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#017.管内に溜まる水分の処理

トランペットを吹いていてしばらくすると、演奏している音の中に「ホツホツホツ」とか「ペペペペペ」みたいな音が出てきたことありませんか?これは管の中に溜まった水分の音です。

最近どのくらいの人が言うかわかりませんが、昔は結構普通にこの水分のことを「ツバ」と呼んでいましたが、ツバ(唾液)なんてほぼ含まれていません。この水分は管の中に発生した結露とバルブオイルが成分です。まあ、結局キレイなものかと言えばそうではないのですが。


中学校の吹奏楽部時代

中学生のとき、「ツバふきタオル」なるものを全員が必ず持っていて、演奏中は常にひざの上に置いていました。ネーミングが酷い。

水分が溜まってくるとそのタオルでウォーターキイを包み、受け止めていました。

中学生の頃、かなり頻繁にウォーターキイのコルク側面がボロっと欠けたり、コルクそのものが取れてしまうことがあり、半年に一度ほどのペースで楽器屋さんで交換してもらいました。僕は中学生から楽器を始めたので、その時はそういうものだと思い込んでいたのですが、今思えばこの交換頻度は異常です。

原因はタオルでこすったりひっかけたりすることが多いから起こっていたのです。

衛生面

昔すぎて記憶が曖昧なのですが、このツバふきタオルの交換頻度はそれほど高くなかったと思います。毎日練習して、楽器ケースの中にポイっと入れて、翌日もまた使う。

楽器ケース(主にハードやセミハード)は中に雨が入り込まないように密閉できる構造になっているものが多いです。それは言い換えれば、フタをしてしまえば一切換気しないとも言えます。

たくさん水分を吸収したタオルがケースの中に放置されていれば、湿気がこもり…カビます。その菌はタオル以外に楽器やマウスピース、ケースそのものにも広がります。

定期的にフタを開けて日干ししたり通気しているのであればまだ良いですが、楽器ケースって楽器を出したらすぐ閉じることが多いと思います。また、週末しか楽器を吹かない社会人の方や、テスト期間で部活ができず1週間放置状態だったら、かなり不衛生な環境になっているはずです。

しかも、当時僕も何度も経験がありますが、その不衛生なタオルでつい口やマウスピースを拭いてしうのです。

脅かすように書いてしまいましたが、決して大げさとも言えません。かなり前の話ですが、バグパイプ奏者が、楽器の中に繁殖したカビを演奏中に吸い続けて亡くなった、という話もあります。もちろん金管楽器はバグパイプのような構造ではありませんから、そこまで心配する必要はありませんが、皮膚疾患やアレルギーを発症する可能性は十分に考えられます。

衛生面に気を付けることは決して無駄なことではありません。

さらに問題点があります

タオルを使うことでウォーターキイのコルクが破損したり不衛生なだけでなく、水分がたまるたびに毎回タオルを手に取り、処理し、また戻すという時間のかかる動作が必要になることも懸念しています。例えば、演奏中に予期せぬタイミングで突然水分た溜まって音と一緒に「ホツホツホツ」と鳴り出してしまったら、瞬時に対応ができない可能性があります。

立奏時のタオルの場所問題

それが座っているときならまだ対応できるかもしれませんが、立奏の場合そもそもタオルを置く場所がない、という問題点があります。アンサンブルコンテストなどで立奏で演奏している団体の中には、タオルを肩や譜面台にかけている人がいるのですが、そんな場所に置いていたら、落としてしまう可能性もありますし、そもそも見た目が良くありません。

タオルより演奏が大事です。

水分処理の仕方

したがいまして、「管内の水分はそのまま床(足元)に落とす」、という方法を取るのが良いわけです。

コロナ禍前までは、ホールでも練習場でも床にそのまま出して後で拭くとか、そもそもホールの床に吸収されて終わりだったのですが、そうもいかなくなってペット用の吸水シートを足元に置くことが普通になりました。僕もペットシートを使うこともありますし、トイレなどにあるペーパータオルを数枚重ねて使い捨てることもよくあります。

その処理の仕方が学校や会場によっても違ってくるので従うしかありません。

学校などでも各自ぞうきんなどを足元に置くことが増えましたが、コロナがどうこうはさておき、両手が演奏に集中できることは良いことです。

個人的な意見ですが

ソロの演奏時、水分処理をするために後ろへ向く方がいらっしゃいます。いろいろな考えがあって当然ですが、私個人としてはあの動きをされると「え?どうしたの?何かするの?」と思ってしまい、見ていて演奏に集中できない要素です。とてもステージ慣れしているプレイヤーの方は、いつ水分処理をしているかわからないくらいさりげなくやっていることに気づきます。

ソロコンテストや音大生の方、今一度自分のステージ上のうごきを確認してみましょう。ちょっとした動作で全体の印象が変わるものです。


ホツホツが解消しない場合の対処

さて、水分処理ですが、主管や3番管から出した直後、楽器のどこかでまだ「ホツホツホツ…」と水分の音が出てしまうこと、ありませんか?

いったいどこにいるのでしょうか。

楽器のちょとした構造や構えたときの角度のクセなどにもよりますが、僕の使っているシャーゲルは構造上の問題だと思いますが、ウォーターキイから出てこない水分が多いです。

水抜きをしても解消されないのは、ほとんどの場合ベルに近い部分に溜まっているからなので、その場合はベルから出すほうが早いです。

ベルから出すわけですから、その接続部分めがけて楽器の中の水分を集めていきます。

丸で囲った部分に水分を流し込むようにしたいのです。では順番に解説します。

ベルをあげて2,3番ピストンを押したし離したりしながら通常の水分を排出するときのように空気を流します。このとき、1番ピストンは押しません。押せばベルではなく1番管の中にも流れ込んでしまうからです(逆にそれを利用して1番スライドを抜いて水分を出す方もいらっしゃいます)。ベルを上げる際は天井や周りの人に注意してください。

2.ベルのカーブ部分に集まっているはず

そのままベルのカーブ部分に水分を集めます。目に見えないので、集まっていると想定するしかありません。

3.クルっと回転させて、ベルから出す

そのまま手首をうまくひねって、ベルの方へ流れるよう楽器を逆さまに向けてください。溜まっていれば出てきます。壁などに楽器をぶつけないように十分気をつけて回してください。

なお、マウスピースが落下する可能性があるので、必ずはずしてから行うようにしてください。

あと、ここまで解説していて何ですが、2番管を抜いてそこから水分を出す方法もあります。いろいろ試してみてください。

ちなみに、もっと簡単な方法が2番管を抜いてそのまま2番ピストンを押しながら排出する方法です。これでもある程度出せるかと思いますので研究してみましょう。

水分は溜まる前に出す

管内の水分は絶対に溜まりますが、演奏中に鳴るのは避けたいところです。私は以前本番の演奏開始直後、水分が溜まっているのに気づかずいきなりホツホツ鳴ってしまい、でも水分を抜くタイミングがない吹きっぱなしの曲だった、という経験があります。この経験があるからか、音を出す前に必ず水抜き動作をするクセがついてしまいました。
演奏開始前や曲間で、こまめに水抜きをする習慣を持つようにしましょう。

また、水分を出すとき、びっくりするくらい超高圧の空気を吹き込んで勢いよく「フーーーーーッ!!!」と出す人がいますが、それかえって奥に飛んでいって出ていないかもしれません。それよりも、合奏中や本番にそんなことしたら本当に迷惑ですので、クセにならにように心がけてください。

ということで今回は管内に溜まる水分についていろいろと書いてみました。


それではまた次回です!


荻原明(おぎわらあきら)

荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。