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「模写修行」からアーティスト理解へ...
ぼくの盟友の佐橋くん(一緒にアニメーション作品「多元追憶ストライクエンゼル」を制作)が面白い記事をアップしたので、それの外伝というか、アンサーというか、否、ただの自分語りをさせていただきます。
この記事を読んで自分の「模写修行」に関する記憶と絵を遡ったんですけど、その中で「ああ自分らしいな」ってものがあったんですけども。
ぼくは大のドラゴンボールファンでして。
原作漫画もアニメも好きで、今でも時々見返すんですけど。大学生のころに原作を通しで読み直したのですが(多分通しでは2回目)、絵の勉強のつもりで表紙の模写をしながら読んでたんですよ。ちなみに、原作本は古いラーメン屋とか床屋にある版じゃなくて、比較的新しめのこのバージョンです。
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正確に言うと、巻を読んだらその表紙の模写をしないと先の巻に進めないというおかしなルール(ほぼ縛りプレイ)を設定して読み返したんです。
ただ悟空が好きだからとか、絵の勉強のつもりとか、意図は様々ありましたが、一番は「鳥山明の画力・デフォルメ力のすごさ」を実感することに重きを置いていましたね。
そのときの「模写修行」模様を発掘したので、公開しながら解説します。
Chapter 1. 第1巻〜第5巻
左上が第1巻で一番下が第5巻です。
被写体は主人公の孫悟空がメインで粗雑な線ですがキャラの再現を試みています。メカはほぼ描いておらず、あろうことかヒロインのブルマは顔すら雑。
あくまで悟空を描きたい&鳥山明的なデッサンやポージングを学ぶためって感じでしょうか。
Chapter 2. 第10巻
右下におられるのが、第10巻での表紙を飾ったブルマです。線はめちゃめちゃ濃いですが、キャラデザ、ポーズシルエットはほぼ再現してますね。悟空以外も描いてみたという意味では大きな進歩。
Chapter 3. 第31巻〜第40巻
左上が第31巻の表紙絵ですが、「31」と描かれた車が登場しています。そして、第34巻の悟空が乗る自転車(左ページ中段)、第39巻のミスターサタンと魔人ブウが乗る自動車(右ページ左下)。鳥山明的なメカのデフォルメの再現・模写を試みていますね。被写体によっての線の物質感も描き分けているようです。ここで学んだのは、特に第39巻なのですが、絵なのに車がギュルギュルと音を上げて走っている感じとか、魔人ブウの自由さとそれに翻弄されるミスターサタンの「ひぃぃお助け」的な悲鳴(郷里大輔さんボイスで)が聞こえてくるような、そんなストーリー性。実際にはこんなストーリーは描かれていないのですが、絶対あると思えるリアリティ。
個人的に最も技術的進化を感じているのが、第38巻の悟天とドラゴンの絵(右ページ中段)。最小限の線でやわらかい雰囲気を上手く出せていると思います。鳥山明の絵のなんというか「安心感」のようなものが見えてきたイメージ。
Chapter 4. 第41巻、最終巻
左ページ、第41巻の表紙絵では色をつけてます。再現性はChapter 3.の方が高いとは思いますが、ここではキャラクターの描き分けと表情の作り方の習得、というか研究を目的にしていたんです。鳥山明のキャラクターの顔のパーツって、くりっとした目や太い眉、雰囲気が強調された輪郭など、ほんとコミック・オブ・ザ・コミックだと思うんですけど、そんな大味なデザインでもちょっとした角度の違いでキャラクターの微妙な表情の差を演出できているのが素晴らしいと思うんです。
右ページは最終巻の表紙絵です。去りゆく悟空をシンプルに描いています(読了後に描いているのでその余韻に浸りたいのか若干疲れているからなのかは分かりませんが...)。デザインやポーズを最小限の線で再現しています。というよりも、鳥山明の絵の本質は、最低限の線ながらも卓越した構図感覚でキャラの表情や立体感、雰囲気が伝わるデフォルメにあると通しで描いてわかったんですよね。
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そんなこんなで、ぼくの「模写修行」の1エピソードを紹介しました。
模写には、絵の技術を上げるのはもちろんですが、対象物の研究ができるという恩恵があるように思います。もっとシンプルに言えば、作者の特長がわかるということです。「なんでこの構図なんだろう」、「なんでこの表情なんだろう」、そういった疑問が必ず湧いてくる。そうした疑問から本質に辿り着き、才能を愛することができる。勉強一般に言えることかもしれないですけどね。
ただ「絵うまいなー」と一時の消費材にするんじゃなくて、アーティストの特別感を享受するためにもぼくも模写をおすすめします。
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