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トローチ
2023年6月13日 10:03
体に這う指を、なぜ僕はつかめなかったのだろう。 彼女の指先が震えていたのは、いつだって熱帯夜で、その理由を尋ねることもしなかった。それだけの資格を、僕が持っているとは思えなかったし、あけてしまったパンドラの箱を、閉める術を僕が手に入れられるとは思っていなかった。 いや、そんな微かな震えにさえ、気付けなかったのが、あの頃の僕らの半端な恋愛に与えられたスキルだったんだろう。 片田舎の恋なんて