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「牛守り」という仕事

農林水産省「農村プロデューサー育成講座」の
実践コース、京都会場での講演で
滋賀県立大学の地域共生センター講師の上田洋平氏から
「〜守り」という仕事の紹介があり、
それまで自分の仕事を「牛飼い(うしかい)」と呼んでいましたが、
こちらがしっくりくるように感じました。
それ以来、「牛守り(うしもり)」と呼ぶようにしています。
「牛守り」という仕事に惹かれている今の想いをまとめます。


私の日常

「ふるさと」を五感体験で表す、ワークショップで
私の「今のふるさと」を綴った文章がこちらです。

山に囲まれ赤瓦屋根の家が梺に沿って点在し
青い空の下、水田が広がる
まさに田舎のイメージそのものという風景。
「おはよう」と声をかけると鳴き声と共に寄ってくる牛たち。
草を与え頭を撫でるとつやつやの毛並みの奥から伝わる、
生きていることを教えてくれる温かさ。
糞と尿の臭いにまみれながら汗を流し、
機械に乗って堆肥を切り返すと蒸気と共に広がる発酵臭。
食べ終えた牛を離すと放牧場に出ていくのを眺めながら
ほっと一息していると、定刻を知らせるサイレンが鳴り響く。

2022.9.14
機械で堆肥を運ぶのも仕事

これが私の日常です。

街で育った私には「サイレンの音」が衝撃で
初めて聞いた時には「エヴァの襲撃か!」って
一人で焦ったことを今でも覚えています。
それを他の方にお話するとお互い爆笑で、
周りの方にはそれが「日常」であったのも
とても不思議な感覚でした。

繁殖農家とは

うちは雌牛を飼い子牛を産ませて大きく育て
肥育農家さんに買ってもらうお仕事です。
牛の助産院に保育園が併設してる感じです。

ミルクに群がる子牛たち

純粋無垢な子牛たちはやはり可愛く
日頃から「誕生」を喜ぶことができるのは
とても素敵な仕事だと思っていますが、
生き物相手で「死」も含めた「命」に向き合い
年中無休の上に体力仕事。
一大イベントの「お産」は昼夜問わず降りかかるので
夫婦二人だけで続けるにはなかなかハードなお仕事です。

家族で見守るお産

「牛守り」の魅力

主な仕事はほぼ同じ時間に餌を与えるルーティンなので
どうしても作業化してしまいがちですが、
私にとっては良い構想時間になっています。
基本一人作業で相手は牛だけなので歌って気分転換や
独り言で課題を整理しながら楽しい妄想に耽ります。

また、作業ノルマは明確なので達成感があり、
自分の力量や都合で早く終わらせることもできます。

そして、朝・夕の時間は誰かしら仕事になりますが、
日中は比較的動けるので買い物や勉強、
ランチやお茶には仕事の合間で参加できたりします。

「牛守り」はブジネス

「牛守り」の仕事は「子守り」と一緒です。
日々同じ作業の中から牛の様子を見て、
発情が無いか、風邪を引いてないか、怪我をしていないか、
様々な違いを見極めて、気付き次第対処します。
なので何も異常が無くいつもと同じ「当たり前」を
素直に喜ぶことができるのがこの仕事の魅力
な気がしています。

みんなが食べている姿が好き

「今日も変わらず一日無事に過ごせますように」と願い
毎日をただ純粋に生きるということに
とても幸せを感じてきませんか?

橋本葵


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