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小説

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小説的ななにか
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#古傷

なまめかしい古傷

なまめかしい古傷

体に這う指を、なぜ僕はつかめなかったのだろう。
彼女の指先が震えていたのは、いつだって熱帯夜で、その理由を尋ねることもしなかった。それだけの資格を、僕が持っているとは思えなかったし、あけてしまったパンドラの箱を、閉める術を僕が手に入れられるとは思っていなかった。

いや、そんな微かな震えにさえ、気付けなかったのが、あの頃の僕らの半端な恋愛に与えられたスキルだったんだろう。

片田舎の恋なんて

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