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4-1.伝える、ということ(無料記事)

芸術とは何か

芸術とはなんでしょう。

音楽以外にも芸術と呼ばれるもの、絵画、彫刻、文学、映画、演劇、写真、小説。歌舞伎や落語、能など日本の古典芸能も芸術です。

これらに共通するものとは、一体なんでしょうか。

崇高なイメージを持ちがちな「芸術」という言葉ですが、決してそうではなく、相手に自分の気持ちや考えを伝える表現方法を芸術と呼びます。

あなたがひとりでご飯を食べていたとしましょう。確かに美味しいと思っても、それを誰かに伝えることができず、なんとなく味気なさを感じること、ありませんか?それが2人だと、「美味しいね!」「ほんとだね!」と共感してもらえる喜びが生まれ、心が満たされます。

自分の気持ちは嬉しさだけではありませんね。辛いこと、悲しいこと、怒り、そうした様々な感情や「願い」、そうした様々なものが心の中には生まれます。

日常は、これら心の中に生まれたものは言葉によって伝えようと試みます。しかし、芸術はそれだけでなく、例えばカンバスに絵の具と筆で表したり、台本を作って再現したり、まったく違うストーリーをオリジナルで作って、その中にメッセージ込めたり。
このように様々な方法を用いてアクションを起こすことを「表現」と言いますが、こうした表現のメリットは、不特定多数の人いっぺんに伝えられるという点です。しかも絵画や映画、小説などはそれがいつまでも残るので、時間を飛び越えて作者の想いを伝えることができるわけです。

受け取る側にも楽しみがあります。自分の生活や時代には経験したことのない様々な事象がバーチャル体験できる点。簡単に地球を一周することもできるし、ファンタジーの世界で魔王討伐の旅に出かけることもできます。想像していなかったこと、自分では考えつかなかった作者の精神世界を覗くこともできます。これは楽しい。そして勉強になる。

このように受信者と発信者の関係が成立すると、その表現が「芸術」になります。


「音楽」という芸術

絵画や小説は作品を発表し、受信者がそれを見たり本を手にとるシンプルな関係です。しかし、音楽はもう少し複雑な場合が多いです。

まず作品は当然必要ですから、作曲者がいます。最近は様々な手段が音楽にも存在しますが、昔からの流れを汲むとやはり楽譜に書き記すのが一般的です。しかし、その楽譜を小説のように出版して多くの人が楽譜を見ても、それで感動する人は非常に少ないと思います。楽譜を読める人が限られているから。そして楽譜を読めてもその作品世界を脳内で再生することは非常に困難だからです。

そこで、受信者に音として作品を伝える役が必要になります。それが演奏者です。

演奏者は作曲者が生み出した作品を声や楽器を使って音に変換する仕事をします。ただし、楽譜に書いてある情報を左から右へ正確に音にするだけでは、単に楽譜というデータの再現に過ぎません。作曲者は作品に何かの想いやメッセージが込められているわけですし、優しく歌ってほしい場面や、力強く強烈なイメージを持って作曲しているわけで、そうした雰囲気を受信者へ届けるために楽譜に心を込める必要があります。要するに作曲者の心に寄り添い、「この場面はどんなイメージで書いたのだろう?」と想像することが必要です。

しかし演奏者のすべきことはそれだけではありません。さらにそこに「演奏者の心」を込めるのです。こうすることでその奏者にしかできないユニークな演奏が生まれ、聴く人を魅了するのです。その作品が好きな人、その奏者が好きな人、その作品をその奏者が演奏する表現、様々な楽しみが演奏には含まれているのです。


演奏者の技術

それらは(理想も含めて)すべて楽譜に書かれていることがきちんと再現できるのを前提としての話です。そうでない場合、作品の素晴らしさを聴く人へ完全へ伝えることができません。
作曲者がどのような楽譜を書くかは自由です。ですから、(理想を含めて)演奏者はどのような楽譜に出会っても演奏ができるよう想定しておく、要するに練習してスキルをあげることが必要になるわけです。

スキルが高ければ高いほど、これまでに書かれた沢山の作品を演奏することができますし、そこに自分のイメージも込めたユニークな作品づくりができるのです。

今回は「芸術」について書きましたが、あまり難しく考える必要はありません。「この曲すげーかっこよくね?」とか「聴いてよ!めっちゃ良い曲なんだから!」とか「私のトランペットの音を届けたい!」など、心の中に芽生えた「誰かに聴いてほしい気持ち」、それが芸術に昇華していくのです。

演奏者は発信者です。自分の力が未熟だとか、まだ練習が足りないとか、上手になったら人前で演奏するとか、そういう表面的な完成度よりも、心の中にある想いを今ある技術で届けようとする行為、それが楽器を持った人の宿命です。
どんどん表現していきましょう!


ということで今回はここまでです。
また次回!


荻原明(おぎわらあきら)


荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。