#6 適応障害で退職後、無職になる人の【お金の話:退職金と確定拠出年金制度 編】
勤め先の退職金制度、把握してますか?
退職金制度の有無(※1)や、種類、その計算方法は会社によってルールが異なります。
それを調べるには、まず「就業規則」を確認してみましょう。そのうえで、「退職金規定」みたいな名前のもっと細かいルールがあれば、それに目を通しておきましょう。
退職を決めたら、会社の規則を読んで、以下の点を事前に調べておくことをおすすめします。
(※1)退職金を労働者に支払うことは、法律上の義務ではないため、退職金制度を設けていない会社も存在しうる。→労働基準法89条「退職手当の定めをする場合においては…」
【おことわり】本記事をお読みいただくにあたって
この記事は筆者の経験・調べたことにもとづいて書いております。
筆者の在籍していた会社では、「退職金+企業型確定拠出年金」という制度設計だったので、それを前提にした内容であることご了承ください。
ご自身の勤め先の退職金制度については、前述の通り、まず就業規則等をご確認ください。よろしくお願いいたします!
1. 退職金と税金
「退職金」と言われてすぐに浮かぶのは、「退職にあたり、退職者に直接支払われるまとまったお金」であるかと思います。これは各企業の退職金に関するルール(「退職金規定(規程)」など)に基づいて計算され、支給されます。
で、このお金にも所得税が課税されます。
【注意点1】 退職する時にもらうお金には税金がかかる
ひとまず、【退職を理由として勤め先から受け取るお金は、基本的にすべて「退職所得」として扱われる】と考えておきます。
そしてこの「退職所得」は、月々の給料と同様、所得税の課税対象となります。ただし、他の所得とは別枠で課税され、また控除額の範囲も広いです。
(参考)
控除を受けるにあたっては、「退職所得の受給に関する申告書」を勤め先に提出して手続きをしてもらえばそれでOKです。
そうでなければ、余分に所得税を支払ってしまうことになるので、自分で確定申告をしに行くことになります。
【手続】「退職所得の受給に関する申告書」を提出しよう
国税庁は以下のようにアナウンスしていて、「退職金を受け取ったなら、退職所得として必ず申告しなさい」ということになっています。
退職所得の申告には「退職所得の受給に関する申告書」というそれ専用の書式が用意されています。
申告が「義務」になっているのと、後述のとおり提出先が勤め先の会社(退職金の支払者)になっているので、退職金が出る場合は、会社からこの申告について案内がある場合も多いのでは?と思います。
※筆者の元勤め先では退職者に対して案内を出していました。
ただ、万一、退職金が出るはずなのにこの手続きに関して会社から何の案内もなければ、早めに人事担当者に確認してみましょう。(それか自分で確定申告をする)
【手続先】
在籍している会社の担当部門
【手続書類】
以下のページにある書式に記入し、勤め先に提出する:
【参考資料】
【注意点2】 退職時期によっては、給料や退職金から住民税がまとめて引かれる
前提として、住民税は「前年の1/1~12/31の所得」にかかる税金です。
会社勤めの場合、「前年の所得」に対する住民税は「今年の6月~翌年の5月」にかけて分割されて、毎月の給料から天引きされたうえで会社が各市町村に納付します。(※これを「特別徴収」という)
例えば、2021年1月~12月の所得に対する住民税は、2022年の6月から2023年の5月にかけて徴収されることになります。
同様に、2022年1月~12月の所得に対する住民税は、2023年の6月から2024年の5月の給料から引かれることになります。
では、これが退職後どうなるのかというと、退職時期によって異なってきます。(※以下、退職後に無職状態になる場合を想定)
<ケース1>1月~5月に退職した場合
例えば、2023年1月に退職した場合を考えます。
この場合、2023年1月~5月に徴収されるはずだった住民税(=つまり、2021年1月~12月の所得に対する住民税の残り)は、会社がまとめて納付します。
その納付分は、退職者の最後の給与や退職金からまとめて差し引かれます。
2023年6月からは、2022年の所得に対する住民税を支払わなければなりません。しかしこの時点では退職済みなので、以降、退職者は納付書によって、自分で住民税を納付することになります。(※これを「普通徴収」という)
<ケース2>6月~12月に退職した場合
例えば、2023年6月に退職したとします。
この場合、2022年1月~12月の所得に対する住民税をどう支払うことになるかというと、以下のようになります。
①まず6月分(最終)給与からひと月分の住民税がこれまで通り天引きされる
②退職後、7月分以降については、普通徴収で支払う
(余談)
筆者の場合は<ケース1>に該当しました。
2023年1月退職でしたので、まずは最後の給与から1~5月分住民税がごっそり引かれ、不足分は退職金によって補填されます。それでも不足した場合は私自身がマイナス分を会社に対して支払うことになります。
1月はずっと欠勤だったので無給、傷病手当金相当額は支給額として書類上計上されていたものの、そこから住民税分を引くと、結果はマイナス数万円……
最後にもらった給与明細の総支給額がマイナスだった時のむなしさは何ともいえないものでした。仕方ないことだし、該当月分の住民税は自分で納付しなくていいので楽といえばそうなのですが……
2. 企業型確定拠出年金:退職したらどうすればいい?
