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#004.トランペットの購入

(トップ写真は前回に引き続き新宿にありますドルチェ楽器さんの金管ブースです。10年くらい前の写真ですが今と変わりないですね)

今回は楽器の購入がテーマです。

楽器は楽器屋さんで直接購入しましょう!

インターネットでの買い物、便利ですよね。僕もほとんどインターネットで購入します。買いに行く交通費も時間もかからないし、欲しいものがお店に売っていないことも多いし。

でも、私の場合購入するものに線引きをしています。それは品質が一定であるかどうか。例えばペットボトルの飲料は、どこで買っても同じですよね。電化製品も同様。同じ型番の商品のすべてが完全に同じ機能を果たします。

だからネットで購入しても不安はありません。

しかし、同じ商品であっても個体差があるものは、やはりお店で選んで購入します。野菜とか肉とか。あと、楽器。

楽器は、同じ型番の商品であっても個体差があります。例えるなら陶芸家が作った皿のようなものでしょうか。材料が同じであってもそれぞれがユニークな(唯一の)存在となります。


楽器は、ひとつひとつ職人が作り上げた「作品」と考えてください。

ですから、インターネットで適当にポチるのではなく、「これだ!」と言える楽器との出会いを求めて可能な限り管楽器専門店で直接選ぶようにしてください。管楽器を専門に扱っているお店は、いくつものメーカーの同じ型番の楽器を在庫として複数確保していますし、管楽器の専門知識を持った方もいらっしゃいます。

そして、楽器選定は「ダメなものをはじく」ことだと思っている方がいますが、そうではありません(確かにお安いものにはそういった楽器もありますが)。楽器はみんなそれぞれ良い個性を持っていますから、自分が求めるものがその楽器にあるか、相性を確認するものだと思ってください。


同じトランペットにも様々な種類があります

こちらの写真は10年ほど前のものです。表示価格やラインナップが現在と異なります


楽器店に行くと、トランペットひとつとっても実に多くのメーカー、多くの種類があります。見た目はどれも似ているけど、値段が10倍違ったりして驚きます。なぜこんなに値段が違うのか、一番安いのではダメなのか。いろいろと思うことがあるでしょう。

値段の違いはおおまかにまとめると以下の理由が考えられます。

  • 素材

  • 製法、コンセプト

  • 生産台数

ひとつずつ解説します。

[素材]
高価な材料を使えば高くなるのは当然です。例えば楽器表面の素材は

ラッカー → 銀メッキ → 金メッキ

の順で高額になります。また、金属の素材も若干ではありますが、

イエローブラス/ゴールドブラス

など、銅の含有量によって値段も若干変わります(重さや吹き心地、響き方も若干変わります)。

細かな部分に使われている素材もアルミやプラスチックに比べれば、金属を使っている楽器のほうが当然高価です。


[製法、コンセプト]
どこまで機械で作っているのか、職人がひとつずつ作っているのかなどでも価格は大きく変わります。他にも見た目ではなかなかわからない内部のこだわりや、パーツの形状やパーツ数の増減などがそれにあたります。

また、新しいトランペットを作るとき、アドバイザーとして著名な奏者に協力を仰ぐことがあります。「〇〇モデル」という名前の楽器は大抵それに当たります。どんなシーンで、どんなサウンドで、どんな吹き心地を求めていくのか、そうした具体的なコンセプトを実現するために、奏者と職人が手間暇かけて技術を投入してく、いわば技術料の差が値段に出ます。


[生産台数]
製法のこだわりは、結果として量産が難しくなります。数が少なければ価値が高まるので値段も上がります。

楽器だけでなく日本やアメリカは工業=量産の歴史があるため、例えばヤマハやBach(バック)などは管楽器専門店に行けば必ず置いてある印象がありますが、ヨーロッパに目を向けるとそこは量産よりも小規模の工房でひとつひとつ丁寧に作り上げる「職人の手仕事」が多いようです。

ですので、ヨーロッパの楽器はメーカーこそ多いのですが、どこの管楽器専門店に行っても必ず置いてあるとは限りません。しかもどんどん改良を重ねていくので、数年前にカタログに掲載されていたものがなくなっていることもしばしばです。ヨーロッパのトランペットはロータリーバルブがメインなので、日本の需要と合わないことも理由かもしれませんが。


高いのが良い楽器なのか

高い楽器にはそれだけの理由があるので、品質は良いに決まっています。では初心者であってもできるだけ高額なものを買うことがベストなのか、と言えば一概にそうではないと私は思います。

すでに説明したように、高額な商品は具体的なコンセプトがあって作られている可能性が高いです。しかしそれは万人にとって受け入れられるものではないかもしれません。

例えば、ロードレース用の自転車は大変高性能かもしれませんが、それでスーパーまで買い物に行くとして、果たして使い勝手は良いでしょうか。

初心者には初心者が一番に求めたい「吹きやすさ」「扱いやすさ」が必要です。したがって、一番最初に手に入れる楽器は値段で決めずに、音が出しやすく、コントロールしやすいものを選ぶほうが良いと思います。

