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【浦和vs柏】J1第6節 感想【横幅の使い方】

Jリーグ再開後、怒涛の試合数に面食らっている皆様と、公式からの過剰供給に身体を震わせている皆様こんばんは。
とうとう、浦和がJ2で猛威を振るった"ヒューマノイドタイフーン"オルンガと遭遇してしまいました。

前節あたりからシーズン序盤の勢いが落ちてきている様に見える浦和レッズですが、ストロングポイントでもある左サイドでの汰木と山中の攻撃力が消されつつあることは恐らく誰の目にも明らかなのではないかと思います。
その中で、今シーズンから土田SDが表明した「浦和レッズの3つのコンセプト」をどの様に表現するのかという部分が問われている様に思えます。

この前の鹿島戦では、山中と汰木(どちらかと言えば汰木に比重が強めに思えますが)がいかにハーフスペースで自由がある状態で仕事が出来るのか、という部分で上手くいったと言えます。
しかし、前節のFC東京戦ではトランジション時に良い形を作る事が出来ずに、良さを出す事は出来ませんでした。

奇しくも、大槻監督が3連戦でワンセットと言っている通りに大きなトピックが3戦ごとに出てきては課題を浦和レッズに突きつけているのかもしれません。
しかし、課題が見つかる、という事は対策も取れる、という事で出来る限りシンプルに、ポジティブに受け止めて行きたいな、と思う次第です。

直近の3戦で浦和レッズに突きつけられている課題は「左サイドを主戦場としたファストブレイクをいかに表現できるか」という部分が主軸になっていますが、ここで改めてファストブレイクがファーストチョイスなのか?という部分に着目して後ほど書いてみたいと思います。

では、柏戦の感想を書く前に自分が感じたポイントをいくつか。

・40m幅でプレーする浦和と50m幅でプレーする柏
・ビルドアップからみる浦和の試行錯誤
・山中のセンターレーン侵入

この三つは、浦和レッズの今後を占うに当たって、またシーズンが進むにつれて浦和レッズがもがいた軌跡を思い返す為の大きなトピックになるのではないかと思って選びました。
これは違うんじゃないかしら、とかこうじゃないかと思うんですよね、というご意見は大歓迎なので、是非ともガンガンぶつけて頂ければ。
勉強させて頂きます!

40m幅でプレーする浦和と50m幅でプレーする柏

今節も浦和レッズは4-4-2を基本フォーメーションとして、左サイドでコンビを組むのは山中とファブリシオ、中盤は柴戸とエヴェルトン、右サイドは橋岡と関根という組み合わせでした。
特筆すべきは2トップの一角に入った武藤。
昨シーズンの3トップ時代はシャドーとして活躍した選手ですが、1.5列目的なスキルセットとワンタッチゴールを狙える動き出しに魅力が詰まっている選手ですので、スタメンとして出場した今節は「とうとうがってん寿司でサービスが受けられる日が来たか!」とドキドキしました。実際に、前半早々に素晴らしいターンからビッグチャンスを迎えましたし、前線からのプレスやカバーシャドウなど精力的に動いており、今後も浦和に必要な戦力には間違いないな、という事を印象付けたのではないかと思います。

左サイドにファブリシオを起用したのは、汰木の疲労を考慮したものではないかと思いますし、その上で前節までの反省を踏まえて山中と汰木を活用した左サイドでの強襲だけに依存する攻め手からの脱却をテーマに据えているのではないかと思っています。
事実、ファブリシオは守備時のポジションも含めて精力的に動いてくれていたと思いますが、よりペナルティエリア内で関与する形で攻撃で貢献していましたし、ペナルティエリア内で関与する形で貢献できたのも左サイドでの攻防よりは中央・右サイドからの攻撃に比重が置かれていたからなのでは、と思っています。

チームとしても守備時においても、序盤から失点してから前半終了まで、柏のボールの出し所とロングキックのターゲットとなるオルンガに対しての対応とセカンドボールの回収まで含めて対策を組んでいたんだろうな、という雰囲気は非常に強く、マウリシオの対応も含めてしっかりと対応出来ているのでは、と思いますし柴戸のデュエル時の力強さが増しているように見えた事とボランチがボールを前に運ぶという動きの要求に対しての適応具合を見ると相当に変わってきているな、と思わされる部分も多く期待を持てるものでありました。

じゃあ、なんで今節はこんなにやられてしまったんや!
という部分を考えてみるとこの見出しの通り「40m幅でプレーしていた浦和と50m幅でプレーしていた柏」と言えるんじゃないかと。
試合を見ていた人たちは3失点目まではそれほど悪くない、むしろ中村航輔が当たっていた事は大きいよなー、くらいの感じで観ていたと思います。
確かに、西川のミスからの失点を見ても柏のビルドアップ阻害に関しての配置は人を掴む事に比重を置いて、基本的に2手先くらいの近いパスの受け手は押さえる、という配置になっていました。
とはいえ、前線への配球と(主に)右サイドからの横断(🄫ジーノさん)によってシュートチャンスが出来るなど、ポジティブな部分もあり、それほどネガティブな印象は持っていなかったんじゃないかと思います。

