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0.はじめに ~技術(テクニック)とは何か~

練習とは、何でしょう。

新しい楽譜を手に入れ、さあ練習するぞと楽器を構えたそのとき、その目標をどこに置いていますか?

テンポを正しく、リズムを正しく、音の高さを正しく。もしかするとこのような目標になっていませんか?

もちろんテンポや音の高さを正しく演奏することは音楽にとってとても重要な要素です。

しかしそれらが完璧なだけで果たして音楽と呼べるのでしょうか。

あなたが作曲家になったとイメージしてください。

ふとした瞬間、メロディが頭に浮かんできました。これを忘れないようにしなければ!そして多くの人に聞いてもらいたい!
さてどうしましょう。レコーディングをするのも選択肢のひとつですが、楽譜として残すのが記録としては確実ですね。

楽譜はテンポ、リズム、音の高低を明確に記せるとても効率的なものです。楽譜さえあれば、その作品の基本データは正確に記録されるので、だれでも演奏ができます。

そして楽譜には音符だけでなく、記号も記します。アクセントやスタッカートなどのアーティキュレーション、f(フォルテ)、p(ピアノ)といった強弱記号など。

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作曲家であるあなたはストーリー性のある作品を書いています。最初は元気一杯のシーンなので当然ここは「f(フォルテ)」。その後ストーリーが展開し壮大な悲劇的メロディを書きました。ここにも当然強弱記号を書きますが、楽譜のルール上「f」を選択せざるを得ません。

元気一杯だから「f」。
壮大な悲劇的シーンだから「f」。

同じ記号であってもそれぞれに込められたイメージはまったく異なりますが、楽譜のルールがあるのでそうせざるを得ません。

このことからもわかるように、楽譜とは作曲者のイメージや想いのすべてが単刀直入に記録さているわけではないのです。

したがって演奏者は、作曲家が書き上げた楽譜の表面的情報だけでなく、込められたイメージや想いを汲み取って演奏しなければ本当の意味で作品を演奏したことにはならないのです。
しかもそれだけでは「作品の再現者」に留まってしまうので、演奏者自身がその作品に対して感じたイメージや想いを込めることが大切であり、それが演奏の最も楽しいところです。

そして作曲者と演奏者のイメージ、想いが合わさったユニークな(唯一の)演奏を、聴いてくださる方に届けるのが演奏者の使命です。

しかしどれだけ作品に対する想いが強くても、どれだけ素晴らしいイメージを心の中に持っていたとしても、それを的確に伝える力がなければ聴く人に伝えることはできません。そこで必要なのが「演奏技術」です。

演奏技術とひとくちに言っても非常に広範囲なものであり、習得するためにはひとつひとつをきちんと組み立てていかなければなりません。

本書はその最も重要であるいくつかの基本的テクニックを中心に、「練習」や「上達」について深く考えていくためのヒントが書かれています。

この本を元に正しい方向性、効率的な練習をすることで、きっとみなさんの演奏技術が向上すると信じております。


荻原明(おぎわらあきら)


なお、本書の進め方や”note”のシステムなどに関しては、こちらのリンクをご覧ください。


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