋がる仕組み作りである。
提供サービスとしては、ノウハウ蓄積やコミュニケーションも可能にする情報共有グループウェアや、利用者・ボランティアの状況等各種データを「見える化」するデータベースなどがある。

(2)受付システムの稼働と導入効果

初年度の対応では、まず受付システムとそこから得られる利用者情報の収集に注力した。

機能概要

スマホを使い、来場者の二次元コードをスタッフが読み取る受付方式

二次元コードを用いたチェックイン方式の受付システムは、こども食堂の受付処理の効率化と、利用者情報の収集を目的とする。受付と同時に利用者情報を人的負荷なく取得し、集積したデータから利用履歴などを可視化することで、運営改善や子どもの見守りへの活用を図る。
 
受付システムは2023年2月、「特定非営利活動法人U.granma Japan」が宇和島市で運営する「ぐらんま子ども食堂」会場にて本稼働を開始した。
 
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導入効果

従来の手書きによる受付に比べて、作業効率は格段に向上した。所要時間で見ると下記の通り大幅な短縮である。
■導入前:名前や連絡先などの記入に1人約30秒。子どもだけだと数分を要することも。
■導入後:二次元コードを読み取るだけ。1人約5秒に短縮。
 
閉場後に行う集計作業についても、作業時間をほぼ「0」にすることができた。
■導入前:スタッフによる手作業で約3〜5時間をかけて入力・集計を実施。
■導入後:1クリックで集計完了。作業時間はほぼ無くなった。

従来は手作業だった受付と集計


システム導入により大幅に時間短縮

(3)「情報共有アプリ」の運用開始

こども食堂間の情報共有とコミュニケーションを実現する「情報共有アプリ」も、運用を開始した。

写真付きで調理方法を掲載する「レシピ共有」や、食材の利用を呼びかける「食材情報掲示板」、開催方法や補助金申請等の運営ノウハウを知ることができる「ノウハウ共有箱」など、各種の役立つメニューが用意されている。質問・相談ができるコミュニケーションツールとしても機能する。
今後運用が軌道に乗り活発化するに従い、さまざまな効果が生まれることが期待できる。

(4)目標登録数に対する実績

今期の評価項目(目標数)に関する結果は以下の通り。

■システム利用施設数
本システムを利用する施設(こども食堂事業者)数は、南予の全24施設のうち、目標数「10施設」に対し、「3施設」の実績であった。
目標未達ではあるが、複数の施設から個別の説明依頼や相談を受けており、関心の高さが伺える。全国のこども食堂の運営をサポートする「認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ」も本システムの必要性に共感し、全国的な取り組みでの活用を検討している。
 
■こども食堂利用者登録数
こども食堂利用者登録数は、南予のこども食堂利用者(食数から推算)1,580名のうち、目標「500名」に対し、「435名」の登録があった。
未達ながら目標に近い数を達成。新方式は思った以上に、子育て世代に抵抗なく受け入れられている。

(5)ニーズの整理と今後の方針検討

以上のような実績を踏まえ、改めてこども食堂の現場ニーズを整理し、今後の方針を検討した。
考察にあたっては、県内のこども食堂事業者に参加を募り開催した勉強会が非常に有益であった。そこで上がった現場目線の声は、方向性の再考において指針となった。

2023年2月に実施した勉強会の様子

事業者のニーズとのギャップ

こども食堂を運営する事業者は、共通的に「情報共有」「連携」の必要性を感じており、システムへの期待も大きい。しかしながら「IT化」に対して、心理的・スキル的にハードルの高さも感じている。
また受付システムについては、利便性や将来の活用性に理解を示しながらも、導入は不要とする事業者もある。また運用を通して得られる利用履歴など、利用者情報の組織間共有は望んでいない。
 

理解と参加を得るために

こうしたギャップを埋め、より多くの事業者に参加を促すために、次のような対策をまとめた。
システム導入を躊躇させる要因に対して、今後はまず、定期的な説明会や個別訪問を通じて不安の解消を図る。そして細やかな運用マニュアルの作成や慣れるまでの現地サポートなど、事業者が安心して参画できるサポート体制を整える。
また利用者情報管理の優先度を下げ、受付システムの利用は任意とする。

ニーズに応える今後の計画

今回、県内のこども食堂事業者から共通して見えてきたのは、何よりもまず、「情報共有」のニーズだ。これに応え、次年度は「情報共有」「連携」の充実を最優先とする。
 
情報共有・連携は、皆が同じシステム基盤上に集まることから始まる。そして皆がシステムを活用し、データを蓄積していく必要がある。
そこで、県内8割以上のこども食堂がシステムを利用することを目標とし、参画を促進していく。

また現場が共有を望むのは、利用者情報よりも、食材・物資、ノウハウ、レシピなどの情報であることがわかった。
「情報共有アプリ」に搭載済みの「食材情報掲示板」「レシピ共有」などの機能について、今後運用サポートを行いながら、さらに活発な利用促進と機能充実を進めていく。

(6)プロジェクトの展望

強固な基盤を確立し、情報共有の風土を定着させることができれば、その先にはまた新たな可能性が広がる。今後は下記の対策も計画している。
 
■フードロス対策
 大量に寄付された食材を適切に管理し分配できる仕組みを作る。
■防災を見据えた連携強化
 こども食堂の炊き出しノウハウが災害発生時に役立つと期待されている。いざという時にスムーズに機能するように、平時の情報共有を浸透させる。
■実装定着のための体制構築
 定着と拡大のために、県・全国を支援する中間支援団体へのシステム運用移管をできるだけ早いタイミングで実施する。

こども食堂は地域社会の交流拠点の役割も担う。直接触れ合う交流だけでなく、離れていても、デジタルのネットワークを介せば繋がることができる。このプロジェクトを通して、デジタルの力でもっと大きな強い交流の輪が育ち、こども食堂の価値がさらに高まることを願う。

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