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サブスクリプションサービスと連続ドラマとの相性が良すぎるという話

著:テラコヤ(@trky7919)

最近はまっているものがあるのですが、スターウォーズ初の実写ドラマシリーズの「マンダロリアン」です。

日本だとディズニーデラックスで独占配信されています。

スターウォーズといえば、フォースやライトセーバーが二言目には挙がると思うのですが、このドラマはスピンオフであり、それらは(ほぼ)出てきません。どちらかと言うと、スターウォーズの世界で西部劇をやってみた、的なハードボイルドな作品です。なんですけども世界の細部が徹底的にスターウォーズなのがツボなんです。

Twitterではファンの絶賛の嵐が吹き荒れているので、評価の詳細はそちらに譲りますが、おすすめです!

お題

今回はサブスクリプションサービスと映像コンテンツの関係についてです。

サブスクリプションサービス、今では自動車メーカーも始めるほどのものでかなり定義の広い言葉にはなってますが、ここではAmazonやNetflixなどの会員制の動画配信サービスを指します。

そんな環境下で映像コンテンツがどうなっていくのか、という話です。

結論は、映像コンテンツは面白くなっていくだろう、ということです。

そんなこと小学生にでも言えることですが、もう少し言うと、映画は廃れ、産業の基幹コンテンツはドラマになる、ということです。

なんで映画じゃなくてドラマなの?

そもそもなんでこんなことが気になっているのかなと自分の記憶を辿ってみると、Netflixオリジナルドラマ「ハウス・オブ・カード」(2013~2018)や、Amazonオリジナルドラマ「高い城の男」(2015~)の存在がありました。

特に「高い城の男」は、フィリップ・K・ディックの原作本を読んでいたこともあり、制作発表の段階からとっても楽しみにしていた作品なのですが、Amazon「独占」「配信」の「連ドラ」、という情報で驚きました。映画じゃないの?Amazonじゃなきゃ観られないの?

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▲「オリジナル」押しなのがわかります。

会員になれば観られますよ、ということですね。▼

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観たい人は登録すると思います。他にも映画やドラマ、ドキュメンタリーが配信されていますからね。魅力的なコンテンツを入り口に、月額料金を支払うようになるわけです。

では、魅力を覚えたコンテンツが単体の映画だったらどうでしょうか?

一つ観たいものだけチェックし、目的を果たしたら即退会、という人は多いと思います。(ぼくはやります)

ところが連続ドラマは、その多くが「毎週〇曜日更新」で、何話も続いていくわけです。先を観るには会員になり続けるしか道はありません。月をまたいで、気づけば2、3ヶ月は作品をフォローしていくわけです。

月額制の本質は、時間のパッケージ商品化にあると思います。

受け手は、作品単体の鑑賞権を買うのではなく、サービス提供者が任意に設定した時間を買っているんです。ここが従来の映画産業との決定的な差です。

ユーザーを長く拘束すればするほど儲かるという方程式は、サブスクリプションと連続ドラマの悪魔的な相性の良さにより2010年代に完成したわけです。(タイトル回収)

ネットで過ごす時間がテレビを上回るようになったんです。産業がそう変質するのは必然でしょう。現に先に挙げたAmazon、Netflixに留まらず様々なサービスが誕生し、勢力圏を争っています。

既存の映画関連会社も動きます。冒頭で取り上げたディズニーも、2019年からDisney+を開始し、オリジナルドラマの制作を何本か発表しています(その第1作が、「マンダロリアン」です)。

ビジネスモデルから考える

映画って、ビジネスモデルとしては不安定なんです。

映画がヒットするかは賭けです。仮にヒットしても、映画は公開期間中しか売上にはなりません。関連商品が売れるのも、せいぜいその期間でしょう。

かつて東宝は、「ゴジラ」シリーズでその悩みに直面しました。映画はどんなに頑張って作っても1年、早くても半年かかります。しかし、1966年、円谷プロの「ウルトラマン」がテレビで9ヶ月もの期間に放映されました。あの怪獣王も、毎週ヒーローとしての姿を見せる宇宙人には勝てず、人気も話題も、おもちゃ売場の棚も奪われてしまいました。

ディズニーのように原作権を多く保有し、経営基盤が安定した会社でこそ映画を作り続けていられるのでしょうが、そういった会社は多くはありません。そんなディズニーでさえ、サブスクリプションサービスを開始し、オリジナルドラマシリーズに手をつけました。

映画に比べ、ユーザーが会員でいる限り月額料金が売上として入ってくるサブスクリプションサービスの方が安定したビジネスモデルといえるでしょう。

2010年代は業界の重要な転換点だったのです。

そしてユーザーファーストの環境が完成した

これからの映画産業は、月額サービスの会員料金を収益の安定基盤としていく流れはおよそつかめました。話の空気が暗くなってきた感じがしますが、大事なのはこんな環境からどのような作品が生まれるかです。

会員がいる限りは収入がありますが、逆にいえば、コンテンツ次第ではユーザーが解約し他のサービスに鞍替えする危険も十分にあるわけです。シンプルにいえば、つまらないものを作ればユーザーが出て行ってしまうということ。

あれ、映画も同じじゃないか?

たしかにそうです。しかし、映画は作品単体で評価されるコンテンツです。ヒットしなくても、次がある。また、映画産業の特有の現象ではありますが、興行収入は上映する劇場の規模や数、質によってある程度コントロールできてしまいます。配給のゴリ押しにより、人気と売上は必ずしも比例関係になるわけではありません。つまらないものでもヒットしてしまう仕組みがあるのです。

対してサブスクリプションは作品単体で儲けるビジネスではないので、作品の失敗はサービスの失敗につながりかねません。

面白い作品を作り続け、人気の作品の配信権を買い続けなければならない。サービス提供者には過酷かもしれませんが...。これ、ユーザーにとっては面白いコンテンツを観続けられる最高の状況だといえませんか?

冒頭で取り上げた「マンダロリアン」は、これまで述べてきた状況が生み出した作品なのではないかと思うわけです。そして、だからこそ期待できる。(マンダロリアンのためにディズニーデラックスに登録したので下手なもの作ったら解約する)

ぼくの大好きなスターウォーズが形を変えて楽しませてくれているように、今後、過去の人気作やあなたの好きな作品との思わぬ"再会"があるかもしれません。

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