ただ、この試合を通じて見てみた時に、大きなサイドチェンジが無かったのが非常に気になっています。
今節は中央での攻防や、より直接的に前線のハーフスペースに縦のボールを配給する意識が強めに見えるなど、これまでの試合と狙いも挙動も大きく変わったように見えていました。
柏の人を掴みに来る守備に対してその様な現象が引き起こされたのかは分かりませんが、これまでなら逆サイドに大きなサイドチェンジを行っていた場面でも配球される先は中盤であったりハーフスペースに縦パスを送る場面が多く見られた気がします。
良く言えば前への意識が強い。
悪く言えば、角度のない、幅の無い攻撃に終始してしまったともいえるのかな、と。

返して柏は浦和が4-4-2ゾーンのセオリーと自身の狙いに関係してボールサイドに寄る配置を取る事も含めて織り込んでいたと思うのですが、逆サイドへのサイドチェンジとプレッシャーライン前でボールを逆サイドに配球する事によりチャンスを迎えており、2点目はそんな形から生まれています。
これは、強いサイドチェンジで失点したFC東京戦を彷彿とさせるものでもありましたし、今シーズン初めから課題として問われているスライドが間に合わない問題に対しての動きだったのかな、と思います。

ざっくりとした目測ではありますが、埼スタのピッチの幅は68mで、浦和は攻撃時におおよそ40m幅レベルでのボールの展開に終始した半面、柏は50m幅レベルの幅での展開を含めて相手守備陣を攻略しようと試みていた様に見えました。
この「どの幅で攻略していこうか」という部分の違いは、その幅やフレーム内での挙動を含めてどう振る舞うかを考えるために必要なものだろうと思います。

浦和に関してはハーフスペースへの縦への強襲がままならなくなった段階で40m幅での攻め手への流れが出てきたのかな、と思いますが昨シーズンの嫌な思い出を彷彿とさせるものでちょっとどうかな、と。
ハーフスペース(もしくはセンターレーン)での縦パスを受ける動き自体はマーカーとの関係を避ける事も難しく、割と局面勝負的な部分があるためダイレクトパスやフリックなどの時間的な制約から導かれるプレー選択を強いられる傾向があるので、難易度が上がる事がひとつ。
もうひとつはボールは人より早い理論から考えた時にボールを入れることが出来る局面ではどれだけ早くボールを入れる事が出来てもプレッシャーラインを越えることが出来る以上の効果は望みにくいという事。
そこら辺を鑑みると個の能力で無理が効いたり、目的とするポイントへの入射角を作らない限りは難しいな、というように思えます。

ビルドアップからみる浦和の試行錯誤

今節では柏のビルドアップ阻害も関連してですがファストブレイク、いわゆるカウンター局面を誘導できない場面が増えた事によって自然とビルドアップを構築する事でボールを前進させる必要に迫られている訳ですが、昨シーズンまでのビルドアップを想像させるような動きが散見されます。
今節は江坂がマーキングに参加する事が多く、浦和のビルドアップ局面で3バック気味になる事が少なくありませんでしたし、ゴールキックの時には両脇にCBが位置する事によってビルドアップ時の数的優位を持とうという意識はありました。
セオリーとして固まっている欧州とは違ってゴールキック時のペナルティエリア内の振る舞いが定まっておらず、西川が自身のせいだとアピールした通り角度を付けたボールの散らし方なども含めたビルドアップの形を構築しきれていないのだな、という印象はありました。

ここで大槻監督の言葉を引きたいと思いますが監督が選手に要求している事の中で「相手選手を動かす事」「動きすぎない事」という部分がヒントになるんじゃないかと。
最後のコンセプトに触れるトピックにも関連しますが、相当に配置を意識した仕込みをしているんじゃなかというイメージはあるので、この辺はファストブレイク含めて考慮する必要があるのかな、とは。

ビルドアップに難がある、という評価は当然としてその評価を脱するための仕組みづくりはまだ手癖の域を抜けていないんだろうな、という気はします。この辺にいかに論理性をもって意識が作れるかが今後を占う意味でも大事な所なんじゃないかと思います。

山中のセンターレーン侵入

前節で少し言及しましたが、ハーフスペース強襲がかなわなかったことによりハーフスペースだけではなくセンターレーンに山中が侵入するケースが散見されるようになりました。
これが、チームとして織り込んできているのか、大槻組ty・・・監督の指導の結果なのかは分かりませんが第2プレッシャーラインから先の展開を目指すに当たって必要なプロセスなんだと思っているのかは分かりませんがボールを持たされた際の左サイドからの展開でセンターレーンに移動した時に効果的なボールの展開を見せる事が出来ない事がとてももったいないな、と。
もしかしたら、山中のラーム的な成長を期待しているのかもしれませんが、中盤までポジションを移した結果としてキック精度を活かした展開を見せることが出来れば新しい攻め筋が見えてくるなと思って楽しみにしています。
現在は左足からのキックの軌道の種類を持てるほどボディアングルも作れていませんし、ボールの中継地点以上の機能を果たす事が出来ていません。