企業型確定拠出年金って?
会社によっては、【会社が毎月掛け金を出して、従業員がその掛け金を運用することで退職後の資産を作っていく】という「企業型確定拠出年金」制度を取り入れているところがあります。詳しくは以下参照。
筆者の元勤め先の退職金制度は、「退職金+企業型確定拠出年金」といった構成になっていました。
「企業型確定拠出年金」はその会社に在籍しているから使える制度です。なので退職後は当然使えなくなります。
すぐ再就職する場合で、再就職先にも同じ制度があれば、前職で運用した内容を、新たな勤め先の企業型確定拠出年金へ移管することになります。
では、再就職先に企業型確定拠出年金の制度が無い・すぐに再就職しない場合はどうするか。
それまでに運用した資産が無くなってしまうことはありませんが、「個人型確定拠出年金」(以下、iDeCo)への移管をする必要が出てきます。
【手続】iDeCoへの移管手続き
【準備すること・もの】
移管にあたっては、以下が必要になります。
【手続の期限】
<退職日の翌日の翌月から6ヶ月以内>に手続する!と覚えておきましょう。
この期限までに移管の手続きをしなかった場合に何が起こるかは、以下のページを参照ください。放置していても特にメリットはないので、早めに手続きを済ませてしまいましょう:
【手続先】
移管先のiDeCo取扱い機関に、自分で直接加入手続きをします。
ウェブサイト等で「企業型確定拠出年金からの移管の場合はこちら」みたいな案内がされている場合が多いと思うので、調べたり資料請求してみましょう。
以下のサイトがかなり整理されているので、何をすればいいのか迷ったら見てみるといいかもしれません。
なお、元の勤め先側で何か手続をする必要はありません(というか、してくれません)。
【運用期間を選ぶにあたって考えたいこと】
実にさまざまな証券会社や金融機関がiDeCoを取り扱っているので、どれを選べばよいかわからなくなってしまいがちです。私も、「考えるの面倒だから自分のメインバンクのを利用しようかな~」と思っていました。
ただ、iDeCoを利用するにあたっては、以下のコストがかかります。
手数料額は機関によりけりですが、以上のうち1、2の手数料については、毎月発生するものです。その他は発生する機会が限られています。
もし迷っている場合、とりわけ収入が減る場合は、毎月かかる固定費用をなるべく抑えるという観点で加入機関を選ぶのもひとつの考え方と思います。
各機関のiDeCoを比較しているサイトは検索するとすぐに見つかるので、そういったものを一度見てみると、いろいろと違いがわかって参考になるかもしれません。
もちろん考え方は人それぞれなので、必ずしも「ローコスト=自分にとって良い選択」となるとは限りませんが、ひとつの判断基準として押さえておくとよいのかも、と思っています。
【おまけ】これまでに運用した内容をiDeCoに移管せずに受け取ることはできるか?
結論としては、そのような制度はありますが、一定の条件を満たさなければ受け取ることができません。
自分が条件を満たしているかの確認はこちらで: