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さよならを渡せない

焦した胸の火傷の跡
瘡蓋を爪で掻いては血を流し
痛みは自分だけのもの
あなたと重なる時間が無いとしても

八月の残像
消えない雲の向こうの空
弱々しく光る声
いつも いつまでも琥珀の中

散らない花弁は欲しくない
散らさない言葉は吐くつもりがない
散り 積もり 腐るまで
歳月と記憶の道を歩く
どこまでも

何を裏切ることもできず
痛みも追憶も淡い希望ですらも
見えない透明に包まれている

卒業証書もなく
忘れられた不思議の1つのように
さよならは渡せないまま
この重たさも 想いの確か不確かさも
自分だけの独占事項
明け渡すことなく
胸の奥 腕の中
そのままで そこにある

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