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良い人間関係を構築する方法~『RAPPORT』読書感想~

■はじめに

「悩みの9割は人間関係」というほど、現代人は日常生活でコミュニケーションに気を遣って生きている。
人との関わりが増えれば増えるほど、その悩みやストレスも大きくなり、知らず知らずのうちに「疲れていた」という人も少なくないはず。

どんな人とでも『心の結びつき』(ラポール)を形成できる人であれば、相手はあなたを攻撃することをためらい、トラブルになる原因は最小化できる。

今回は「人間関係に悩みがある」「どんな人でもできるだけ衝突を避けて良好な関係を築きたい」という人にぜひとも読んでもらいたい本を紹介する。

『RAPPOT 最強の心理術 謙虚なネズミが、独善的なライオンを動かす方法』(ローレンス・アリソン/エミリー・アリソン著)である。

当著書は『ラポールを形成するための基本』と『人間関係を快適にする4つの動物サークル』について述べられている。

また、著者や著者の周りで起こった具体的な事例を交えてわかりやすく書かれており、読み物としても面白い。

本記事では、前半部分である『ラポールを形成するための基本』について述べていこう。


■HEARの原則

近年日本でも「聞き方」に関する本が多く出回っており、当著書でも、コミュニケーションについて、次のように述べられている。

コミュニケーションの技術は、正しいことを、適切なタイミングで、正しいやり方で伝える技術を学ぶことであると考えられている。しかしコミュニケーションの本当の鍵は~(中略)~。滑らかに話すことではなく、注意深く耳を傾けることが、相手との間に確固としたラポールを築くための本当の鍵だ。

p.088より

相手と、良好な関係を築きたいのであれば、やはり、相手の話に耳を傾けること、即ち「傾聴する」ことが重要な要素である。ということが基本原則であるというのだ。

そのなかで、4つの大事な要素『HEARの原則』について大きな学びを得ることができた。

HEARとは
「正直さ」(Honesty)
「共感性」(Empathy)
「自律性」(Autonomy)
「反射」(Reflection)

それぞれの頭文字をとったものだ。


★正直さ(Honesty)

嘘をついたり、人を欺いたりする人は、信頼されないのは明らかである。
ただ、正直すぎて真っ向から相手に対立し過ぎてしまうのも問題である。

ラポール形成の技術は、適切な正直さを持って目標を達成するのに適切なことだけを伝えることである。

ラポールを維持しつつ、正直さを保つには3つのポイントがある。

1.欺瞞や策略を用いることを避けること
2.はっきりと、客観的に、直接的に伝えること
3.穏やかさを保ち、感情は脇によけておくこと

そして、相手に伝えるときは、テキストメッセージではなく、自分の言葉で直接伝えることが大切である。

これに関しては、私も過去に何度か失敗したことがある。

相手の許せない言動にいらっとしてしまい、テキストで自分の感情を伝えてしまった。
それによって、相手の怒りを買ってしまい、収拾のつかない状態までなってしまったのだ。

どうやら、私は
「感情的になってしまうこと」
「正直に相手に伝えすぎてしまうこと」
この2つが弱点らしい。

大切(特にネガティブ)なことを相手に伝えるときは、次のことを意識したい。

・テキストメッセージに”逃げる”ことを止める
・感情的になったら、紙に書き出して「事実」と「感情」を分ける
・正直に、率直に伝える


★共感性(Empathy)

共感性は、いったん大人になってしまうとその水準から向上させることは一番難しい技術であるとされている。
共感性を向上させるためには、次の3ステップを踏む必要がある。

第一段階:自分の気持ちの『言語化』をする
自分に何か起きたときに自分の気持ちを説明する。

かなりシンプルで簡単にできそうだが、大人になればなるほど自分の気持ちを言葉で表現することが難しくなってくる。

「自分の意識」は人間関係の技術の土台。
自分自身の感情が分かっていない人が、他者の考えや気持ちに共感はできない。

では、具体的にどうすればいいのか?
当著書ではまず、「他の人に自分の経験を話す」ことをすすめている。
自分の経験を話すことで、よりよく自分自身を理解することができ、自分の感情も相手に説明することができるという。

そのためには、何でもオープンに話せる人を見つけることが大切だ。

第二段階:相手を尊重し、理解しようとする気持ちを持つ
相手の立場に身を置き、相手に起きたことが自分に起こったことであるかのように感じ、想像することが次のステップである。

