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百の志事をする女として生きる

「百姓」という言葉、現在は死語として扱われています。
それは都会から見た農村の差別用語として使われていたからです。
しかし、私は敢えて「百姓」として志事に誇りを持って生きたい。
そう想う由縁をまとめます。

農村女性の心理的呪縛

嫁という立場で田舎に入って同居して感じた違和感。
農家だから。嫁だから。母だから。
「これがあなたの仕事」と決めつけられる空気感。
社会的には平等と保障されているはずなのに。
女だから。立場が自然と決められ感じる劣等感
見えない鎖で縛られているような感覚がありました。

繁殖農家は雌ばかりなのでみんな同志

同じように苦しみながらも「仕方ない」と諦めてきた
農村で生きる女性はたくさん居ると思います。
そうする以外の術が無かったのだろうともわかります。
むしろそれを受け入れるしかないという「刷り込み」が今も農村には残っています

嫁として働く牛の家業

私も自分の夢であった「牛の農家」になれたので
このご縁はとてもありがたいと思っていますし、
ご両親や周りから言われることは半分受け流しながらも
全て「自分が選んで決めたこと」として受け入れてきました。

しかし、子どもを産めや育てや、幼いうちは自分たちで子どもを見ろ。
その次には世代交代するから肉体労働、機械仕事も自分らで、と言われるようになりました。

仕事と子育て、どっちもする

私一人でできること、時間には限りがあります。
愚痴として吐いてしまえば出る言葉はたくさんあります。
それでも私達はこれからもここで生きて行かねばなりません。

生活を続けていくためにこれから先ずっと
何かを犠牲に切り捨てたり、妥協して諦めたり、
好きな仕事なのに続けるがしんどくて苦しむ、
そんな姿を子供たちに見せたくない
と思いました。

苦しまなくて済むならその道を選びたいし、
それに耐え続けるだけの労力があるなら
未来を変えたい。そう思うようになったのです。

農村から外の世界へ

そんな想いを持って動き出し、身近な人から伝えて行きました。
すると、皆が応援してくれて人から人へと繋がりが増えていったのです。
得られる情報だけでなく気になる分野や人も次々と増えていき、
途端に見える世界が広がりました

コロナ禍によってオンライン化が進み、ネットさえあれば都会と変わりなく
仕事ができる時代になりました。
田舎で牛守りという現場から離れられない仕事や子育てをしながらでも、
合間の時間で新たな情報や学ぶ機会を得られ、遠くの地域を見たり繋がりを広げることができる
のはとてもありがたいことです。

ひろしま「ひと・夢」未来塾

オンラインでつながるのはゆるくて細い糸です。
時には農村から出てリアルでお会いし、ご縁を強く結びます。
日常から離れている間は何かを犠牲にしてしまうため、
その時間をより価値のあるものにすべく奔走します。

ひろしまCampsアクセラレーションプログラム(CAP)

そうやって広げてきた外の繋がりには熱量の高い同志が多く、
皆さんからの近況報告がこれからも進み続けるための意欲になるでしょう。

志事も子育ても、全てが私

家業は家族経営なので家事、仕事、子育て。補い合ってします。
話題や思考、タイミングが分けられなくて苦悩することは多々ありました。
しかし、今では区別する必要は無いと割り切ることができました。

農家、牛守り、働き手、担い手、若者、移住者、女、嫁、母…
その全てがあって、初めて「私」なのだと言い切ることができるからです。

わたしと子どもと牛と

今の活動は私自身が様々な立場を持っているから。
そして、それぞれの気持ちがわかるから。
沢山の方の「ハブ」になって間に立って繋いでいけるのでは?
と考えて始めることにしました。

副業部分での事業なので時間やお金を費やすことはできません。
正直、誰かがやってくれるのであれば全て投げても惜しくありません。
ただいろんな人とお話する中で、やはり上から物を言われることもあって…
悔しい想いもしましたし、見返してやるんだという決意にもなりました。

田舎だから、仕事があるから、子育てをしているから…
私はそれらを言い訳にしたく無かったし、それで諦めたくは無かった。
今まで経験した自分の気持ちを否定し、蓋をしてしまう気がしました。

農村に居ても、想いを持って考動すれば夢は叶えられる。
私たちはもっと自由に外の世界にも出て行けるんだ、と証明したい。
それを私が体現することで、誰かの背中を押したり、
自分に自信を持って生きてもらえたらとても嬉しい
です。
そして、そんな大人の背中を周りの方や子どもたちに魅せて生きたい。
その想いが今の私の原動力です。

百姓として生きる

皆さん、暮らしの中で大事なコトは何ですか?
中には家事や子育てのように「お金にならないコト」もあります。
お金にならないコトは数字としては見えないので評価されづらいです。
それらの大半を担っているのは女性だと思います。

農村の女性、特に年配の方は働き者が多いです。
お金にならないことでも日々あれこれ動き回っています。
女性の長所は「同時に多数のことを考え並行して進めることができる」です。
料理や子育てはその最たるものでしょう。

一日のうちにしていることを挙げていくと百に近いかもしれません。
それらを意味のあるものにできるかは自分次第です。
志を持って誰かのために動く事は、全て志事(しごと)になります。
家事や子育て、お金にはならなくても、立派な志事です。
それを担う私たち、農村の女性はもっと自分を誇って良いのです。

ミカタファーマー 橋本葵

活動の理念である、「農に関わる人を守り育てる園を創る」から
私は「見方」を変えて「味方」を増やす、ミカタファーマーとして
農業現場で働きながら、たくさんの志事をこなす百姓であることを誇りに
これからもこの三次で皆さんと豊かに暮らして生きたいと思います。


三良(ミヨシ)ファーム
橋本葵

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