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ドロイドから考えるルーカスのエゴに似た情熱

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スターウォーズの主人公は?と聞かれたら。

オリジナルが好きな人は「ルーク」と答えるでしょうし、プリクエルファンは「アナキン」、シークエルなら「レイ」と答えるでしょう。

では、スターウォーズって誰目線の話?と聞かれたら...?

そんな疑問から、この論考はスタートしました。

論考とは言ったものの、事実3割:推測7割ほどですし、ルーカスの生い立ちに関する文献には一切目を通してはいません。それを踏まえてご笑納ください。

ドロイド史観

スターウォーズって誰目線の話なのか。ファンであれば少し考えてから「C-3POとR2-D2か」と答えると思います。実際ぼくはそう思っています。

スターウォーズ第1作「新たなる希望」では、彼ら(ドロイドですが人称で呼びます)が惑星タトゥイーンに逃亡するところから話が展開され、彼らがガラクタ漁りのジャワによって売却されることでルーク・スカイウォーカーに出会います。半ば奴隷の人身売買のように。

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なぜ奴隷という言葉を使ったかというと、スターウォーズ世界のドロイドは、感情や自我のようなものを持ちながら使役される存在だからです。この世界のドロイドは、立場の強い者からはこき使われたりしますし、人(“宇宙人”含む)の飲食店には「ドロイドはお断り」と入店拒否されたりと人種差別を彷彿とさせる描写が多い。


ダース・ベイダーが侮られていた理由

奴隷といえば、アナキン・スカイウォーカーも奴隷の出でした。奴隷としての彼に類稀なる才を見出したジェダイマスターのクワイ=ガン・ジンが、ジェダイの道に誘うというのが、スターウォーズサーガの物語の発端です。アナキンは奴隷の身から自由になり平和の守護者としてのシンデレラストーリーを歩むものの、シスによる誘惑により暗黒卿ダースベイダーとなったのは周知の事実でしょう。

さてダース・ベイダーといえば、威圧感のあるマスクと胸につけた生命維持装置、義手や義足により人の形を留めているサイボーグです。身体のほとんどが機械であるところ、彼もまたドロイド的な存在と言っていいでしょう。

ダース・ベイダー、今日では悪のカリスマのように語られていますが、第1作「新たなる希望」ではなんというかわりと雑な扱いを受けていました。皇帝に親しい存在にも関わらず、帝国軍の将校たちからは煙たがられていた。思うにこれは、ベイダーがほとんどドロイドだからだったのではないかと思います。軍人たちは、ドロイドを使役するのと同じようにベイダー卿も便利な殺し屋程度にしか考えていなかったのかもしれません

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しかし、彼を侮っていた軍人たちは、その技術の結晶たるデス・スターの崩壊と共に散りました。ベイダーはこの惨敗を受け皇帝より叱責を受けますが(『スター・ウォーズ:ダース・ベイダー』MARVELコミック)、内心ほくそ笑んでいたことでしょう。以後、彼は帝国軍での地位を強固にし、皇帝の右腕として表でも裏でも活躍します。


ドロイドとアメリカ文化

話をドロイドに戻します。

3POやR2たちが、宇宙で、キラキラとしたロマンスや権力闘争、そして戦争を見届けるというのがスターウォーズの物語の根幹に走るような気がします。そして、そこにはどうも、「あーまた人間がなんかやってるよ」という冷えた目線のようなものを感じるのです。

そしてどうもここにはアメリカ的なものを感じる。

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黒人奴隷が、白人同士の勢力争いを静観しながら淡々と課された作業をするような、そんな歴史を連想せざるを得ない。

あるいは、スクールカーストのひどい学校で、カースト上位の好き放題やってる生徒をクラスルームの隅から見ている、あるいはその模様をただ聞きながら自分のタスクに邁進する虐められっ子のような光景を想起させる。

ドロイドも与えられた使命をこなしながら、人間の趨勢を見守り、替わる主人らに淡々とついていくだけの存在に思えます。

ここから、なんでそんな話なのかな、というのを妄想していきます。


ルーカスのライフスタイル提案

結論を先に述べてしまうと、「なんで」を考えても原作者のジョージ・ルーカスがそういう感じのトラウマや思想を持ってることくらいしか思い浮かびませんでした。

その結論ありきで「こういうことじゃないか」を妄想し、解説していきます。

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思うにルーカスは多分人間が嫌いなんです。もしかしたらドロイドよろしく虐められていた過去があるのかもしれない。自分の好きな映画を作りたいが、そのためには役者の存在が必要になる。でもディレクションやロケすら面倒臭いんです。だから、人間の登場人物は意外と最小限で、ほかはCGモデルにしていく。ついにはアニメも作ってしまう。断っておきますが、ぼくはルーカスの映像が好きですし共感もできる。

ルーカスはメカが大好きなんですきっと。考え得る限りの映像を志し、メカの活躍を最新技術で表現する人ですし。それ以上に、彼は多分「機械でいようぜ思想」みたいなのを持ってる。スターウォーズサーガを見届けている人間や知的生命体は作中にはいません(フォースの霊体化は除く。また、マズカナタも高齢ですがシークエルで初登場のため除きます)。サーガを見届けているのはR2や3POといったドロイドです。あんな面白い世界を何十年、下手すれば100年にわたり見届けることができるのはドロイドだけ。逆に言うと、「ドロイドになれば長生きしてどこにでも行けるし宇宙遊泳もできてしまうからその方がお得じゃないか?」みたいな思想が見え隠れしているように思えます。

ダース・ベイダーももちろんですが、「シスの復讐」では自らを趣味でドロイド化したグリーヴァス将軍も登場します(「クローン・ウォーズ」シーズン1 第10話「グリーヴァスのアジト」)。最終的にどちらも戦いの末に死んでしまいますが、そういう生き方もあるというルーカスの提案だったのかもしれません。

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しばしば差別の対象となるドロイドですが、スターウォーズの世界ではなんやかんやでお得な存在です。人間としての欲望を満たすことはできなくても、奴隷のように使役されるだけの存在であっても、変わる世界を傍観することもできれば先陣でバトルをすることもできる。世間的には幼いと言われる趣味かもしれませんが、「いいじゃないか、俺はこれが好きなのだ」というもはやエゴに似た情熱を感じる。それは、スターウォーズを生み出し、そして革新を続けてきた映像表現の泉源なのでは、と思います。

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過去に書いたスターウォーズのストーリー的論考やコンテンツについての考えなど▼


引用資料
LEGO スター・ウォーズ/ドロイド・テイルズ
スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ
スター・ウォーズ/新たなる希望
スター・ウォーズ/シスの復讐


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