この段階で最も大切なポイントは、自分と相手を比較してはいけない
相手の立場を理解してあげるだけでいい。

相手の感情と経験を認め、敬意を払うことが大切であり、相手と自分のどちらが大変なのかなどとは考えてはいけない。

第三段階:相手の頭の中に入って、相手になりきる
最後の第三段階は、カウンセリングやコーチングで使われる手法である。
具体的には「もし私がそういう状況だったとしたら、どうするだろう」ではなく、「どうして相手は、そういう行動をとったのだろう?」と考えることである。

第三段階にステップアップするためには、相手の感情のみならず、価値観や信念、性別、年齢、人生の教訓を通じて、その場の状況や経験をできるだけ自分に落とし込む必要がある。


★自律性(Autonomy)

自律性とは、簡単に言うと「相手に選択権を委ねる」ということである。
私たちは、誰でも他人から指図されたくない生き物である。
そして、自分に選択権がないと、指図された人に責任を転嫁する傾向もあるのだ。

極端な話、たとえリスクがある場合でも選択権は本人に委ねよう。
そのほうがお互いにより気持ちよくいられるし、本人も自分の選択ができることで、あまり傷つかないで済む。


★反射(Reflection)

反射は、これら『HEARの原則』の中で最も重要な技術である。
その理由は、正直さ、共感性、自律性の3つを成し遂げるために役立つ方法だからである。

反射は、相手が言ったことを機械的にオウム返しする方法だと誤解されていることがよくある。

相手の言っていることではなく、相手の「真意」がわからないと、本人がどんな風に感じているのかわからない。結果、何が一番いいのかもわからない。相手の「真意」が分からなければ、反射をする意味はない。

具体的に反射には、5つの技術がある。(SONARの技術)

よくある親と子どもの会話を例に、反射の技術を紹介する。

・単純反射(Simple)

子ども:今日は学校に行きたくない
親:今日は行きたい気分にならないのね?

相手が言ったことを直接的に、言葉通りに繰り返す。
重要なことは、正しい部分を選んで反射することが大事。
さらに知りたいことは何か? 相手の言葉で意味があるのはどこか?
を探る。

・両側反射(On the one hand)

子ども:宿題しなきゃいけないのわかるけど、いつも疲れているんだよ。親:疲れてる一方で、宿題をやらなきゃいけないこともわかっているのね。

相手が2つの相反する事実、考え、感情を述べていたら、要約して反射する。どちら側を選ぶかわからないが、相手はさらに多くのことを語ってくれる。

・非論争(No Arguing)

子ども:何でも口を出すんだね
親:なんでそう思うの?

論争に巻き込まれず、反射で論争になりそうな部分を調べる。売り言葉に買い言葉を防ぎ、相手の真意を探ることができる。

・肯定(Affirmation)

子ども:算数は好きだけど、この問題は解けないよ。誰も解けないよ
親:なんで算数が好きなのか、もっと教えて

否定的な発言は無視し、ポジティブな部分を積極的に反射する。相手は肯定的になり、変化への勇気を持つ。

・リフレーミング(Reframing)

子ども:部屋の掃除なんて意味ないよ、どうせまた、汚くなるんだから
親:終わりのない循環みたいに思うから、イライラしちゃうんだね

相手の発言を言い換えたり、まとめたりして反射する。
キーポイントとなる質問を続けることで、さらに会話を進めることができる。

■まとめ

今回は、当著書の前半部分である『HEARの原則』について紹介した。
HEARの原則は、人間関係の結びつきであるラポールを築くうえで最も重要で本質的な技術である。

相手の話をよく聞き、相手に寄り添い、相手を尊重し、相手に自分の感情や思考を理解してもらうこと。これによって相手は心を開き、よい人間関係を構築することができる。

私は当著書の表紙やタイトルを見たときに「相手をコントロールする技術が身につく本」なのかというイメージで手に取ったが、いい意味で裏切られた。

普遍的で、本質的な内容盛りだくさんなので、当著書を読むことで一生もののスキルが手に入ると思う。

本記事を読んでくれた読者のみなさんが、少しでも当著書に興味を抱き、人間関係をより良くする方法について自ら学び、よりよい人生を生きられればいいなと思う。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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