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ひとり出版社をつくる⑰「JRC」

本日、取次会社のJRC(人文・社会科学書流通センター)と契約させていただきました。(正確には、JRCさんとの覚書を投函した)

これによって出版事業の最大の悩みどころだった流通のしくみを確定させたことになります。

このnoteにも書いてきたように、これまでトランスビューやサンクチュアリ出版にお話をうかがうなど、出版流通の取引代行について検討を重ねてきました。

取次会社の口座貸し専門の星雲社に初めて連絡したのは2016年。流通のしくを決定するまで、じつに4年もかかりました。

なぜJRCと契約するにいたったのか

トランスビューのしくみとビジョンは魅力的で、正直、取引をさせていただきたい思いが今でもあります。ですが、トランスビュー方式というしくみの信頼性やブランド力に応えることができないと判断しました。私にその実力がないということです。

一方、JRCは当社が扱うビジネス書や自己啓発書を受け入れてくれること、同じ兵庫県の出版社の方からJRCに対してよい情報をもらったこと、何よりうちみたいな地方のひとり出版社でもバカにせず丁寧に対応していただいたことなどを理由に、取引を具体的に検討することになりました。

で、最終的に契約を決めたいちばんの理由は何かといえば、新刊委託時の配本の方法です。通常、取次会社を介すると、新刊委託時に見計らい配本によって全国の書店に本が配られます。書店に営業しなくても自動的に配本されるメリットがある反面、返品リスクが増大する懸念がどうしてもあります。

ですが、幸か不幸か、うちみたいな実績のない(つまり売れる本を出すかどうかわからない)出版社だからかどうかわからないのですが、JRCとの契約では新刊委託時の見計らい配本は基本的になく、事前注文をいただいた書店に委託配本する注文出荷制のようなしくみだとわかったのです。

これを聞いて、もしかすると自社にとってプラスに働くかもしれない思いました。もちろん書店営業に力を入れる必要がありますが(もっというと売れる企画の本をつくらなければ死活問題になりますが)、自社の本を能動的に売ろうと思っていただける書店さんにしぼって配本できるわけです。

ということは、決済と物流という、ひとり出版社ではとうてい対応できない各書店さんとの取引をJRCさんに代行していただきながら、全国の書店と直取引するイメージで出版事業が可能なのではないかと捉えました。

もちろん、取次を利用することによる最大の懸案事項だった資金繰りの課題は残りますが……。

ともあれ、こんな地方のひとり出版社に流通の門戸を開いてくださったJRCさんには感謝しかありません。

契約した限りは、JRCさんと一蓮托生の心構えで、書店さんも含めて三者鼎立、みんなが利益を享受し合えるような関係を築きたい――この思いを2020年9月1日のきょう、残しておきたくてnoteを更新しました。

つづく。

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