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備品楽器・廃校・ボランティア ~学校と音楽から生まれた縁の連鎖


2010年。とある小さな小学校にトランペット指導に行っていました。
全校児童は、7人。
子供たちは秋の大舞台に向け練習を積み、そして結果は大成功!
しかしその数年後、学校は閉校に・・。
ところが、そこからドラマはまた続く事になるのです。


7人の小さなトランペッター達

とある小さな集落の小学校。
母校ではないのですが、とてもご縁のある、私にとって大切な学校です。

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今から10年前の2010年、ここへ半年間トランペットを教えに来ていました。

夢配達人プロジェクト」という公の企画があり、子供たちはこれに
"秋の地域のイベントで7人でトランペットを吹きたい"という「夢」を応募。
そう、学校の音楽室には金管バンドの備品としてトランペットがズラリ揃っていたのです。

その「夢」は見事採用され、私が“夢配達講師”として通うことに。
以降、目標に向かってみんなと半年間励む日々が続きます。

努力の甲斐あり、秋の大舞台では「校歌」「聖者の行進」「故郷」など、思い溢れる素晴らしい演奏を響かせてくれました。
また、書下ろした学校オリジナルファンファーレは、運動会や地域の祭りなどで何度も吹いてくれました。

そんな子供たちの活躍を、私はいつも誇らしく思ったものです。

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小さな学校の、その後

それから数年後。
児童数はますます減少していました。

とても小規模なので、気にはなっていましたが、やはりその時はやってきてしまいました。「閉校」です。

百年超の長い歴史に幕を閉じ、トランペットも、静かに音楽室に収められたようです。

時代の流れとはいえ、もう子供たちの元気な声もトランペットも響くことのない学校を想像すると、寂しさを感じたものでした。

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SNSで知った、思い出のトランペット達の今

それから更に数年。

ふとSNSで、自治体と民間団体〜PiNECoNeSの合同による廃校ノスタルジアというイベントが催される事を知りました。

『本来なら処分される”廃校の備品“を出品し、どなたかに受け継いでもらおう』というイベント、らしい。

へぇ〜面白そうだなぁ。顕微鏡とか欲しいよなぁ、。とか思いながら詳細を調べていたら、
教えに行っていたあの小学校のトランペットも出品されるとの記述を発見!

写真もあり、間違いなくそれはあの時のトランペット達でした。

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( Photo:PiNECoNeS様よりご提供)

みんなが頑張って練習したトランペット。それは気になりますとも。

顕微鏡も欲しいですが、とにかくこのトランペット達に会いたくなってきました。


廃校ノスタルジア〜再会・ご縁・続く未来

「トランペット達は、今どういう状態なのか。」
気になるのはそこです。

管楽器は、数年手付かずの状態では可動部が固まっている事が簡単に想像されます。

購入時点でちゃんと動く状態ならば、その後も大切に使ってもらえるはず。
思い入れのある楽器たちを整備しに行きたい・・・。

企画の方にどうにかしてアポを取り、事情を伝えて、そしてそれは見事叶う事に!

その後、打ち合わせを重ね、私もスタッフの一員的に混ぜていただけて。
受け入れてくださった皆さんの心意気に感謝です。


さぁ、廃校ノスタルジア当日!

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学校にトランペットは8本ありましたが、その全てが出品されました。
ケースを開けると、当時の楽譜がそのまま出てきて。胸に懐かしのサウンドが響きました。


トランペットコーナーは、オープンと同時に即売り切れという凄まじさ。皆さん猛ダッシュで真っすぐ迫ってこられ、ちょっと凄い絵でしたね(笑) 

そして固着してる部分をバラしながら、購入された方と色々お話もしながら、時間は少しかかりましたが8本全部を無事可動状態に出来ました。 
やりたかった事が出来て、ホッとしました。


更に、関係皆様方の計らいもあり、そこでなんと「当時の子供たちとの再会」も出来たのです。
みんな大きくなっていて。そして、わざわざ来てくれたのがまた嬉しくて。温かい気持ちになれました。

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また、この廃校ノスタルジアの様子は地元の各テレビ局でも放送されました。トランペットの件もクローズアップいただけ、感謝です。 


PiNECoNeSの方々ともこれが縁で交流がうまれ、その後も情報交換などを重ねつつ、現在にまで至っています。
素敵なイベントを立ち上げ動かす実行力ワクワク力のある方々ですので、やはり刺激と笑顔をたくさんもらうのです。


そして、楽器を入手された方のうちの一名様が、今、私のトランペット教室のレッスンに通ってくれています。 
音楽でもそれ以外の趣味面でも仲良くさせてもらって、おかげでいつもお会いする事が楽しみ。もちろんこの時ご購入の楽器は今も健在。

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( Photo:生徒様よりご提供)


更に。当時の児童の中のひとり、K君は、自衛隊の音楽隊員に!お母様より教えていただきました。
音楽が好きで、その後もずっと続けていたそうです。
音楽人生、スタートはあの小学校のトランペットプロジェクト。そこから継続して、夢の門を見事にくぐったK君。
いつか会って、大人の音楽家同士として話せる日が来そうな気がしています。根拠は特に無いですが(笑)、そんな気がするのです。
がんばってほしいし、やってくれるでしょう!



半年間だった「夢プロジェクト」は、広がり繋がり、人と時間を介して形を変えながらこうして今も脈動を続けています。
縁が縁を呼び、そこから様々な事が動き、そして音楽を志した少年はいまその道に。全ては一点のことから繋がっています。
「縁」とは、こうも美しく温かくそして楽しみをもたらしてくれるのかと、10年の時を振り返りながらしみじみ思うのでした。

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あとがき

去年の夏。
久しぶりに学校の近くを通ったので、寄ってみました。

子供たちの声こそ無いですが、校舎もそのままに、掲示物から何から、時が止まったかのように変わらず全てがそこにありました。

「ここに半年間来ていた」

そのひとつのことが、様々なご縁を生んでくれ、そして今に繋がっていることを感じさせてくれた、久しぶりの登校でした。

校歌を口ずさみ、一礼。

私にとってはここは、今も素敵な学びを与え続けてくれる“学校”です。

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Jazz Trumpeter 河村貴之


サポートくださる皆様、そのお気持ちがとても励みになります。ありがとうございます^_^ 不定期ではありますが、日常の中での想いを”伝わる記事“にしてお届けできるよう、今後も心を込めて執筆を続けていこうと思っています。