価格帯

トランペットの価格帯を分けると以下のようになると僕は考えます。

  • 数万円

  • 10万円〜20万円前後

  • 30万円〜50万円前後

  • それ以上の価格帯


[数万円のトランペット]
ネット通販で検索すると、お手入れセットや教本、譜面台も全部含めて3万円!みたいなものが結構出てきます。他にも少し名の知れた大手楽器屋さんのオリジナルモデルとか、教育現場の備品としても無理なく購入できるようなコンセプト(かどうか定かではありませんが)の楽器はこれくらいの値段で購入できます。

私もこれまでそうした楽器を何本か吹いてみたことがあります。ちゃんと音は出ます。しかし楽器の製造工程が雑な印象が多く、例えばピストンのコンディションが悪かったり、金属同士を接続しているハンダが雑だったり。以前ピストンが全然動かないので調べてみたら、ピストンの中の一部が斜めにくっついている部分があって驚きました。
そうした構造上の問題点が最も大きく影響するが「楽器の共鳴具合」だと思います。

音は正しく出るし、ピストン押せば音程も変化します。だから音階とかメロディは演奏できるのですが、そのサウンドの響きがあまり豊かではない感じがします。
だからフォルティッシモで鳴らそうと思うと楽器がバラバラになっちゃうような気がしたり(実際はなりません)、ピアニッシモは多分会場に届きにくいような気がします。

音が出ること、演奏が可能であるという条件を満たしている(だけの)楽器といったところでしょうか。でも、とりあえず音を出す程度であればこれでもいいかもしません。例えば、お子さんがトランペット吹いてみたいと言い出したけど、すぐに飽きてしまったらどうしよう、と心配されている方など。

[10万円〜20万円前後のトランペット]
僕が中学の吹奏楽部に入って最初に買ってもらったのがこの価格帯です。あ、ごめんなさい、35年くらい前のことでした。
今は物価も上がって、実はこの価格帯のトランペットは一番少ないのではと思います。
なので、ちゃんとしたトランペットを手に入れたいと思うなら、もう少し価格を上げなければなりません。



[30万円〜50万円前後のトランペット]

現在はトランペットはこの価格帯が最も多く、平均的です。音大生やプロもおよそこの価格帯を主に使用しています。

よって、メーカーやラインナップの選択肢も大幅に増えます。

初心者の方でも、これからずっと続ける強い意思があり、予算に余裕があるのでしたら、こちらが良いかと思います。


[それ以上の価格帯のトランペット]

「◯◯モデル」のようにアドバイザーの名前がついたスペシャルなトランペットであったり、ヨーロッパのメーカーの一部、カスタムオーダーして発注する楽器などはやはり高額で、中には100万円以上するものもあります。

ヤマハも最近ではこの価格帯に力を入れているようですし、実際にとても良い楽器が多いです。
Bachもアルティザンなどの楽器は本当に素晴らしいと思います。


楽器屋さんで購入する理由

記事の最初に管楽器専門店で購入しましょう、と書きましたが、その理由は以下の通りです。

  • 同じ型を何本も試奏できる

  • いくつかのメーカーを吹き比べできる

  • 選定品がある

  • 保証やリペアなどのアフターケアが充実している

  • 安くしてもらえる

  • 特典が付く


[試奏、吹き比べ]
楽器には個体差があると先ほど書きました。また、同じメーカーでも型番が変わるとガラリと変わるものもありますからいろいろと試してみると良いでしょう。これは管楽器専門店だからできることです。


[選定品]
楽器屋さんはプロの奏者に依頼して「これ良い楽器だよ!保証するよ!」といったオススメの「選定品」を置くことが多いです。プロのお墨付楽器ですから、信頼できるものと言えます。でも必ず試奏はしましょう。


[アフターケア]
楽器メーカーだけでなく、そのお店の一定期間の保証がつきます。購入後に不具合が見つかったり、修理が必要になっても無料で対応してくれることもあります。また、必要な交換パーツの在庫も安定していますので、即日修理してもらえることも多いです。アクシデントはいつ起こるかわかりませんから、このような体制が整っていることは大変ありがたいことです。


[値引き]
楽器屋さんは定価で販売することはほとんどありません。大概安くしてもらえます。その割引率は楽器屋さん(と大人の関係)でまちまちですが、およそ1〜2割は安くなるかと思われます。

僕がお世話になっているドルチェ楽器さんは、さらにポイントが加算されます。楽器購入額からのポイントですから、価格にもよりますが結構なポイントがもらえるため、バルブオイルなど楽器用の備品などを一式揃えることができるくらいには付与されます。


[特典]
時期によってフェアを開催しているときがあります。よくあるのは新年度や年末です。あとは楽器屋さん独自の「トランペットフェア」などが開催されることもあります。

そういった時期は特に、楽器購入特典として例えばお手入れセットがもらえたり、チューナーや譜面台がもらえたりすることもあります。フェアの時は用意している在庫の本数が多いので、試奏するにも良いタイミングです。