折角、キック精度が良い山中が本来のポジションからわざわざセンターレーンまで移動してボールを受けるという動きをするのであれば、ボールの展開で優位を作れないと意味がないな、と思うのですよね。非常に勿体無い。
という部分で柏木の良い所を山中に仕込むプロセスなのかなー、と若干好意的には捉えています。

改めて浦和レッズの3つのコンセプトを考えてみる

というわけで、浦和レッズの新しいコンセプトとして代名詞的に言われつつあるファストブレイクですが、そろそろ見方を変えて考えるべきなのでは?と思います。
それは、汰木と山中の強みが発揮される動きが対策されつつあることもありますし、それだけじゃイカン、という部分でもがいているな、という部分でもあり。
攻め筋として迫力のある攻め方というのは別の筋でもあるよね?という部分で思う所もある訳で。
まずは、改めて土田SDが表明したコンセプトをおさらいしてみましょう。

【浦和レッズの3つのコンセプト】
・個の能力を最大限に発揮する
・前向き、積極的、情熱的なプレーをする事
・攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをする事

実際に、この3つのコンセプトの関係性というのは非常に重要で、現象としては「この能力を最大限に発揮する」と「攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをする事」の2点で上手くいっていない感というのはあるな、と思います。

以前、再開前にこんな記事を書きましたが3つのコンセプトはそれぞれが関係しあっていますし、サイクルとして成立しているものだと思っています。
どこかで「なんか上手くいかないな?」と思った時はこのサイクルのどこかに問題を抱えていると言っても間違いではないのではないかと。
実際に、相手を休ませないプレーであったり、個の能力を最大限に発揮するという部分でメカニズムに問題を抱えている状況では十分に表現できているとは言えない結果となっています。

前節の感想でも書きましたが、汰木と山中のコンビから選手が変わるだけでメカニズムが変わりますし、それに伴って中盤の挙動にも影響を与えます
今節では、ファブリシオは中盤や前線とボールを交換しながら前進する事が少なくないですし、関根はカットインよりはサイド深くまで侵入する動きが多い。マルティノスはボールを持つ時間が長く、前進する事を目的とした場合、機能すると言えます。
それぞれの選手が強みを持つプレーエリアであったりプレーエリアに対しての入射角が違う選手が揃っている中で、果たしてファストブレイクがファーストチョイスとして原則化すべきなのか?という部分には疑問符が付きます。

もちろん、3つのコンセプトに対して非常に親和性の高い攻め筋がファストブレイクである事に異論はありません。
とても分かり易く迫力が出ますし、ルヴァンカップの仙台戦を観た時に「こ・・・これは・・・こういうことか・・・!」と我が意を得たり、とばかりに鳥肌が立ちました。
その印象が強すぎるからか、ついついファストブレイクがファーストチョイスであるかと思いがちですが、実際には「強みを持つプレーエリアに対してどうアプローチするか」という問題以上のことではないのかもしれないな、と思います。たまたま、山中と汰木が揃った時に一番強い表現がファストブレイクであったのだと言えるのかもしれません。

理想論ではありますが「相手の配置に対してクリティカルを打ち続ける」という部分とその為に相手も動かすし、自分たちも積極的に動くという事が表現できれば自ずと3つのコンセプトが達成されていくのではないかと思います。今シーズン、大槻監督が5レーンを意識した位置取りであったり相手の背後を取ることと相手を動かす、自分たちは動きすぎない、などの言葉を見ると、この「相手の配置に対してクリティカルを打ち続ける事」を意識していると思われますし、そのために選手の起用なども考えられているのではないかと思います。
もちろん、現在は取るべき配置に対して「セットする」という表現がしっくりくる程度には流動性が弱いと思いますし「ボール・人・タイミング」の要素の中でタイミングについて詰めるべき所は少なくない状態ではあります。
なんでハーフスペースを含めた5レーンの位置取りを取れるようになる必要があるのか、相手を動かすのはどの様に動かすのが良いのか、自分達は動きすぎないというのはどの程度まで許容されるべきなのか、という部分の精度が上がってくればよりコンセプトを表現するための土台が強固になっていくのではないかな、と思います。

というわけで、今シーズン3つのコンセプトを表現する為に浦和レッズがどのようにプレーし続けるのかという部分を楽しみに見ていこうと思います。

気が付けば横浜FC戦が目の前。
以前の対戦では久保竜彦さんのゴールパフォーマンスがぐぬぬ案件でしたが、今節はどうなるでしょうか、とても楽しみです。
(しかし、フットボリスタのストライカー特集の背景に例のゴールパフォーマンスのシルエットが並んでてどうしようかと思ったのは秘密です・・・www)

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