こうしたメリットはもちろんですが、やはり高額な買い物をするときに一番安心するのは「人間同士」が向き合っていること。このお店のこの店員さんだったら信頼できる、と思えることは最も大切だと思います。ですから、楽器屋さんには(楽器を購入しなくても)通って顔見知りになっておっことをおすすめします。


[楽器店のデメリット]

デメリット、というか特徴なのですが、楽器店には当然卸業者(提携メーカーや輸入元など)がそれぞれ関係しています。要するに楽器店によって主力のラインナップが違うのです。これは実際に複数の管楽器専門店に行ってみればわかります。並んでいるメーカーそれぞれの数が違いますし、推しのメーカーが必ずあります。

ですから、「このメーカーが欲しい!」となった場合、どの管楽器専門店にいけば良いかが決まるわけです。購入する前にはそうした事前の下調べも大切です。

購入までの流れ

では、自分の大切な1本を購入するまでの流れを確認しておきましょう。

  • 楽器店巡り(リサーチ)

  • 楽器店へ問い合わせ、日程調整

  • 選定

  • 支払い


[楽器店巡り(リサーチ)]
先ほど「楽器店のデメリット」について書きましたが、管楽器専門店によってラインナップが大幅に違います。いろいろ吹き比べてみたいのであれば、数件のお店をハシゴしてみましょう。実際にお店に足を運ぶことによって楽器だけでなく、お店の印象や雰囲気などもわかります。


[楽器店へ問い合わせ、日程調整]
欲しい楽器が決まったら、まずはお店へ連絡をしましょう。在庫の確認や、当日選定するためのスタジオを確保をしてもらうためです。

例えば、ドルチェ楽器さんは、東京、大阪、名古屋にお店があるので、場合によってはそれらのお店から一箇所に集めていただけることもあります。ただし、当然日数が少しかかるので、いきなり明日とか言っても無理ですし、逆に集めてもらったのにお店に行くのが数日後というのは迷惑です。

[選定]
いよいよ楽器購入の選定です。

あらかじめ希望した楽器を可能であれば複数台用意してくださっています。その中から自分が求めている楽器を選ぶわけですが、なかなか一人で楽器を選定するのは難しい方もいらっしゃるでしょう。もし可能であれば、楽器の違いを理解できる方に同伴してもらうのが良と思います。

気に入ったものがあれば、購入の意思をお店の方に伝えます。


[支払い]
支払いは、現金、振込、カード、ローンなどを選ぶことができます。

現金やカード、ローンの場合は即日持ち帰ることができると思いますが、振込は入金確認が済むまでお店お預かり状態になるかと思います。また、未成年の方はローンを組む場合など保護者の承認が必要になるケースもあります。支払い方法と受け取りに関してはお店へ問い合わせてみましょう。


選定すべき楽器とは

楽器の選定は、まったく同じ型を複数台用意してもらい、その中から自分にとってベストなものを見つけることが最も多いパターンです。しかし、数万〜10万円くらいの初心者モデルですと、楽器の作りを確認する程度で、個体差を求める必要がどこまであるかは難しいところです(個人の感想)。

最も選定が必要価格帯は、量産型の30万円〜50万円前後の楽器です。


それ以上の価格帯になると今度は同じ型の楽器を複数揃えることができない可能性が高く、そもそも高額な同一の型番は精密に作られている印象があり、異なる種類を吹き比べるような選定になるのでは、と思います。これもタイミングによっていろいろです。

実際、僕が今使っているシャーゲル(オーストリアのメーカー)という楽器は、ラインナップごとに1本ずつしかない中で、「シャーゲル」という枠の中から自分が求めているものを探しました。

この楽器すごいですよね。シャーゲルの「新幹線」という楽器です。
今はもう製造されていません。


『新幹線』と漢字で掘ってあります!わけわかんない。


近くに楽器屋さんがない方へ

僕は東京在住ですので、数多くの管楽器専門店に行くことができますが、地方の方は近所に楽器屋さんが1つしかない、という場合もあると思います。しかもそうしたお店は大手の代理店で、学校関係からロックバンドの楽器まで一手に引き受けて仕入れているような総合的なお店だと思います。

そうなると選定という段階もなく、店頭にある1,2本か、現物を見ないでカタログ注文しかできません。

しかし、これまで解説したように楽器は高額だし長く付き合っていくもの。せっかくですから小旅行気分で管楽器専門店のある都市部まで足を運んでみましょう。

そうして苦労して手に入れた1本はとても大切なものになるはずです。

選定のお手伝いします

これまでに多くの生徒さんの楽器選定を行なってきました。
生徒さんでなくても、もし楽器選定をご希望でしたら無料でお手伝いします(条件がいくつかありますが、お気軽にお問い合わせください)。


お問い合わせは、荻原明オフィシャルサイトトップページ最下段(メニュー内 ”Contact”)のフォームからお送りください。

それでは!


荻原明(おぎわらあきら)


荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。